“地性学的リスクの増大。”

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“地性学的リスクの増大。”                     30.8.2021.


注目のアメリカ・ワイオミング州・ジャクソンホールでの金融シンポジュームが終わった。

と言っても今回はコロナの影響でオンサイト(現地)での開催が見送られてパウエル議長の講演はネットでの配信となり、盛り上がりには欠けた様であった。

市場はパウエル議長が何処まで多数派であるテーパリング早期開始論に歩みよるかが注目されたが、議長は“FOMC.メンバーの大半の参加者と同様に、自分も経済がおおむね予想通り進展すれば、年内のテーパリング開始が適切と考えていた。”と述べて、決して自分一人がテーパリングに関して消極的ではなかったことを強調し、開始時期こそ明らかにしなかったがFOMC.での多数意見と同様に年内のテーパリング開始について前向きの姿勢を見せた。

同時に“最大限の雇用達成にはまだやらなければならないことが多くあり、またインフレ率が持続的に2%に達したかどうかは時間が経たなければ分からない。”と述べ、“テーパリングは利上げ時期を示す直接的なシグナルではない。”とし、少なくとも当面の間は政策金利であるF.F.Rate.を現行の水準で維持する姿勢を示した。

もしかしてパウエル議長がもう一段積極的にテーパリング開始時期について触れると期待していた市場は株と債券買いに走り、講演後株価は上昇してナスダックとS&P.は史上最高値を更新し、米国10年債利回りは下落してドル・円相場は109.79まで売り込まれる結果となった。

ドル・円相場は依然として109円~111円のレンジ相場だと思うのだが、此処にきてアフガニスタン情勢が緊迫化し、地政学的リスクの増大が懸念される。

アメリカ軍撤退の期限を明日に控え、先週首都カブールで起きた米兵13名が犠牲になった自爆テロはバイデン大統領を窮地に追い込み、何処かの首相と同じ様に支持率が急低下している。
共和党支持者である塾長の友人に言わせれば“何も出来なかった無能の大統領、”と言うことになり、このままでは来年の中間選挙で大苦戦をする可能性は大きい。

米軍撤退に当たっても同盟国である英国、フランス、そしてドイツとの協調は全く為されず、英国のボリス・ジョンソン首相からの電話を36時間も待たせるなどの失態を演じ、外交面での無策ぶりを糾弾する声も出だした。

バイデン大統領は国民向けの演説で、自爆テロを起こしたISIS.に対して“We will not forgive. We will not forget. We will hunt you down.”=(絶対に許さない。絶対に忘れない。お前らを必ず追い詰める。”と宣言し、その宣言通りすかさず2回の空爆を行って首謀者と次のテロを狙っていた容疑者を殺し、“これが最後ではない。”と言い切った。

未だアフガニスタンには1万人以上のアメリカ人が滞在していると言われており、報復の報復と言う危険な連鎖が起きる危険性は大ではなかろうか?

このアメリカ軍撤退はトランプ大統領によって決定され、バイデン大統領はそれを実行しているだけなのだろうが、決定済みとはいえ今回の“後先を考えない”慌てふためいた撤退劇は結局極めて悪い結果をもたらした。
しかも、未だ終わりが見えない。

今回のアメリカ軍の撤退は親米国のアメリカに対する信頼を間違いなく減退させたことであろう。
“いざとなった時にアメリカは本当に助けてくれるのか?”との不安を感じた国は幾つか有ろう。

アメリカに対する不信の増大は基軸通貨である米ドルへの不信の増加となって現れる可能性も有ろう。


地政学的リスクの増大は当然リスク・オフを導き、株価は下がると思うのだが金利と為替相場がどうなるのかが難しい。

リスク・オフと言えば投資家がリスクを取ることを逡巡し、既存の債権の圧縮を図り、新規投資を控えると言うのが一般的な概念であり、リスク・アセットの株を売り(株価下落)、安全資産である米国債券を買う。(米金利低下)
リスク・オフ時の常でドルと円が買われる傾向が強いが、今回のアフガニスタン情勢は金利低下と共にドルにとってネガティブである。

残るは円であるが、ドルが上がらないで円が強くなればドル安&円高となってドル・円は下がるではないか?

今年はニクソン・ショックから丁度50年。
1ドル=308円時代からのドル・円相場を見ている塾長には、何だかまたぞろドル・ベア(ドルにとって弱気)な感覚がしてきたのだが、余り自信は無い。

308円から110円へと凡そ200円もドル安&円高になった後、“此処から何処まで下げる余地が有るのか?”と思うと積極的にドルを売る気にはならないが、巷で話題になるビッグ・マック指数などを見ると円の割安感が目立つ。
因みに7月現在のビッグ・マックは日本で買うと一個390円。1ドル=110円とすると一個3.5ドル。
アメリカで買うと一個5.65ドル。
アメリカで買うビッグ・マックは日本の1.6倍もする。

購買力平価の観点から言うと390円÷5.65ドル=69円が所謂ビッグ・マック指数となるのだが、如何であろうか?

東京オリンピックに参加した関係者(選手は外出出来ない筈だ。)によると、コンビニで買うミネラル・ウォーターの値段の安さにびっくりしたそうだ。
そりゃあミネラル・ウォーターを買う時に円価格を自国通貨に換算すれば安いことだろう。

日本での価格が彼らにとって安いことを一緒に喜ぶべきか、それとも円の為替レートが実態に比べて安過ぎると認識すべきか?

コロナのせいでこの1年半海外に出掛けていないが、その前に出掛けていた頃は海外の物価の高さに驚いていたものだ。

塾長はビッグ・マックは食べないが、例えば100ドルの物を買おうと思って円換算して7千円(1ドル=70円)なら購買意欲は湧くだろうが、1万1千円(1ドル=110円)なら買わないかも知れない。(いや、何れにせよ買うとは思うが..)


今日明日の事ではないが、地政学的リスクによるドル安&円高の進行の可能性についてもNote.=(注意)しておきたい。


今週のテクニカル分析の見立ては相変わらずレンジ取引で、戦略は先週と同じ。
109.30を下切れば更なる下落に注意、割合近いが110.10を上切れば更なる上昇に注意と思われるが、依然として109円~111円のレンジ内に留まろう。

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