総括
テクニカルと外部要因で反発中、国内経済は不安あり
通貨5位、株価7位
予想レンジ 南アランド円 7.2-7.7
(ポイント)
*先週は全日陽線
*上昇の要因はテクニカルとパウエルFRB議長発言
*金融引き締めに慎重なFRB議長発言で一斉にリスク選好の流れに
*国内経済指標は弱い
*暴動の余波は残っている
*貿易依存度の高い中国株価が持ち直し
*新財務相の手腕は?
*7月の企業景況感指数、製造業PMI、雇用が悪化
*暴動の影響で成長率が低下
*コロナ警戒レベルを3に引き下げ
*政策金利は3.5%で据え置き
*対円8.15-20の売りも下落を誘った
*貿易・経常収支の黒字が南アランドを支える
*弱点は雇用と停電
*経済対策財源は公務員給与の昇給凍結、これを新財務相が受け継ぐかどうか
(漸く反発)
2020年4月のコロナ感染の初期の対円5.6円から8.16円まで上昇した南アランド円も6月から下落一途だったが、先週は漸く下げ止まった。先週は全日陽線であった。要因はテクニカルでは3σ下限からの自律反発とパウエル議長の金融引き締めに慎重な発言があったことだろう。中国株の持ち直しもあった。香港で海外投資家向けの中国株先物市場を新たに開設する計画が発表されたこともあった。必ずしも共産主義的な体制に戻すわけではないことのようで少し安堵している。為替、株価ともに持ち直した。
ただ国内要因は悪化した。2Qのの失業率は34.4%と、1Qの32.6%から悪化し、2008年に四半期ベースの労働力調査を開始して以降で、最悪となった。また財務省は、先月発生した暴動により、今年の経済成長率が0.7-0.9%押し下げられるとの見通しを示した。財務省は「雇用やセンチメントに打撃が及ぶ可能性を懸念しており、経済成長に影響を与える可能性がある」と指摘した。
先週の上昇は国内要因でないことに不安はあるが、南アランド円の需給でも、売り一辺倒ではなく、買いも売り同程度の金額が入ってきている。今週は貿易収支と製造業PMIに注目したい。
(先週の資源価格は持ち直す、月間ではまだ弱い)
FRBのテーパリング示唆で資源価格が弱くなっていたが、パウエル議長の金融引き締めに慎重な発言で、資源価格が持ち直した(表は先週と8月月間)
(段階的な金利正常化可能)
ナイドゥ中銀副総裁は、インフレ見通しが落ち着いていることを踏まえると、中銀は段階的に金利の正常化を進められるとの考えを示した。新型コロナウイルス危機に対応するため中銀は昨年、主要貸し出し金利を3.0%引き下げ、過去最低の3.5%とした。
一部の新興国はインフレ兆候を受けて利上げに動いているが、南ア中銀は前回の政策会合で金利据え置きを決めた。ナイドゥ副総裁は「われわれの主要シナリオは、今後1年インフレは落ち着いた状態が続くというものだ」と述べ、「現在の見通しを踏まえると、かなりゆっくりと段階的に金利正常化を進められる」との見方を示した。
景気回復に伴いレポ金利は中銀政策委員会が「中立金利」として適切な水準と考える6-7%に向かい上昇すると指摘した。その上で「われわれは少なくともあと1-2年は金利を緩和的な水準で維持することが可能だ」と説明した。
中銀がリスク要因として注視していることとしては、電気料金動向、通貨ランドの大幅値下がり、予想以上に速いペースでの米利上げ、国内の財政圧力を挙げた。
(今年の成長率は暴動で0.7─0.9%押し下げ)
財務省は、先月発生した暴動により、今年の経済成長率が0.7-0.9%押し下げられるとの見通しを示した。財務省は「雇用やセンチメントに打撃が及ぶ可能性を懸念しており、経済成長に影響を与える可能性がある」と指摘した。7月の混乱は当初、ズマ前大統領の収監に対する抗議活動として始まったが、アパルトヘイトの終焉から30年近く経った今でも続く貧困と格差への不満から放火や略奪行為へと過激化した。
テクニカル分析(ランド/円)
ボリバン3σ下限から、8月20日の下ヒゲもあり反発し中位へ
日足、先週は5連続陽線。ボリバン3σ下限から、8月20日の下ヒゲもあり反発し中位へ。8月4日-27日の下降ラインが上値抵抗。8月25日-27日の上昇ラインがサポート。5日線上向き。雲の下。
週足、ボリバン2σ下限から反発。3週ぶり陽線。8月9週-23日週の下降ラインが上値抵抗。8月16日週-23日週の上昇ラインがサポート。
月足、2か月連続緯線。今月もここまで陰線。雲の下。20年3月-7月の上昇ラインを下抜くも再び戻す。21年6月-7月の下降ラインが上値抵抗。
年足、18年-20年の下降ラインを上抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。20年の下ヒゲも効いている。
喜望峰
JPモルガン、南アで黒人所有企業への融資基金を開始
JPモルガン・チェースは、南アフリカの黒人所有企業に融資する3億ランドの基金を始めたと発表した。南ア経済は近年、不振に悩まされているが、国際的な投資銀行はなおも同国に期待をかけていることを示した。基金は貿易産業競争省と提携し、追加で4000万ランドの供与を得る。約3-4か月の短期融資と2-5年の長期融資を実行する。
南アの民間部門には潜在的に大きな可能性があるとし、提携でこうした部門への影響力を高めることができると表明した。
パテル貿易産業競争相は、基金が向こう8年で20億ランドの資本活性化につながる可能性があるとし、多くの雇用も創出するとも述べた。南ア経済はコロナ禍もあって10年前の水準に逆戻りしているが、人口に若者が多く、起業や中間所得層が増えていることから、国内の銀行や小売企業や不動産企業は同国経済の発展を見込んでいる。
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