総括
7月の上昇基調をまたもや大統領がぶち壊し下落
(再びインフレが政策金利に近づく)
(通貨最下位、株価最下位)
予想レンジ トルコリラ/円 12.2-13.2
(ポイント)
*エルドアン大統領の利下げ要求で市場は混乱した
*高インフレでの利下げ要求で市場の信頼感を失い、金利は上昇
*一方リラは急落した
*7月は通貨最強、株価も2位だった
*8月も株は好スタートを切った
*今週は政策金利、失業率、鉱工業生産、小売売上、経常収支などの発表がある
*7月製造業PMIは改善 3か月連続上昇
*外貨準備高が回復して400億ドル台から600億ドル台となった
*トルコの観光収益が30億ドル超となり前年同期を22.5%上回った
*7月企業信頼感指数は改善
*トルコ中銀が年末のインフレ見通しを12.2%から14.1%に引き上げた。
*コロナ感染者は増加
*大統領支持率低下
*通貨スワップ協定の締結に向けて4カ国と交渉
*対外純債務は3436億ドル
*政府の21年成長予想は5.75%=IMF、EBRD、民間は5.5%予想
(7月の上昇基調をまたもや大統領がぶち壊し下落)
せっかくの7月のトルコリラ上昇基調をエルドアン大統領がぶち壊した。3月の中銀総裁電撃解任ほどの下落はなかったが上昇に水を差した。エルドアン大統領は「高金利はもういらない。高金利はインフレ上昇をもたらすからだ」と述べた。3月と同じ結果となった。要求する金利低下は起こらず、逆に金利が上昇し、下げたのはリラだけであった。これでインフレ懸念がさらに高まり市場の信頼感を失った。
(大統領がぶち壊した7月の好材料とは)
7月は外貨準備の回復、観光収益の回復、7月の経済信頼感指数や7月製造業PMIが改善しリラ相場も12円半ばから13円にのせていた。7月の消費者物価が前年同月比18.95%上昇し2年ぶりの大幅な伸びとなり、中銀が引き締めスタンスを維持すると表明したところへエルドアン発言となった。今週の政策金利決定に牽制球を投げたのだろう。すべてをぶち壊す大統領で前途多難は続く。今週は失業率、鉱工業生産、小売売上、経常収支などの発表がある。
(トルコ7月CPI、2年ぶりの大幅な伸び、政策金利は据え置きか)
7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比18.95%上昇し2年ぶりの大幅な伸びとなった。予想の18.5%を上回った。物価上昇率がトルコ中銀の政策金利に近い水準となったことから、中銀に対して引き締め政策維持への圧力が高まる形となった。
5月の16.59%、6月の17.53%から上昇が加速した。中銀の目標は5%。
食品、住宅、外食、ホテルなどの部門で上昇が目立った。 政策金利は現在19%で、中銀はインフレ率よりも高い水準に維持する方針を示している。
リラが下落しなくてもインフレ率は今後3カ月で19-20%に上昇する可能性がある。9月で終了する付加価値税の減税措置が延長されなければ、およそ1%ポイントの物価押し上げ要因になると分析した。
インフレ見通しを踏まえると中銀は年内利下げできないため、8月以降の理事会で金利の変更は想定していない。そこで出たエルドアン大統領の利下げ要求であった。今週の政策金利決定では政策金利は据え置きとなる見通しだ。
(楽観的なエルドアン大統領は7%成長を予想)
エルドアン大統領は「今年の経済成長率は7%を超える」との見通しも示している。2Qの20%成長に押し上げられるという。また、8月以降はインフレが鈍化するだろうとした。
政府とIMFは、新型コロナウイルス感染流行から経済が急速に回復しつつあるとして、同国の今年の経済成長を5.8%と予想している。
(株価は好調)
トルコの株価指数(イスタンブール100種指数)、7月は2.7%高で世界の市場で2位、8月第1週は3%高と世界最強だった。ちなみに日経平均は7月が5.24%安、8月第1週は1.97%高であった。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
ボリバン3Q上限から急落し2σ下限へ
日足、ボリバン3σ上限から2σ下限へ急落。7月9日-8月9日の上昇ラインがサポート。8月6日-9日の下降ラインが上値抵抗。一時雲の下へ。5日線下向き。
週足、先週は4週ぶり陰線。5月31日週-8月2日週の上昇ラインを下抜いて今週は始まる。6月14日週-8月2日週の下降ラインが上値抵抗。ボリバン2σ下限は12.399。ボリバン下位、雲の下。
月足、7月は6か月ぶりに陽線も今月は下落スタート。20年11月-21年6月の上昇ラインがサポート。21年2月-3月の下降ラインが上値抵抗。
年足、6年連続陰線。今年は僅かながらも陽線スタートも中銀総裁の電撃解任で陰転。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
トルコ 米アフガン難民受け入れ措置に反発 密入国急増のおそれ
治安が悪化するアフガニスタンから逃れた人々の密入国が相次ぐトルコの外務省は、米政府が第三国経由でさらに多くのアフガニスタン人を難民として受け入れる措置を発表したことで、トルコへの密入国が急増するおそれがあるとして強く反発した。アフガニスタンでは米軍が7月末までに撤退の完了を目指す中、反政府武装勢力タリバンが攻勢を強め、治安が急速に悪化している。
こうした中、米政府は、通訳などとして米軍などに協力し、タリバンなどから報復されるおそれがあるアフガニスタン人を、さらに対象を拡大して難民として受け入れる措置を発表し、措置の適用を希望するアフガニスタン人は、まずは自力でアメリカ以外の第三国に出国する必要があると説明した。
これについてアフガニスタンから逃れた人々の密入国が相次ぐトルコの外務省は、声明を発表し、米国の措置によって、アフガニスタンからトルコへの密入国が急増するおそれがあるとして危機感を示した。
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