別に今に始まった事ではないが、マーケットは往々にして理不尽に動く。
先々週は新型コロナウィルスのデルタ型変異株の猛威による米国のみならず世界的な景気拡大後退への懸念によりリスク・オフとなって株安、金利安、ドル高、円高となり、結果としてドル・円相場はその流れを引き継いで先週初109.07まで円高が進んだ。
その他主要通貨が下げた為にクロス・ベースでも円の全面高の展開となったが、先週は一転してリスク・オンの展開となった。
一時1.1%台へと下落が進んでいた米国10年債利回りは1.3%近くまで戻し、ニューヨーク株式市場の3指数は前週の下げを一挙に取り戻して3指数共史上最高値を更新して週を終えた。
リスク・オンの常で為替市場ではドル売りと円売りが台頭してドル・円相場は110.59まで円売りが進み、クロス・ベースでも今度は円安の展開となった。
残念ながら先週の突然のリスク・オフからリスク・オンへの転換となった理由が分からない。
金利が下げ止まった、株価が上昇したからだと後講釈は出来るが、債券市場では“株価が上がったから金利は上昇した。”と言い、株式市場では“金利が上昇したから株価が上がった。”と宣う。
情けないが、為替市場では株式、債券両市場の動きを眺めながらの取引が続くので、右往左往しながらリスク・オフではドル・円は売り、リスク・オンではドル・円は買いと言う行動に出ざるを得ない。
そして、マーケットは往々にして理不尽に動くものだ、仕方ないと自分に納得させる訳である。
困った時のテクニカル分析頼みを試みると、先週のサポート(下値支持線)と思われた90日移動平均線が位置する109.50をはっきりと下に切りきれずに上昇に転じ、今度は21日移動平均線である110.50のレジスタンス(上値抵抗線)を上切れずにいる。
先週は長期金利が下げ続ける中、109.50を切ったら200日移動平均線が位置する107円近辺までの調整を期待したのだが、長期金利が反転上昇した現在では米国金利動向に最も敏感なドル・円相場が大きく下げることは期待出来ない。
結局は当面は109.00~111.00のレンジ相場だと思うが、このレンジを逸脱するとした場合のドルの上昇、或いは下落要因を挙げてみると、
ドルの上昇要因。
-先々週のマーケットの懸念とは裏腹にアメリカ経済の回復基調に対する信頼。
-FRB.による早期利上げ期待に則った米国長期金利の穏やかな上昇。
-最高値更新を続ける米国株式市場の堅調さを背景としたリスク・オンの動き。
ドルの下落要因。
-米国におけるワクチン接種率の頭打ち、及びデルタ型変異ウィルス蔓延による新規感染者数の拡大懸念。
-6月のFOMC.において前のめりとなった早期利上げ期待の後退。
-過去最大規模の米国財政&貿易の双子の赤字問題。
-バイデン政権誕生以来小康を保っている米中関係対立を基にした地政学的リスクの存在。
-7月31日に期限切れとなる米国連邦債務上限の適用停止措置問題。
イエレン米財務長官は、連邦政府の債務上限を早急に引き上げるか上限適用を停止するよう議会に要請しているが、このままでは8月中にも米国が債務不履行(デフォルト)に陥る深刻なリスクがある。
などが有ろうか?
今週は27日~28日に開催されるFOMC.が注目の的であるが、上述したドルの下落要因の真っ先に挙げた“米国におけるワクチン接種率の頭打ち、及びデルタ型変異ウィルス蔓延による新規感染者数の拡大懸念。”の現状を考えると、6月のFOMC.の様なタカ派的(金融緩和に消極的)な意見が多く出るとも考えられない。
FOMC.で早期利上げに慎重な意見が多く出る様であれば、ドルの上昇余地は限られたものであろうか?
とは言え10年債利回りが再び1.1%台に下落するとも思えず、下サイドも限られたものであれば、矢張り109.00~111.00のレンジを意識しておけば良かろうか?
今週のテクニカル分析の見立ては上サイドのブレークに要注意。
ポイントは110.50~110.60をはっきりと上切るかどうかである。