【外為総研 House View】
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 6月の推移
・6月の各市場
・6月のポンド/円ポジション動向
・7月の英国注目イベント
・ポンド/円 7月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 6月の推移
・6月の各市場
・6月の豪ドル/円ポジション動向
・7月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 7月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 6月の推移
6月のポンド/円相場は151.321~155.932円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.2%下落(ポンド安・円高)した。ポンドは対ドルで約2.6%下落しており、対円の下げは緩やかだったと言える。
英政府が新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)の解除を当初の6月21日から7月19日に延長した事や、英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)で早期引き締め観測が後退した事がポンドの売り材料となった。一方で、米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げ予想時期を前倒しした事などによるドル買いが優勢となったため、対ドルの下落率が大きくなった。
FOMC直後はポンド/円も151.30円台まで下げ幅を拡大したが、株安・資源安などの混乱が落ち着くに従い円安主導で持ち直した。
出所:外為どっとコム
9日
BOEのチーフエコノミストであるホールデンMPC委員が「金融政策の蛇口を止める必要がある」などと発言した事で強含んでいたポンドがNYタイムに入ると反落。英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitにあたり取り交わした離脱協定の一部である「北アイルランド議定書」の履行に対する見解が対立した事が重しとなった。
英国は6月30日までと決めた関税手続き導入の猶予期間を再び独断で延長する可能性があると述べた。これに対し、EUはすでに進めている法的措置を進め、場合によっては関税や数量割り当てを導入する可能性もあるとした。
11日
英4月鉱工業生産は前月比-1.3%と予想(+1.2%)に反して減少。一方、英4月貿易収支は109.58億ポンドの赤字と、赤字額は予想(118.00億ポンド)を下回った。なお、英4月国内総生産(GDP)は前月比+2.3%(予想+2.4%、前月+2.1%)であった。
14日
ジョンソン英首相は、新型コロナウイルスのインド型変異株の感染が国内で拡大している事を受け、6月21日に行うはずだったロックダウン(都市封鎖)の全面解除を7月19日に延期すると発表。もっとも、事前に延長の方針が報じられていた事もあってポンド相場への影響は見られなかった。
16日
英5月消費者物価指数は前月比+0.6%、前年比+2.1%と予想(+0.3%、+1.8%)を上回り、前年比では前月(+1.5%)から伸びが加速。英5月生産者物価指数も前年比+4.6%と市場予想(+4.5%)を上回る伸びとなった。これを受けてポンド買いが優勢となった。しかし、FOMCが利上げ予想時期を前倒しした事でドルが全面的に上昇するとポンド/ドルが下落したためポンド/円にも売り圧力がかかった。
18日
英5月小売売上高は前月比-1.4%と予想(+1.5%)に反して減少。新型コロナウイルスのインド型変異株の感染が英国内で拡大している事への懸念も相まってポンドは売りが優勢となった。その後、ブラード米セントルイス連銀総裁が2022年の利上げの可能性に言及した事でポンド売り・ドル買いが活発化。対円でもポンド安が進行した。
23日
英6月製造業PMI・速報値は64.2(予想64.0、前回65.6)、英6月サービス業PMI・速報値は61.7(予想62.8、前回62.9)であった。
24日
BOEは大方の予想通りに政策金利(0.10%)と資産買い入れプログラムの規模(8250億ポンド)を据え置いた。議事録では、「目標へ明確に到達するまで引き締めは行わない」と表明。政策据え置きが8対1の賛成多数で決定した事も明らかになった。
予想外にハト派的なスタンスが示された事や、政策据え置きに反対しテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)を支持するメンバーが1人だけに留まった(しかも、今回限りで退任するホールデン委員のみであった)事から、ポンドは売り優勢となった。
28日
英国で新型コロナウイルスの新規感染者が2万2868人に上った事が伝わるとポンドが下落。感染者が1月以来の多さに急増した事で英国景気の早期回復期待が薄れた。なお、これより前には英紙が、ドイツ政府はワクチン接種の有無にかかわらず英旅行者の欧州連合(EU)諸国への入国禁止を求めていると報じた。
6月の各市場
6月のポンド/円ポジション動向
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7月の英国注目イベント
ポンド/円 7月の見通し
6月中旬以降、ポンドは対ドルで軟化している。7月1日の海外市場では1ポンド=1.375ドル付近まで下落して約2カ月半ぶりの安値を付ける場面もあった。ポンド/円は、ドル/円の上昇に支えられて下げ渋っているものの、7月2日現在、153円台で上値の重い展開となっている。
英国では新型コロナワクチンの接種が進んでいるが、一方でインド型変異株(デルタ株)の感染も広がっており、英経済回復への期待が後退した格好だ。英政府は、経済活動の全面再開を7月19日まで延期したが、予定通りにロックダウン(都市封鎖)を全面的に解除できるかが注目される。仮に再延長となればポンドは一段と下落する公算が大きい。ただ、ジョンソン首相は再延期には否定的な考えを表明している。
足元でポンド安を誘発しているもう一つの材料は、英中銀(BOE)の早期引き締め観測が後退した事だ。一時は、英経済の回復に伴い早ければ2022年にも利上げ、との観測もあったが、ベイリーBOE総裁は7月1日の講演で「インフレ上昇は一時的」との見解を示した上で「時期尚早の金融引き締めによって回復が損なわれないようにしなければならない」と断じた。
7月はBOEの金融政策委員会(MPC)は行われないが、各委員の発言などに注目しておきたい。7月のポンド相場は、英国の新型コロナ感染状況と金融政策の方向性がカギとなりそうだ。
(予想レンジ:150.500~156.000円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 6月の推移
6月の豪ドル/円相場は82.129~85.179円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.6%下落(豪ドル安・円高)した。
中旬までは84円台半ばから85円台前半で高止まりの商状が続いたが、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)をきっかけに下落した。FOMCの政策金利見通しで早期利上げの可能性が示唆された事などから、株安・資源安が進むと、17日には84円台を割り込んだ。翌18日には83円台も割り込み、21日には約3カ月半ぶりに82.13円前後まで下値を拡大した。
その後はFOMCを受けた市場の混乱が収束するのに連れて84円台を回復する場面もあったが、豪州で新型コロナウイルス変異株の感染が広がり、最大都市シドニーでロックダウン(都市封鎖)が導入された事などから再び軟化。83.33円前後で6月の取引を終えた。
出所:外為どっとコム
1日
豪中銀(RBA)は大方の予想通りに政策金利と3年債利回り誘導目標(いずれも0.10%)を据え置いた。景気回復ペースは想定以上としつつ、少なくとも2024年まで政策金利を据え置くとの見通しも維持した。先に早期利上げに言及したNZ中銀(RBNZ)に倣ってRBAもタカ派姿勢を示すとの期待が一部にあった模様で、豪ドルはRBAの声明発表後に売りが優勢となった。
ただ、RBAは次回7月会合で国債買い入れ策の今後の方針を検討すると改めて表明しており、市場には金融政策正常化への転換は7月会合との見方がくすぶっていた事から、豪ドルは売りが一巡すると持ち直した。
2日
豪1-3月期国内総生産(GDP)は前期比+1.8%と市場予想+1.5%を上回る伸びとなった。個人消費や住宅投資が拡大し、GDPの規模は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の19年10-12月期を上回った。鉄鉱石価格や原油価格の上昇も相まって豪ドルは強含んだ。しかし、その後は利益確定の豪ドル売りに押されて反落した。
3日
豪4月貿易収支は80.28億豪ドルの黒字となり、黒字額は市場予想(82.50億豪ドル)に届かなかった。その後に発表された中国5月サービス業PMIは55.1と予想(56.2)を下回った。これらを受けて豪ドルは反落した。
4日
米5月雇用統計で雇用者の伸びが予想を下回った事を受けて早期引き締め懸念が後退する中、米長期金利が低下し、株価や資源価格が上昇。豪ドル高・米ドル安に連れて豪ドル/円も上昇した。
10日
中国商務省は、王商務相と米国のレモンド商務長官が電話会談を行い、「両国の貿易と投資関係推進で一致した」「相違を適切に処理する事でも合意した」と発表した。
15日
RBAは1日に開いた理事会の議事録を公表。「債券購入プログラムの終了を検討することは時期尚早」「完全雇用を達成には非常に緩和的な政策を維持する必要」などとして慎重な姿勢を示した。
7月理事会では、債券購入プログラム(現行1000億豪ドル規模)を何らかの形で継続する事が示唆された。これを受けて一時豪ドル売りが優勢となった。なお、豪1-3月期住宅価格指数は前期比+5.4%と予想(+5.3%)をわずかに上回った。
17日
豪5月雇用統計は、新規雇用者数が11.52万人増(予想3.00万人増)、失業率は5.1%(予想5.5%)であった。その他、労働参加率が66.2%(前回65.9%)に上昇。さらには新規雇用者数の内訳で正規雇用が9.75万人増加するなど良好な内容となったが、日本株が弱含む中で豪ドル買いの動きは限定的だった。
その後は、FOMCの早期利上げ懸念で米国株が下落したため豪ドルも軟化した。
21日
豪5月小売売上高は前月比+0.1%と、市場予想(+0.4%)に届かなかった。これに対する豪ドルの反応は小さかったが、日本株をはじめアジア市場の株価が軟調に推移する中、豪ドルは弱含みの展開となった。
25日
新型コロナ変異株の感染拡大により、豪州・シドニーの4地区で少なくとも1週間のロックダウン(都市封鎖)が敷かれる事になった。ただ、豪ドル相場や豪州株にネガティブな反応は見られなかった。なお、その後ロックダウンは26日からシドニー全域へと拡大され、2週間実施される事になった。
6月の各市場
6月の豪ドル/円ポジション動向
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7月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 7月の見通し
7月の豪ドル/円相場にとって最大の注目イベントは6日の豪中銀(RBA)理事会だ。RBAは以前から、この7月会合で新型コロナウイルス感染拡大による経済ショックを緩和するために講じた3年物イールドカーブ・コントロール(YCC)と、9月に終了する予定の資産買い入れプログラム(6カ月間で1000億豪ドル)の取り扱いについて検討すると表明している。
3年債利回りを0.10%に誘導するためのYCCは、2024年4月満期の豪国債をターゲットにしてきたが、すでに満期までの期間は3年を下回っている。このままターゲットを維持すれば、市場は金融緩和の時間軸を短期化させたと受け止め、長期金利が上昇する可能性がある。このため、RBAはターゲットを2024年11月満期債に変更する事を検討しているが、仮に変更すれば2024年中の利上げの可能性が大幅に低下する事になる。
資産買い入れプログラムについては、9月以降の対応を検討するとの事で、延長すれば緩和継続姿勢を強める事になる一方、打ち切れば金融政策正常化に向けた動きと捉えられよう。市場には、買い入れ規模を縮小した上で期間を延長するという「折衷案」が落としどころとの見方が多い模様だが、RBAの豪州景気に対する見方次第となるだけに予断は許さない。
いずれにしても市場は、RBAがカナダ中銀(BOC)やNZ中銀(RBNZ)のように、金融政策正常化に舵を切るのか、あるいは日銀のように金融緩和の継続を打ち出すのか注目している。
(予想レンジ:81.000~86.000円)
神田卓也
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