ゴールデン・ウイークも明け、ようやく戦闘モードに戻ろうとした矢先の金曜日の夜、驚きの数字が発表されて為替市場は大混乱となった。
日本時間の午後9時半に4月の米国雇用統計が発表されたが、その中身は市場の予想を
大きく裏切るものであった。
特に非農業部門雇用者数の大方の予想は前月の大幅増(+91万6千人)に引き続いて97~100万人増であったが、実際の数字は+26万6千人に留まり、前月の数字も+77万人に下方修正された。
コロナの影響でミクロの経済データのブレはある程度仕方ないとは思うが、ここまで大きく予想と実際の数字が食い違ったのを見たのは余り経験が無い。
しかも数日前に発表された非農業部門雇用者数のバロメーターと言われる、実際に企業の給与計算代行サービスを行っているADP.の雇用データが市場予想の+80万人よりは少なかったものの、+74万2千人であった為、余計に市場はこのブレの大きさに驚いた。
興味深いのはこの驚きの数字に対しての株式、債券、そして為替市場の反応の違いである。
先ず債券市場であるが、雇用統計発表直後こそ瞬間債券が買われて金利は低下したが、直ぐに持ち直して10年債利回りは前日比+0.009%の1.578%で引けた。
株式市場はこの“悪い数字”によりFRB.が宣言通りに金融緩和政策を続けるであろうことを再確認した形となって3指数ともに殆ど下げることなく上昇して、金曜日の終値ベースでダウとS&P.は再び最高値を更新した。
“悪い数字”に反応して株価が上がるというのも不思議な感じがするが、これで市場がある程度期待していたテーパリングの前倒しの可能性などの議論が消滅し、“低金利が続くのなら未だ株は買いだ。”との心理が働いたのであろうか?
市場予想の+100万人と実際の+26万6千人とのブレは雇用を確保したい企業側の求めに対して雇用を求める人が少なかったと言えるが、給付金を貰って手元がキャッシュ・リッチとなった人達が“雇用の選り好み”をしたとも言われている。
アメリカ国内でワクチン接種が進み、ロックダウンや都市での行動制限が緩和(数か月ぶりにニューヨークのバーでの飲食が許可されたらしい。)される中、“今日明日、別に食うには困らないんだからそんなに急いで求職する必要も無かろう。”と普通の人が考えるのは極めて自然である。
恐らく来月発表される5月の雇用統計(非農業部門雇用者数)は今月の反動で大きく上振れし、今月分も上方修正されるであろうことには驚かない。
アメリカは上でも述べた様にワクチン接種がどんどん進んでコロナ後の経済回復に極めて楽観的で、勿論堅調な株価はそれを反映している。
以前は高齢者に限定されていたワクチン接種も比較的簡単になり、デブラシオ・ニューヨーク市長は真顔で“経済復活を目指す一環としてニューヨークを訪れる観光客に無料でワクチン接種を行う。”と宣う。
一般的なアメリカ人も相当楽観的で、塾長が毎年招待されるアメリカでのゴルフ旅行(昨年はコロナの影響で中止した。)に9月に招待された。
まあ、行けるかどうかは分からないが取り敢えずシカゴ往復のチケットは確保した。
(コロナの影響で相当数減便しており、行きは成田発、帰りは羽田着と変則になりはしたが..)
さて振り返って我が国の状況を見てみると、ようやく本日から65歳以上の高齢者に対するワクチン接種の予定が発表になるらしい。
らしい、と言うのは横浜に住む塾長は今まで全く梨の礫で何の情報も聞いていない。
テレビのニュースによると高齢者がワクチン接種の予定を確保する為に電話が殺到して公共団体の業務を妨げられない様にする為に電話の受信制限をするらしい。
インターネットでの予約も有るらしいが、高齢者全員がスマホやPC.を自由に操ってほいほいとインターネットでワクチン接種の予約が出来るとでも思っているのだろうか?
此処は愚痴を言う場ではないが、実に情けない気がする。
オリンピックをやる、やらない、73歳の高齢者(塾長の事)にワクチン接種の情報が全く入って来ない、またまた緊急事態宣言の延長などの話をすると、上のゴルフの話をしたアメリカ人の友人は“一体全体、日本はどうなっちゃったんだ?”と真顔で心配してくれる。
菅首相は“高齢者に対するワクチン接種を7月中に終わらせる。”と意気込むが、予約もままならぬ現状では、余り期待しない方が良いかも知れない。
今回の雇用統計騒ぎでドル安&円高が進んだが、この我が国のワクチン接種状況を見ても積極的に円を買う気にはなれない。
ドル・円はレンジの下値を徐々に切り上げていく展開を予想する。
持ち合い相場では実力を発揮するテクニカル分析によると今週のドル・円相場の見立ては108.55を下切れなければ109円台ミドルを目指し、先週の雇用統計後の安値108.34を下切れば、もう一段の下げも有り得るが如何であろうか?