“金利の上下に一喜一憂。”

f:id:okinawa-support:20210201171507j:plain

ドル・円相場の騰勢が止まらない。

金曜日に米国10年債券の利回りが一時1.625%を付け、また同日発表になった2月の米国雇用統計の非農業部門雇用者数の事前の市場予想値の+18万2千人を大きく上回って+37万9千人であったこともドル高を加速させた。

ドルが主要通貨に対して軒並み上げる中、ドル・円相場も大きな抵抗も無く高値108.64を示現した。

ドル・円の日足チャート見ると、21日移動平均線でサポートされ、90日と200日移動平均線を大きな抵抗も無く上切って、当面のレジスタンス(上値抵抗)が見当たらない。
強いて挙げれば2020年6月5日に付けたコロナ後の高値109.84辺りが当面の目標となるのであろうか?

米国10年債利回りは先々週一度1.61%を付けた後1.4%台に下げ、それにつれてニューヨーク株式市場の3指数は金利が上がれば値を下げ、金利が下がれば値を上げると言う割合分かり易い値動きを見せていたが、特に米国金利上昇に敏感なドル・円相場は殆ど調整も無く一本調子に上げている感が有る。

現在市場が一番注目しているのは米国長期債券の利回り動向であるが、先週は何人かのFRB.地区連銀総裁の長期金利上昇容認発言が利回り上昇に拍車を掛けた。

-バーキン・リッチモンド連銀総裁。=“イールド・カーブの状況は見通しに対する自然な反応。”、“インフレ期待が上昇している兆候はない。”

-エバンズ・シカゴ連銀総裁。=“インフレが急激に上昇する著しいリスクは見られない。”“長期金利の上昇は前向きな経済的兆候であるという見解を共有。”“イールドカーブ・コントロールについては考えていない。”

これらの発言に加えてパウエル議長は“FRB.の政策スタンスは適切とし、最大雇用達成まで現行の緩和的な政策を維持すると再表明。最近の米債利回りの急上昇については「注目に値し、留意している」としつつも、無秩序な動きとも、FRB.による介入が必要とも考えていない。”と述べて、長期金利上昇を容認した形となった。

米国10年債利回りの動きを見てみると、FRB.が政策金利であるFF.レートを2020年3月から0.25%に抑える政策を取り出してから、米国10年債利回りは0.5%から0.7%での間での低位安定を示していたが、バイデン新政権の財政支出拡大期待が膨らみ始めてから1%を超えてついに先週1.5%台に到達した。

ではこのまま米国10年債利回りが上昇し続けるかと言うと、そうでもなかろう。

直近の米国10年債利回りのピークは2018年の秋の頃に掛けての約3.2%。
その頃のFRB.の政策金利であるFF.レートは1.5%で、その金利差は約1.7%であった。
実はこれが最近ではFF.レートと10年債利回り乖離差のピークである。

FF.レートは2019年6月の2.5%をピークにFRB.の緩和政策により現在の0.25%に張り付いているが、2019年6月頃の10年債利回りは凡そ1.5%でFF.レートとの金利差は1%であった。

まとめると、ここ最近政策金利であるFF.レートと米国10年債利回りの差は1.5%から1.7%を大きく乖離することは無く、FRB.が公約とする2023年までの緩和政策(FF.レート0.25%)が続けられるのであれば、10年債利回りが1.5~1.7%を超えて大きく上昇する可能性は小さいのではなかろうか?

となると、米国長期金利上昇によるドル・円相場の上げはそろそろ“いい所。”に来ているのかも知れない。

上がったとしてもせいぜい109円台のミドルか?(と言っても、数週間前105円ミドルを上切る前の相場観からは中々考えられなかったレベルではあるが。)

一本調子で上げてきたドル・円相場であるが、どうも買い手の姿がよく見えない。
日銀短観で発表された2020年度下期と通年の大企業・製造業の想定為替レートである106円台のミドルでは実需の輸出筋から相当規模のドル売りが出されたと聞くが、それを飲み込む程の大きなドル買いが有ったことになる。

こういった場合、経験から言って短期のヘッジ・ファンドやシカゴ・IMM.などとは違う大きなミューチュアル・ファンドや中央銀行がドル買いに走った可能性は大いに有ると言える。

彼らが何処まで買い上げるか?
或いは彼らも“そろそろいい所まで来た。”と判断するか?

top