▼ドル安の流れは継続
▼メキシコの経済状況
▼金融政策
▼メキシコペソの予想
ドル安の流れは継続
6月10日にドルインデックスは95.72まで下落後6月30日に97.80まで反発しましたが、その後は下落トレンドが再開し7月24日には94.33まで下落しほぼ安値で終了しました。ドルペソも6月9日に21.4632ペソまで下落後に6月30日に23.2294ペソまで上昇しましたがドルの下落トレンドで7月24日には22.288ペソで終了しました。
ただドルが多くの通貨に対して大きく下落しているにもかかわらず、ドルペソではそれほどドル安ペソ高は進んでいません。新興国通貨の中でもドル南アランドは16.343ランドと6月初めのドル安ランド高のレベルに迫っています。メキシコペソでそれほどドル安、ペソ高が進んでいない材料はいくつかありますのでレポートではそれについて解説したいと思います。
メキシコの経済状況
ジョージタウン大学のHPによるとメキシコのCOVID19の感染者数は7月26日時点で385,036名と世界で6番目の感染者数となっています。残念ながら死者数も42,645名と世界で4番目に達しています。 この状況はメキシコ経済にとってはかなりマイナス材料になっています。
一方でメキシコの経済指標は少し改善の兆しが見えてきています。6月後半以降の経済指標は以下の通りです。
7月1日 6月製造業PMI 38.6(前回38.3)
4月設備投資 前年比-36.9%(前回-11%、予想-10.7%)
7月9日 6月消費者物価指数 前年比3.33%(前回2.84%、予想3.2%)
7月10日 5月鉱工業生産 前年比-30.7%(前回-29.3%、予想-24.3%)
強弱まちまちの結果ですが、やはり感染の拡大による影響はまだ経済の弱さに表れています。
アナリストの予測によると2020年のGDP予想を前回の-7.9%から-8.8%に引き下げました。
金融政策
6月25日に政策会合でメキシコ中央銀行は政策金利を予想通り0.5%引き下げ5%としました。
7月1日、ブルームバーグはメキシコ中央銀行副総裁であるJavier Guzman氏が、金利を引き下げる余地はまだあるが、慎重に行わなければならないと述べたと報じました。一部のアナリストの間ではインフレ期待が上向きのために緩和の余地は少ないという予想もあるようです。IMFによるとメキシコの経済は今年10.5%の縮小となり他の新興国と比べても落ち込みが大きくなる予想となっています。それにもかかわらずGuzman副総裁は金融システムの強さについては自信を持っているとの見解を示しています。そして大恐慌よりも深刻な状況に直面している状況で、柔軟である必要があると述べています。ここまでメキシコ中央銀行は連続利下げを行っていますが、さらに踏み込んで柔軟に対応するということのようで、金融緩和の姿勢は維持されるものと予想されます。
8月13日に予定されているメキシコ中央銀行の政策決定会合が注目されます。
メキシコペソの予想
ドル/メキシコペソは7月に入り22.155~23.093ペソのレンジで推移しています。
20日移動平均線が22.50付近に位置し、60日移動平均線も22.60付近に位置しています。ドルは全般的に下落していますが、ドル/メキシコペソはそれほどドル安ペソ高に向かっていません。
やはり感染拡大が止まらないこと、それによって経済が減速していることがペソの上値を抑えています。22.15ペソ付近が短期のサポートになっており、ここが下抜けすれば6月9日のドルの安値21.4632ペソに向かうと思われます。
メキシコペソ/円は6月5日の高値5.105円から6月29日は4.624円まで下落しました。その後は4.67~4.86円のレンジで推移しています。 一目均衡表の雲の上限が4.81円付近、下限が4.67円付近に位置しており、このレンジ内の動きになっています。
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。