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米中金融戦争勃発、漁夫の利は全部日本?「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

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こんにちは、戸田です。

香港シリーズ、第4回目は「米中金融戦争勃発、漁夫の利は全部日本?」でお届けします。巷では香港返還23周年である7月1日を目前に香港・国家安全法が正式に制定される可能性が報じられるなど、ますます世界の香港に対する関心が高まっている状況です。

そこで本報告では一足先に香港の将来について仮想シナリオを描き、今後のマネーの流れを推測していきます。投資や越境ビジネスの参考にして頂ければ幸いです。

目次

1.米中対立は貿易摩擦から金融戦争へステージ移行
2.中国の対応は?
3.日本は空前絶後の大きな機会を得る
4.終わりに

1.米中対立は貿易摩擦から金融戦争へステージ移行

香港に対する国家安全法の制定を経て、米中対立はますます激化していくものと想定されます。これはトランプ大統領や米国務省が正式に反対を表明していること、香港が中国と世界を結ぶ拠点として、特に対中投資(含む証券投資)の面で、極めて重要な役割を果たしていることからこのように判断しています。

またこれを裏付ける出来事として、先週、米上院にて香港自治法の修正案が可決されました。今後は米国の制裁対象に、香港の金融機関も含まれることとなり、米国からの米ドルローンに大統領署名の上で制限が掛けられる可能性があります。

中国本土との直接的な対立が米中貿易摩擦とすれば、香港を通じた間接的な対立はさしずめ米中金融戦争と言う見方が出来ます。軍事面を除いて、いよいよ全面戦争の構図になってきていると考えています。

この流れは米大統領選以降も変化はないと思います。これは、過去の世界史において、大きな影響力を持った国が台頭してくるとき既存の大国との対立が必ず発生してきたこと、バイデン氏が米大統領に就任したとしても、公約の中で「不可避の挑戦」として中国・ロシアの名を挙げていることからこのように判断しています。

2.中国の対応は?

中国は新型コロナウイルスによる肺炎の影響下、国内景気が悪化する中で、対外的により強硬な対応を採っている可能性があります。具体的には印中国境問題がその一端として表面化していると推測しています。このような環境下、香港国家安全法について、各国がどのように反対したとしても、一度振り上げた拳は収まらない可能性が極めて高いと考えています。

すると残念ではありますが、香港の国際的な金融センターとしての価値は時間の経過と共に低下していくことが想定されます。今回の件で、法的に中国の傘下にあることが明白となり、国内ルールの適用を恐れる優秀な人材、莫大な資金が徐々に流出していく可能性が高いと考えています。

当然、中国政府は指をくわえて眺めているだけではありません。この問題を解決すべく、「海南島の自由貿易港計画」や、「マカオの金融都市化計画」などを推進しています。具体的には海南島に自由貿易港を設置し関税を免除することや、マカオを香港に次ぐ金融都市とすべく支援することを計画しています。

ですが、例えば「マカオの金融都市化計画」が実際に成功を収めるためには、資本主義経済が適用されていることに加え、英語対応が可能なこと、歴史の厚みがあり優秀な人材が多数存在していること、国内ルールが一切適用されないことなどが成功要因となることから、現時点ではどこまで成功するか未知数というのが客観的な見方になります。

それではこのような環境下において世界のマネーはどこに向かうのでしょうか?

3.日本は空前絶後の大きな機会を得る

一つにはマネーが日本に向かう可能性があります。ここでは投資マネーが日本に向かう可能性と、ビジネスを通じて日本に利益をもたらす可能性の二点を指摘します。

まず中国は日本との連携を強く求めており、実ビジネスにおいて日中合作を増加させたい思惑があります。そのため例えば関係の悪化している米債を売却し、関係をさらに改善させたい日本債を買うオペレーションを増加させ、国策としてこの施策をバックアップしていく可能性があります。

また米国も、世界第三位の経済力を誇る日本との協力は対中戦略において極めて重要な位置づけとなります。先進的な技術開発について、中国を除外し、ますますファイブアイズ+日本との協力を深める可能性が高まります。

このような環境下、日本はビジネス・金融面で共に漁夫の利を得ていく可能性が高いと考えます。新型肺炎の状況下における日本株の上昇、円高など、既にその兆候が少しずつ現れはじめているとも言えますが、実際にはこれからさらに時間をかけて上述のパラダイムシフトが進行し、じわじわと市場への影響が増してくることを想定しています。

4.終わりに

新たな世界を想定することは投資・実ビジネスにとって非常に有用です。

例えば現在の市場環境を俯瞰すると、香港株や原油価格は伸び悩んでいる一方で、金価格が一オンス1,800ドル目前まで上昇し・NASDAQが10,000ドルを達成しました。これらはまさしく新しい世界を想定したマネーの流れです。

日本について、政治環境は非常に良いと思います。今こそ、低成長を脱却し飛躍を遂げる機会が広がっています。

日本経済の更なる発展と、皆様のビジネス・投資の成功を心よりお祈りしています。

それでは、またの機会にお会いしましょう。

戸田裕大

【過去記事】

 

<参考文献・ご留意事項>
Congress.Gov:S.3798 - Hong Kong Autonomy Ac
https://www.congress.gov/bill/116th-congress/senate-bill/3798?q=%7B%22search%22%3A%5B%22hong+kong%22%5D%7D&r=5&s=6

米国務省:On China’s Attempted Coercion of the United Kingdom
https://www.state.gov/on-chinas-attempted-coercion-of-the-united-kingdom/

バイデン氏、米大統領選オフィシャルホームページ
https://joebiden.com/joes-vision/

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。