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「コロナ後の世界を考える」竹中平蔵 新型コロナショック

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 歴史を振り返ると、人類は繰り返しパンデミックを経験し、それと戦い打ち勝って来た。同時に、パンデミック後は従前とは異なる世界がやって来る、という教訓を得て来た。例えば、14世期欧州に広がった黒死病の結果、一人当たり生産性は上昇し、一方で教会の権威失墜から、その後のルネサンスがもたらされた。また。20世期初頭のスペイン風邪で、当時の地球人口の約5%が亡くなったが、比較的影響の軽微だったアメリカが、その後一気に世界の中心に躍り出た。近くは、2003年のSARS(サーズ)によってネット通信販売が一気に拡大し、アリババのような巨大なネット企業が生まれた。

 パンデミックは、既に起こりつつあった変化を一気に加速させる。今回のコロナ危機後に現れる最も顕著な変化は、いうまでもなくデジタル・シフトだ。中国においてアリババは、遠隔会議や決裁が出来るシステム「DingTalk(ディン・トーク)」を、国内1000万社に無料で配布した。また中国の主要大学は、この数カ月の間に、全ての講義をネットで配信出来るシステムを構築したという。まさに、デジタル・シフトが凄まじく進行しており、経済構造・経済システムの大きな転換が生じている。パンデミック後の世界は、凄まじいデジタル資本主義の競争となるだろう。
 コロナ危機がもたらすもう一つの変化は、これをきっかけに働き方が変わると予想されることだ。今回日本でも、いわゆる在宅勤務が急拡大した。更に言えば筆者の周りでも、都市郊外やリゾート地で在宅勤務し必要な時に都心に出かける、という形の働き方が増えている。ワークとヴァケーションを結合した「ワーケーション」というライフスタイルだ。19世期の半ば、ロンドンでコレラが大流行し、それがきっかけで田園都市という概念が生まれた。ワーケーションは、地方創生の新しい起爆剤になる可能性を秘めている。
 もっともそのためには、労働対価を「時間」ではなく「成果」で測るような新しいシステムへ移行するよう、体制の整備が必要だ。こうした改革を行えるかどうかで、アフター・コロナ社会の姿は、大きく異なったものとなろう。
 コロナ後の世界を考えるいま一つの要素は、環境問題への対応が一気に加速するという点だ。都市のロック・ダウンや経済活動停止によって、今世界中で青空が広がっている。これまでは、2050年にエミッション・ゼロを実現するというような政治宣言を聞いても、多くの人々には実感がなかったかもしれない。しかし青空の広がりを見る中で、人々の環境問題への認識が大きく高まりつつあると考えられる。このことは歓迎すべきことだ。しかし一方で、例えばガソリン車から電気自動車などへの切り替えが早まると、日本の産業構造は大きな変化を余儀なくされるだろう。イングランド銀行のカーニー総裁が指摘するように、「環境問題におけるミンスキー・モーメント(大転換)」が来るかも知れない。
 目の前の経済落ち込みに対応しつつ、一方でコロナ後の世界を見据えたしたたかな対応が求められる。

takai.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 特別研究主幹
慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵
1951年生まれ。1973年一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。ハーバード大学・ペンシルバニア大学客員研究員、大蔵省財政金融研究室主任研究官、大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、国際経済研究所客員フェロー、慶應義塾大学総合政策学部助教授を経て、1996年慶應義塾大学教授に就任。 2001年には、小泉内閣発足に際して 国務大臣・経済財政政策担当大臣に就任。その後、金融担当大臣・経済財政政策担当大臣、 内閣府特命担当大臣(金融・経済財政政策)、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、総務大臣(郵政民営化担当)を歴任。閣僚時代には、不良債権の処理、郵政民営化などに尽力し、小泉内閣が標榜した「聖域なき構造改革」を推進させた。