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「アイリッシュバーでマーケットを学ぶ」松本英毅 FX特別インタビュー(前編)

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現在はニューヨークからマーケット情報を発信する、よそうかいの松本さんに東京滞在中にインタビューを行いました。松本さんがマーケットにかかわるようになったきっかけ、市場の変遷のほか、トレードの心構えを聞いています。

※2020年3月13日取材

▼目次

1.バックボーンはミュージシャン
2.勢いでアメリカに移住
3.ミュージシャンからブローカーへ
4.アイリッシュバーでマーケットを学ぶ

バックボーンはミュージシャン

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PickUp編集部:
本日はよろしくお願いします。
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松本:
よろしくお願いします。今回は講演や出版記念イベントのために日本に来たんですけど、新型コロナがアメリカで蔓延しているので、しばらくは日本に留まることにしています。
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PickUp編集部:
大変ですね。さて、松本さんのプロフィールを見ると、ミュージシャンって書かれているんですが・・・
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松本:
はい。デビューのために、大阪から東京に出てきたんです。
ちょっと話がややこしいんですが、私が参加することになったのはパンクバンドだったんです。
でも、私が元々やっていたのは、プログレッシブロックとかブリティッシュロックという、どちらかというと曲が長くて難しいものだったんですね。
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PickUp編集部:
ぜんぜん方向性が違いますけど、なんで参加することになったんでしょうか・・・
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松本:
ええ、私は大阪のスタジオのレコーディングエンジニアだったので、パンクバンドのデモテープ作成のお手伝いをしたんですね。
で、そのバンドにレコード会社から声がかかり、デビューが決まったんですが、リーダーが私のところにやってきまして「デビューが決まったんですけど、実はパンクじゃなくてプログレがやりたいです」といわれたんです。
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PickUp編集部:
え(笑)
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松本:
今はベース専門ですが、当時はキーボードもひいていたのです。なので「松本さんはキーボードでバンドに入って、アレンジ変えてください」といわれまして・・・。
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PickUp編集部:
強引なリーダーですね・・・バンドに入ってもいないのに・・・。
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松本:
そう。当然条件を聞いたんですが、そしたら「ロサンゼルスで録音する」といわれまして。
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PickUp編集部:
どうしたんですか。
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松本:
だ、だったらいいよ、と乗ってしまいました。
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PickUp編集部:
笑。
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松本:
笑。アメリカ、ちょっと行きたかったし。じゃあ行ってみよう、と。
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PickUp編集部:
ノリがいいですねえ・・・。
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松本:
一緒にロサンゼルスで録音しまして、見事にプログレになった曲が完成したんです。でも、東京に持ち帰ってレコード会社の人に聞かせたら、実に不評でして・・・。
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PickUp編集部:
そりゃそうですよ、パンクバンドでデビューさせようとしたのに(笑)
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松本:
ロサンゼルスに行ってしまえば、レコード会社の手は届かないのでね(笑)
いいのができました、と持ち帰って聞かせたら、確かにいいのはできたけど、ジャンルが違う!と(笑)
で、レコーディングが終わってからみんなで東京に行って活動していたんですが、レコード会社ともめたままで、結局レコードはお蔵入りになりました。
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PickUp編集部:
えーーっ!幻のデビュー曲になっちゃった。
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松本:
はい。そんなこんなで、リーダーが、デビューできないならまたパンクに戻ると言い出しまして(笑)
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PickUp編集部:
なんじゃそりゃ。
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松本:
私としては、パンクバンドに入るわけにもいかないし、パンクにキーボードのパートが要らなかったので、どうしようかなと思っていました。
東京に、なんとなく馴染めない感じもあったので、ロサンゼルスに行ったときにお世話になっていた方にアドバイスをいただいて、アメリカに行くことになりました。
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PickUp編集部:
大阪に戻るわけではなく、ということですね。
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松本:
ええ。ロサンゼルスに行ったのはいいんですが、時期が悪かったのか、6月末のロサンゼルスは暑すぎまして、気温が40度を超えていました。それで、じゃあちょっと、ニューヨークも見ておこう、と。
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PickUp編集部:
え、なんだか目的なく放浪している感じなんですか・・・。大丈夫でしょうか。
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松本:
実は20代前半で結婚してまして、そのとき奥さんと一緒だったんですけどね。呆れられました(笑)
ニューヨーク行きのチケット代を払ったら、もうロサンゼルスに戻ることなくニューヨークで仕事を探さなければならないくらいの持ち金でしたので、ニューヨークについて、そのまま仕事を探しましたね。

勢いでアメリカに移住

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PickUp編集部:
それから現在までニューヨーク在住になったということで、奥さんも驚きでしょうね・・・。
新婚で、夫について行ったら、まさかブルックリンに住むことになるとは・・・
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松本:
はい、思います。
当時はイミグレーション(移民)規制などは緩かったので、日本食レストランでアルバイトをしていたら、食うには困らなくらいの稼ぎは得られましたので、ほかの仕事を探しながらアルバイト生活をしていましたね。7年くらいそんな感じでした。

私はミュージシャンとしてアメリカに行ったので、フリーペーパーなどにあるミュージシャンの仕事の募集を見るんです。広告欄のミュージシャンワンテッドをみて、電話でオーディションを受けたいと交渉していました。 電話だけだと相手がどんなものかわからないので会ってはくれるんです。今なら、デモテープを求められたりYouTubeのURLを聞かれて、ジャンルが違うなどメールで言われて終わっちゃうんですけど。

当時はインターネットなんて無かったですから、会いに行って演奏を聴かせるわけです。音楽に言葉はいらないですからね。 その後は、大きなバンドの前座などで演奏したりと活動していました。でも、いかんせん、音楽だけでは喰えないわけです。
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PickUp編集部:
そうなんですね。
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松本:
ニューヨークなので、ジャズをやる人が多いですしチャンスも多いのですが、ジャズでも喰えない。
じゃあミュージシャンは何で食うかというと、パーティでのバンドなんです。
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PickUp編集部:
ほう。映画とかで、街のパーティで演奏している場面を見たことがあります。
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松本:
そうですね。郊外に行くと、ちょっとしたパーティでもすぐバンドが呼ばれるんです。 ただ、そういう音楽活動は、郊外に住んで、車に機材から何からすべてを積み込んで移動するという形になります。 演奏能力も必要です。トップフォーティーと呼ばれる人気の曲をやらないといけない、あとはカントリーミュージック。これをひけないといけない。 私も、日本の演歌だったら、ある程度ひけるんですが(笑)。 日本で、飲み屋を生オケで回っていた時もあるくらいですし。

ということで、カントリーができれば、音楽で生活できるくらいの収入は得られたんですけど、そもそも私はカントリーを知らなかったし最初から覚えなければいけなかったうえに、そんなに好きなジャンルでもなかったので、迷ってはいました。
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PickUp編集部:
なるほど。
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松本:
そんな中で、ほかの仕事も探してみようとなりました。 で、登録していた人材派遣会社の紹介で、ブローカーになったんです。
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PickUp編集部:
金融業界に来たのは、たまたまなんですね・・・。

ミュージシャンからブローカーへ

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松本:
ブローカーを紹介されたのは、私がグリーンカード(アメリカ永住権)を持っていたのが大きかったかもしれません。日本語ネイティブなので、日本人からの注文を英語でさばけるアメリカ人、という立場ですから。

ちょっと脱線しますけど、うそのようでほんとの話なんですが、当時グリーンカードの申込はひとり何通出してもよいことになっていて、ひとり1000通とか出していたんです。
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PickUp編集部:
え!
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松本:
ワシントンDCの少し外れの郵便局で受け付けるらしい、という変な情報がどこからともなく流れてくるので、永住権が欲しい方々は、皆行くんです。今となれば、どこから出しても同じだと思うんですけどね。 噂では、そこに出したほうがグリーンカードが取れる可能性が高い、と。
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PickUp編集部:
なんだか人気のある宝くじの売り場みたいですね。
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松本:
ええ。で、私も行きまして(笑)。 現地に着いたら、大量の申込用紙が、郵便局の敷地にずらーっと並んでいました。イメージとしては、初もうでの仮設賽銭箱みたいな感じですね。 みんな、申請用紙をポンポン投げ込んでいました。 で、ちょっと離れたところにコピー機と申込用紙を売る売店が出ていたりとか(笑)。

ただ、翌年からはひとり一通になったようですね。わたしは混乱の年に見事永住権があたりましたので、ラッキーでした。 ということで、永住権を持った日本人として、ちゃんと働ける人は少なかったので、雇ってもらいやすかったです。
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PickUp編集部:
ただ、ミュージシャンから、まったくの畑違いの業界で困ったんじゃないでしょうか。
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松本:
それはもう。サキモノって何ですか、というところから始まりました。 この仕事はオーダーを入れることができればいいので、バイとセルさえ間違わなければいいと言われましたけど、最初はわからなかったです。 当時は電子取引が広がる前ですので、お客さんからの注文電話をうけて、バイとセルをいう人が必要だったんです。 今だったらこのような仕事はないですけどね。

日本からオーダーがありますので、バイリンガルである私の需要があったわけです。 フロアは人がごったがえすような戦場ですから、新型コロナショックで大荒れの今のような相場だったらパニックになっていたと思います。 中央にピットと呼ばれる場所がありましてね、ローカルトレーダーという方々がいるんです。 それを取り巻くように、ブローカーがいるんです。その向こうに電話ブースがあります。 電話で注文を受けると、外側に立っているブローカーに伝え、ブローカーは真ん中のローカルトレーダーとやり取りする感じです。
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PickUp編集部:
三層構造なんですね。
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松本:
あと、手招きや、追い払う手の動きなどで売り買いを表現します。
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PickUp編集部:
へー。手を挙げて叫びながらバタバタしているイメージでしたけど売り買いを手で表現しているんですね。
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松本:
で、実際の現場では、バイとセルなんて言わないんです。 「エイプリル アット 33」 しか言わないんです。
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PickUp編集部:
え、じゃあどうすればいいんですか?
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松本:
アットという前置詞が出たら、セルなんです。オンがバイなんですよね。 そんなの、最初知らないですよね (笑)。 とにかく省略します。限月(げんげつ)も言わないので、短いと「バイ10アットマーケット」で終わりですね。 そんなのを弾丸のような早口で言うので、ついていくので大変でした。

省略する、早口、という乱暴な現場でしたが、数字の間違いだけは気にしていたので、サーティーンとサーティーは、ワン・スリーとスリー・ゼロって、言い換えていました。数字は、ネイティブでも間違えるので。かつ、間違えたら、致命傷になるんでね。慎重にしていました。
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PickUp編集部:
いずれにせよ、プロの世界にいきなり飛び込むことになり大変でしたね。

アイリッシュバーでマーケットを学ぶ

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松本:
ええ。ただ、いいこともありましてね。 私はフロアにオーダーを入れる、お客さんの立場だったんです。 あと、電子取引ではなかったことから、市場が閉まるも早かったです。 各取引が13時頃から閉まり始めて、原油も14時ごろ終わっていました。 だから、15時くらいには、みんな飲んでいましたね。アイリッシュバーで。
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PickUp編集部:
早っ!
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松本:
わたしはお客さんの立ち位置なので、ごちそうするから飲みに来いと誘われるわけです。 飲みの誘いは絶対に断らないので、ついて行きました。そして飲みました。(笑) 私は当時から、ルックスはこんな感じでしたから、日本人のくせに髪の毛が長くて変な奴だとみられていました。その辺も良かったのでしょう。
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PickUp編集部:
身長も高いですしね。
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松本:
ええ、すぐに意気投合して、よくしてもらいました。 なので私はアイリッシュバーで、マーケットを学んだといっても過言ではないです。(笑)
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PickUp編集部:
いいなあ。私も学びたい。
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松本:
これが、実際そうなんですよ。 バイだセルだ一緒に言っているフロアの方々は、基本は体育会系なんですね。プロフェッショナルとして、体を使って注文をさばく。 ただ、マーケットを分析して中長期の視点を持つなどの資質は、全く持ち合わせていないんです。 同じアイリッシュバーには、ニューヨークの金融機関に勤めるアナリストも来ていたので、彼らからも話を聞けました。

たしか、ニューヨーク連銀のすぐ横のバーだったので、いろんな方が来ていましたね。まあ、FRBの政策立案には関係ない方ばかりでしたけど・・・。 そんな中、自分でもマーケットについて勉強するようになると、だんだんアイリッシュバーに通う面々で、金融知識の逆転が起こってくるわけです。
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PickUp編集部:
といいますと。
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松本:
はじめは先生役だったフロアブローカーの方々が、ある時から私にこの先の相場がどうなるのか、聞きに来るようになったんです。 そんな、ある程度相場が分かってきたころに、取引所の電子化の波が来ました。 衝撃的だったのは、もっとも電子化に遠いと思われていた砂糖などの取引所が、ICEというところに吸収されまして、一番最初にフロアがなくなったんです。 それを知って、ブローカー、またオーダーデスクみたいな商売はこの先なくなってしまうのではないかと感じたんです。 それで、いままでだったらブローカーのサービスとして出していた相場情報自体を売ることを考えました。 で、独立して情報配信事業を始めたというのが現在までの経緯ですね。
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PickUp編集部:
ミュージシャンのところからお聞きしましたけど、松本さんの適応力はすごいですね。
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松本:
まあ、その時々でなんとか切り抜けているという感じでしょうか。 投資もそうで、性格的には「いてまえ!」という感じでして、思い切ってトレードして、大損することもあるんですが、どこかで最後のボトムラインはおさえていますね。

ここまで行ったら大損するだろうな、ただ、こういう備えをしてあるからいいやというふうにはしています。 万が一に備えておくというのは、相場で生き残るため、一番重要だと思いますね。 だれだって連戦連勝みたいなことはないですからね。 最悪の事態を考えて、一応備えをしたうえで、いてまえ、ですから私の場合は。

まあ、なにごとも手堅くやれば、投資ももうちょっと上手かもしれないです。 手堅いだけだったら、いまブルックリンに住むこともなかったかもしれませんけどね。

ある程度、思惑通りにならない想定をしておけば、仮に損になっても精神的になんとかなりますからね。 ああ、なっちゃったね、と思うだけです。しんどい時もありますが、しゃーないな、じゃあ次に行こう、となれますし。 私の場合、悪い予感ばかり当たる気もしますが(笑)。 まあ、なんとかなっていますので良いんじゃないでしょうか。

PickUp編集部

類を見ない稀有な経歴をもつ松本さん。
日本でミュージシャンとして活動。 その後はご縁もあり日本からロサンゼルス、残り少ない資金でニューヨークへ移住。
ニューヨークへ渡ったあとは日本食レストランで働いた後ブローカーに転身。さらには独立して情報配信事業を開始。
松本さんの行動力と適応力がとにかく印象的でした。
中編では投資上手な投資家についてお伺いしました。

f:id:gaitamesk:20050928094155j:plain 松本英毅 氏
よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表。 会員制米国市場情報サイト「よそうかい.com 」を運営。ニューヨークを拠点に活動し、実際のトレードに役立つ情報提供を身上とする。金融から商品市場まで幅広い知識を有しており、一つの銘柄に捉われることなく総合的な判断を下すことができるのが強み。中でも、1バレル=10ドル時代から追い続けてきた原油市場については造詣が深い。トレード経験を活かした切り口の鋭い分析に定評がある。