1月3日のアメリカ軍によるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害をきっかけに米国とイランの報復合戦が激化するとの懸念から、ダウ工業株30種平均や日経平均株価は乱高下し、1月8日のイランによるイラク在住アメリカ軍基地へのミサイル攻撃で一挙にリスク・オフとなってドル・円相場は一時107.66の安値を付けた。
トランプ大統領の反撃次第では正に報復が報復を呼ぶ懸念が一挙に高まったが、イラン・アメリカ共に“戦争は望まない。”ことが分かると今度はリスク・オフの波がリスク・オンへと変わり、ドル・円は大きく買い戻されることとなった。
そもそもトランプ大統領は日本時間8日早朝のイランからのミサイル攻撃をイラクからの情報を通して知っており、米軍基地内の米兵を被害の及ばない地域に移動させ、またイランも意図的に戦略的に余り価値の無い所にミサイルを着弾させたらしい。
トランプ大統領は日本時間同日夜の記者会見で“イランの爆撃で米国人の死傷者は出なかった。”と胸を張り、イランに対してミサイル攻撃への報復として新たな経済制裁を科すものの軍事力は行使したくないと語り、国連のグテレス事務総長に“世界は今世紀最大の危機にある。”と言わしめた状況を、同総長が求めた、“関係国は対立をやめ、最大限の自制をし、対話を再開しなければならない。”を自らが率先して実践した。
イラン側は“我が国のミサイル攻撃によりアメリカ軍は80名の死者を出した。”と宣伝し,両国共に自国民に対しての面目を保つことが出来た。
アメリカ人は自国が重大な危機に瀕している時に大統領が果敢な決断を下すことを殊の外評価する。
1962年のキューバ危機の時のジョン・F・ケネディー大統領の決断にアメリカ国民は喝采した。
これで11月の大統領選での再選は確実だろうと言う人も多い。
取り敢えず新年早々の中東発の地政学的リスクは収まったかに見えるが、それにしても昨年5月以降何回かトライして破れなかった110円の壁をあっさり破るほどの買い圧力には驚いた。
どうやら110円を超えたところに大量のストップ・ロスの買い注文(ドルをショートにしていた人のドルの買い戻し。)が有ったらしい。
逆にそれだけ大量のストップ・ロスの買い注文が有ったにしては高値110.20で、頭も重い。
本日も110円丁度を高値として大きくは上がりそうにない。
大きくは105円~115円のレンジを意識して110円は概ねその中間と思って良いのだろうか?
財務省が昨日発表した11月の経常収支は1兆4368億円の黒字で、黒字は65ヶ月連続となりその幅は前年同月比で約75%拡大した。
直接投資は経常収支黒字を若干下回る1兆2899億円であったが我が国の経常収支黒字が今のペースで続く限り大きくは円安になる事は無いのではなかろうか?
新年早々108.50以下のストップの売り(AI.が仕掛けたも言われている。)、そして今度は110円を超えてからのストップの買い(短期プレーヤーのショートの買戻し。)に翻弄されたが、一昨年からのレンジ相場を振り返ると、下への追っ掛け売り、そして上への追っ掛け買いは慎みながら上手く立ち回りたい。