外国為替専門シンクタンクの外為どっとコム総合研究所では、一年に一回発行する「外為白書」において、外為どっとコム社の協力を得て、直近1年間の外国為替証拠品取引に関する投資家動向に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表しています。
2018年7月から2019年6月にかけての為替相場はどういうものだったのか。
またFXにチャレンジする投資家の性別、年代、投資対象、取引ツール、投資スタイルはどういうものなのか。
その一部を今回は特別にご紹介しましょう。
過去最高となった口座数
外為白書2019によれば、2019年3月末(2018年度)の店頭FX市場の口座数は795万2758件となり、前年同期の733万5303件から約8.4%増加しており、また、くりっく365の口座数も90万6776件と前年の85万9311件から約5.5%増加したことから、店頭FXと取引所FXの口座数の合計は885万9534件となり、前年よりも約8.1%増加して過去最高を更新しています。
ただ、2019年1-3月期(第4四半期)の口座稼働率を見てみると9.2%で前年同期の9.7%から低下して過去最低となったとしています。
FXのための口座を開設した投資家が増えたにも関わらず、実際に売買を行なった人は、かなり伸び悩みました。
これは日本経済の緩やかな景気拡大が続く中、FX各社が新たな通貨ペア投入やスプレッド縮小で、新規顧客の獲得に努力した一方で、米ドル/円のボックス相場が続き、高金利の新興国通貨が急落するなど、為替相場全体で不透明感が強まったことが、その背景にあったからかもしれません。
米ドル/円相場の取引総額が減少
外為白書2019によると、2018年度の店頭取引の総取引金額は3740兆0668億円となり、前年度の4190兆7416億円から約450兆円、10.8%の減少となり、くりっく365の総取引金額も30兆1837億円と前年度の33兆1334億円から約3兆円、8.9%減少したことがわかります。
最大の理由は、取引金額で最大シェアを占める米ドル/円の取引金額が大きく落ち込んだからで、外為白書2019は、店頭取引のデータで比較して、前年度に3011兆451億円だった取引金額は約845兆円、28.1%減少して、2165兆5625億円になったとしています。
これは、一定範囲内で通貨レートが上下動を繰り返すボックス相場の中、米ドル/円相場の方向感がつかめない展開が長く続き、様子見をする投資家が多かったことが推察されます。
また、そのほかの主要な通貨ペアについて、前年度に359兆6223億円だった英ポンド/円は、約78兆円、21.7%増加して437兆5428億円。
ユーロ/円は約133兆円、44.1%と大幅に増加して371兆2021億円。
ユーロ/米ドルは約85兆円、34.4%増加して333兆6072億円。
豪ドル/円は約68兆円、41.5%増加して232兆2265億円となり、それぞれのシェアを上昇させる結果になったことが明らかになりました。
首都圏に住む40代男性
今回で10号目となる外為白書では、これまで外為どっとコムで口座を開設している顧客に対してアンケート調査を行い、有効回答を集計して、FXに取り組む投資家たちの性別、年代、投資傾向などを明らかにしてきました。
2019年度版の有効回答者の内訳をみると、性別は男性が86.8%、女性が13.2%、年代別では40代が35.2%で一番多く、続いて50代26.8%、30代19.4%となり、30~50代で81.4%で大半を占めていることがわかりました。
また、居住地分布をみると、関東地区が42.5%で一番多く、これは日本の人口の居住地分布の関東地区の割合(34.1%)を上回りました。
この結果から、FXに取り組む投資家は関東地区に住む40代男性が多いことが推察され、外為白書では「地方高齢化」の進行を示しているのではないかと指摘しています。
レバレッジ10倍、保証金30万円以下、少額でデイトレードを繰り返す投資家
実行レバレッジに関しては、10倍が23%と一番多く、続いて5倍(17.8%)、2倍(13%)となりました。
20代~60代のいずれにおいても、1位が10倍、2位が5倍で、この二つが実効レバレッジのボリュームゾーンであることがわかります。
また、取引保証金については、10万円未満が37.5%で群を抜いて多く、続いて10~30万円が19.4%、3番目は100~300万円で急に金額が上がります。
つまり、保証金30万円以下が56.9%と半数を超えました。
取引頻度については、デイトレード(一日複数回)との回答が一番多く、41.3%でした。
第2位は一日1回程度が13.9%で、第3位が2~3日に1回程度で13.4%でした。
また、すべての年代でデイトレードが一番多い結果となりました。
なお、注文数量については、10Lotが36.8%で一番多かったのですが、1Lotが29.8%でこれに続き、「2019年6月の最新の月次調査で1Lotが初めて10Lotを上回った」としています。
そこから見えるのは、少ない保証金にするために投資額を抑え、高めのレバレッジで、1日数回のトレードを繰り返す投資家の姿ではないでしょうか。
外為どっとコム総研が毎年発行する外為白書は、このような投資家の動向を示すアンケート調査だけでなく、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円という4通貨ペアの1年間の動向を、チャートを使いながら月ごとに解説する「相場のあゆみ」や、米雇用統計の内容やFOMCの動向を振り返るコーナーもあります。
自分の1年間の運用成績を振り返る上でも役に立つと1冊となるのではないでしょうか。
PickUp編集部