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7月FOMC直前|FRBは政策金利据え置きへ、利上げリスクは残る【伊藤忠総研レポート】

⚫️サマリー:FRBは7月FOMCで政策金利を据え置きへ

7月28~29日のFOMCでは、政策金利が3.5~3.75%に据え置かれると予想する。直近6月の経済指標において、インフレ再燃懸念と労働市場の過熱懸念がいずれも和らぐ内容であったことから、FRBはインフレ動向を見極める姿勢を続けるとみられる。ただし、既往のエネルギー高の価格転嫁が様々な財やサービスに及ぶため、コアインフレ率の明確な低下は年末近くになり、FRBの利下げ再開も来年以降となると見込む。

米国インフレの動向|6月CPIは前年比+3.5%に鈍化

6月の消費者物価は、エネルギー価格がピークアウトしたほか、幅広い財・サービスの価格が鈍化した。

6月CPIはエネルギー価格の鈍化で+3.5%へ減速

インフレ率の推移

6月の消費者物価指数(CPI)は前年比+3.5%(5月:+4.2%)と大幅に伸びが鈍化した。ガソリン価格(5月前年比:+40.5→6月:+26.7%)を中心としたエネルギー価格の伸び鈍化(+23.5%→+15.7%)が全体を押し下げた。また、食品・エネルギーを除くコア指数は、財(モノ)とサービスがいずれも伸びが縮小したことから、前年比+2.6%(5月:+2.9%)と減速した。

コア財:関税による価格転嫁はピークを過ぎたか

コア財:関税による価格転嫁はピークを過ぎたか

コア指数の内訳をみると、財(コア財)は前年比+0.8%と5月(+1.1%)から伸びが縮小した。トランプ関税の影響を受けやすい品目では、娯楽品(5月前年比:+2.6%→6月:+2.9%)が加速を続けた一方、衣料等(+4.8%→+3.9%)や家具・家庭用品(+2.4%→+1.3%)の伸びが大幅に鈍化しており、価格転嫁の動きは全体としてピークを過ぎたと考えられる。また、現時点では、エネルギー高に伴う輸送・原材料コストの影響も目立っていない。今後は、価格転嫁が進むと見込まれるが、その勢いには不確実性が大きい。

メモリ高がPC・スマホに波及すればCPIを+0.2%pt押し上げも

AI関連財の価格上昇率

なお、堅調なAI関連投資の影響を受けてメモリの需給がひっ迫し、生産者物価指数(PPI)では関連品目が加速している。消費者物価への波及が懸念される状況にあり、実際に、USBメモリやSD カードを含む「コンピュータソフトウェア・周辺機器」は前年比+17.4%と、5月(+14.5%)から加速を続けている。一方、PC やスマホなどを含む「IT 関連財」の伸びは、6月まではおおむね横ばいとなり、メモリ高の影響ははっきりとは確認されない。ただ、アップルが6月下旬に PC とタブレットの価格引き上げを発表したように、今後は IT 関連財の価格への波及が進むと考えられる。このままメモリ価格の上昇基調が続き、PC やスマホに価格転嫁がされれば、PC やスマホの価格は平均で20%程度上昇し、CPI への押し上げは+0.2%pt 程度となる可能性がある。

コアサービス:住居費は横ばい、幅広い品目で伸び鈍化

コアサービス:住居費は横ばい、幅広い品目で伸び鈍化

コア指数のサービス(コアサービス)は前年比+3.2%と、5月(+3.4%)から減速した。コアサービスの半分強のシェアを占める住居費は、内訳となる家賃(5月前年比:+2.9%→6月:+2.8%)や帰属家賃(+3.3%→+3.3%)の伸びがおおむね横ばいであったことから、前年比+3.3%と5月(+3.3%)から横ばいとなった。住居費以外のサービス価格をみると、航空運賃の加速が収まったほか(+26.7%→+26.5%)、自動車保険の下落(▲2.0%→▲4.1%)が続いたことなどから、運輸全体のプラス幅は引き続き縮小した(+4.1%→+3.4%)。その他、医療(+3.6%→+2.9%)や教育・通信(+1.9%→+1.0%)の伸びが縮小した。医療費は医療保険料金の下落、教育・通信は携帯電話通信料金の下落によるところが大きいが、それらの要因を除いても、幅広い品目で伸び鈍化が確認された。賃金由来のサービスインフレに加速感がないほか、輸送コストなどエネルギー高に伴うコスト転嫁の動きも今のところ目立っていない。

FRBの金融政策|7月FOMCの政策金利予想と利下げ時期

7月FOMCは政策金利3.5~3.75%で据え置き予想

7月28~29日のFOMCでは、政策金利が3.5~3.75%に据え置かれると予想する。直近6月の経済指標において、インフレ再燃懸念と労働市場の過熱懸念がいずれも和らぐ内容であったことから、FRBはインフレ動向を見極める姿勢を続けるとみられる。

年内は据え置き、利下げ再開は2027年以降の見込み

先行きについても、年内の政策金利は据え置かれると予想する。中東情勢が再び不安定化し原油価格は上昇しているが、当社では、こうした情勢は徐々に改善に向かい、原油価格も緩やかに下落するとの見方を中心的なシナリオとしている。その場合、夏以降のCPIやPCEデフレーターの上昇率は縮小を続けることが見込まれる。ただし、既往のエネルギー高の価格転嫁が様々な財やサービスに及ぶため、コアインフレ率の明確な低下は年末近くになり、FRBの利下げ再開も来年以降となると見込む。

リスクシナリオ:FRBが利上げに動く可能性はあるか

長期の期待インフレ率

FRBが利上げに踏み切ることはリスクシナリオと位置づけているが、その可能性は無視できない。現状、期待インフレ率が大幅に上昇しているわけではなく、賃金上昇率も落ち着いていることから、本格的なインフレ再燃の状況にはない。ただし、高インフレが5年以上続く中では、インフレを抑制しきれない不安が残る。また、AIブームを背景に、生産性の向上(供給力の拡大)に先行して設備投資の加速や株高による資産効果が需要を押し上げ、インフレ圧力として作用していることもリスクを高めている。FRB高官からもそうしたリスクを警戒する発言が増加している。その結果、利上げ観測が高まることで長期金利が上昇しており、実際の利上げに至らずとも金融引き締め効果が生じている面もある。それでも、期待インフレ率の上昇や賃金インフレのリスクが顕在化すれば、輸送・原材料コストなどの価格転嫁が想定以上に強く、かつ長期化する恐れがあるため注意が必要である。

 
takahashi.jpg 伊藤忠総研・上席主任研究員
髙橋尚太郎(たかはし・しょうたろう)
2003年東京大学工学部計数工学科卒業。2005年東京大学大学院情報理工学系研究科修了。同年日本銀行に入行し、国際経済調査や金融市場調査等に従事、英国London School of Economics and Political Science(LSE)経済学修士課程修了。有限責任監査法人トーマツなどを経て、2019年伊藤忠商事入社、同年伊藤忠総研へ出向。
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