
この記事の内容
FRBの独立性危機や供給網の分断を受け、金・銀価格は高値を更新しました。ドルの信認低下と安全資産への需要が、金価格を異次元のステージへ押し上げています。テクニカル面でも収束局面を上放れ、金スポットは4,600ドル超の「無双状態」に突入しました。しかし、RSIは86と過熱ぎみであり、急騰ゆえの脆さという点も意識したいです。ここまでの強気相場の持続性を、最新データから検証します。
テクニカル分析:金スポット (日足/SMA10・RSI9)

金スポット、現状は「収束上放れによる上昇加速」
金スポットのチャートにおけるRSI(9)は、現在86と高い水準に達しています。前回の分析で見られた45付近の停滞から一転、過熱圏へ急浮上しました。短期的な「過熱状態」を示唆しているとも言えますが、強いトレンド発生時にはこの水準が維持されるようなケースも少なくありません。
価格推移を見ると、意識されていた4,500ドルの抵抗帯および三角保ち合い(収束局面)を明確に上放れ、上昇トレンドが再加速しています。直近高値であった4,550ドル近辺も力強く突破し、現在は4,600ドル台での推移となっています。保ち合いの期間を経てエネルギーが解放されたような形です。
現在、価格はSMA10(10日単純移動平均線)を大きく上回って乖離しています。SMA10自体も鋭い右肩上がりになっており、短期的なサポートラインとして機能し始めると考えられます。ただし、RSIが80を超えている現状では、新規の「追いかけ買い」の際は高いボラティリティへの警戒が必要です。
金スポット 今後の想定シナリオ
1. 上昇が継続し新高値を模索するシナリオ
現在の勢いを維持し、心理的節目となる4,700ドルから4,750ドル付近を目指す展開です。RSIが高止まりしたまま金価格が上昇を続ける「バンドウォーク」のような状態になれば、トレンドはさらに強固なものとなります。この場合、SMA10との乖離を保ったまま上値を追う動きが想定されます。
2. 高値圏での過熱感調整(横ばい)シナリオ
4,600ドル近辺で価格が足踏みし、急騰したRSIの数値を下げるための「日柄調整」に入る展開です。金価格が大きく崩れず横ばいで推移することで、下から追い上げてくるSMA10の接近を待つ形となります。このシナリオでは、4,550〜4,650ドルのレンジを形成し、次の材料を待つことになります。
3. 急騰後の押し目・調整下落シナリオ
RSI(9)の86という数値から利益確定売りが先行し、一時的な調整が入る展開です。その場合、まずは直近のレジスタンスからサポートに転じた4,550ドル付近が第一の防衛ラインとなります。さらに深く押した場合は、4,500ドル近辺までの揺り戻しが想定されますが、そこでのサポートが確認できれば、上昇トレンド自体は継続していると判断できます。
ファンダメンタルズ分析:なぜここまで上昇したのか
2026年1月、金スポット(XAU/USD)および銀スポット(XAG/USD)が歴史的な高水準で推移しています。この上昇は、米国内の「統治機構」を巡る不透明感と、世界的な供給網の再編が重なった結果であり、個人投資家にとっても資産の保全とリスク管理の両面で重要な局面を迎えています。
1. 米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性が危ぶまれる事態に
市場が注視しているのは、FRBの独立性を揺るがしかねない政治的状況です。パウエルFRB議長に対する司法当局の動向や、トランプ大統領による金融政策決定プロセスへの政治的介入を示唆する報道が相次ぎ、米ドルに対する信認が相対的に低下しています。中央銀行への政治の圧力は、通貨価値の安定性を損なうリスクとして認識されるため、特定の国家に依存しない「無国籍通貨」としての金に資金が流入しやすい環境が続いています。
2. 地政学リスクの継続と通商政策の影響も根強い
イランなど中東情勢の緊迫化や、ベネズエラなど南米における資源管理を巡る動揺、さらにはトランプ政権による関税政策の変更などが、国際社会の緊張を高めています。特に以下の点が市場の関心となっています。
- 地政学的緊張:紛争や動乱の長期化に伴う、「安全資産」とされる金・銀への恒常的な需要が高まる。
- 米国とBRICS諸国との通商摩擦: トランプ政権が示唆する中国やメキシコ等への極端な高関税は、従来のドルを基軸とした国際貿易網を分断させるリスクあり。「貿易戦争の影響を受けない資産」として、ドルの代替となる金・銀へ資金シフトが加速。
3. 銀スポットも急騰…固有の供給制約と産業需要の拡大アリ
金スポットと共に注目されているのが、銀スポットです。銀スポットの価格上昇は金スポット以上に顕著ですが、これは貴金属としての側面に加え、産業資材としての需給バランスが崩れているためです。2026年初頭から実施されている中国による銀の輸出制限は、物理的な供給不足を深刻化させています。一方で、AIインフラやクリーンエネルギー関連の銀に対する需要は依然として強く、構造的な需要が価格を押し上げる要因となっています。

4. 今後の留意点と下落リスクは
金・銀とも上昇基調は継続しているものの、ここまでの急激な価格高騰は急落リスクの可能性を高める側面もあります。
- 他市場の影響を受ける:他資産(株式等)の急落時に、証拠金確保を目的とした金・銀の「換金」売りが発生する可能性。
- 実質金利の変動:インフレ統計の推移により、米国の実質金利が反転上昇した場合に調整としての売りが出る可能性。
- テクニカルな過熱感:過去最高値圏で、利益確定売りが走る可能性。
総じて、現在の価格形成は「米国政府への不信による米ドル離れ」と「金・銀の供給不足」という二つの要因で整理できます。これらの収束が見通せない中、金・銀はポートフォリオの安定化に寄与する存在ですが、高いボラティリティの状況にあるということも、念頭においておきたい所です。
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金(ゴールド)の上昇・下落を左右する主な変動要因
金(ゴールド)価格は、インフレ、実質金利、米ドル相場、地政学リスク、そして中央銀行の動きなど、複数の要因が重なって変動します。ここでは、金価格が上昇しやすい局面と下落しやすい局面を整理し、金相場の見通しを立てる際のチェックポイントをまとめます。
上昇要因は次のとおりです。
- インフレ期待が強まると、金が価値保存手段として選好され、買いが入りやすくなります。
- 景気後退懸念や金融市場の混乱が広がると、安全資産として金への需要が高まりやすくなります。
- 実質金利が低下すると、利息を生まない金の相対的な魅力が高まり、金価格を押し上げやすくなります。
- 米ドルの価値が低下すると、ドル建てで取引される金が相対的に割安となり、金価格が上昇しやすくなります。
- 紛争や政治不安など地政学的緊張が高まると、リスク回避の動きから金への資金流入が起きやすくなります。
- 中央銀行が外貨準備として金を買い増す局面では、需給面の支えとなり、金価格の上昇要因になり得ます。
下落要因は次のとおりです。
- インフレ率が安定または低下し、物価上昇への警戒が後退すると、金への投資需要が弱まりやすくなります。
- 景気が安定し、株式などリスク資産への投資が優勢になると、安全資産である金の需要が減少しやすくなります。
- 実質金利が上昇すると、金以外の金利収入が得られる資産が相対的に有利となり、金価格の重しになりやすくなります。
- 米ドルが強含む局面では、ドル建て金価格が押されやすく、金相場が下落しやすくなります。
- 地政学的緊張が緩和し、リスク回避姿勢が後退すると、金への資金が流出しやすくなります。
- 中央銀行が金を売却して市場供給が増える場合、需給が緩み、金価格の下落要因になり得ます。
これらの要因は単独で作用するとは限らず、複数が同時に起きることで金相場のトレンドが形成されます。金(ゴールド)のテクニカル分析とあわせて、マクロ要因を点検することで、相場観の精度を高めやすくなります。
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