日銀政策とドル円急上昇【外為マーケットビュー】
動画配信期間:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
動画の内容抜粋
日銀政策決定会合とハト派姿勢
昨日のドル円急上昇の主因は日銀政策決定会合だった。事前に参議院選挙でインフレが大きなテーマとなり、政友会代表幹事の新浪氏は「日銀はすぐ利上げすべき、経済悪化なら総裁の責任」と強い調子で発言していた。新浪氏は低金利継続による円安とインフレ上昇が内需不振を招いているとし、「物価の番人である日銀が過度にビハインド・ザ・カーブは許されない」との見解を示していた。
しかし実際の政策決定会合では、展望レポートで成長見通しは変更されなかったものの、今年の消費者物価指数見通しが大幅上方修正された。従来の2.0-2.3%(中央値2.2%)から中央値2.7%へと0.5%も修正され、主因は米価格上昇だった。これほど大きな見通し修正は物価予測能力への疑問も生じさせる。
植田総裁の会見内容と市場への影響
植田総裁の記者会見は非常にハト派的な内容となった。関税問題が決着したにも関わらず、将来の利上げに関する言及は一切なかった。関税上昇による輸出企業への影響と来年春闘での賃金上昇への配慮が背景にあると考えられる。
新浪氏が指摘したビハインド・ザ・カーブ懸念について、植田総裁は「ビハインドという状況ではない」と明確に否定した。為替についても「ほぼ想定内のレベルにある」と発言し、現状の0.5%という極めて緩和的な政策がしばらく続くことが示唆された。
円安継続の見通しと要因分析
ドル円下落には日銀利上げ、FRB利下げ、グローバルリスクオフの3つの要因が考えられるが、いずれも当面期待できない。株価は最高値近辺で絶好調、パウエルFRB議長は利下げに慎重姿勢を維持している。FOMCではトランプ大統領の9月利下げ発言直後だったが、リップサービスは一切なく毅然とした態度で「9月の政策は全く決まっていない」と明言した。
多くのエコノミストは次回利上げを10月から1月に後ずれさせており、春闘での賃金上昇確認後の行動が予想される。テクニカル面では148円が頭、140円が底のアセンディングトライアングルを上抜けし、8円幅を考慮すると156-157円も視野に入る。
米雇用統計と今後の注目材料
本日の米雇用統計は非農業部門雇用者数10.4万人、失業率4.2%の予想だ。パウエルFRB議長が失業率を最も注目すべき指標に挙げたのは、雇用が強いため利下げの必要がないというメッセージと解釈される。
来週は重要イベントが少なく、ISM非製造業指数とイングランド銀行の0.25%利下げが予想される程度だ。ドルインデックスは長期サポートラインで反発し、週足で100を超えつつあり、次の目標は102となる。
米国の新関税レートの発表と影響
8月1日分の新しい関税レートが決定された。日本は15%となり、赤澤大臣の貢献が大きかった。韓国も15%だが3,500億ドルの対米投資を約束させられている。台湾は20%、注目はスイスの39%で、医薬品と時計が主力のスイス経済への影響は大きく、スイスフラン安ユーロ高が進んでいる。
関税上昇は通貨上昇の経済学的セオリーに合致し、トランプ大統領も「強いドルを好む」と発言している。関税対象国の経済減速とアメリカへの投資資金流入により、ドル高基調が継続する見込みだ。
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志摩力男 氏慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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