米雇用統計好結果とトランプ減税法案成立:ドル円レンジ相場の継続【外為マーケットビュー】
動画配信期間:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
動画の内容まとめ
米雇用統計の予想上回る結果と市場の反応
米雇用統計は市場予想を上回る良好な結果となりました。雇用者数増加は14.7万人と予想の11万人を上回り、失業率も4.3%への上昇が予想されていたところ4.1%にとどまりました。特に家計調査の数字が良好で、ブレやすい指標であることが改めて確認されました。時給についてはやや期待を下回りましたが、全体的には堅調な内容でした。
市場はADP民間雇用統計が-3万3000人という悪い数字だったことから、雇用統計も弱い結果を期待していました。リセッション懸念や7月利下げの可能性を織り込んでいた中での予想外の好結果となりました。
FRB政策金利予想の大幅変更
米雇用統計の結果を受けて、FRBの政策金利に対する市場の織り込みが大幅に変更されました。7月利下げの可能性は従来の2割超から5.2%まで急低下し、95%が政策据え置きを予想する状況となりました。
年内の利下げ織り込みも大きく変化し、米雇用統計前は年内3回(9月、10月、12月)の利下げが予想されていましたが、12月利下げが消失し、来年1月まで据え置き、3月から利下げ開始という見通しに変更されました。10月利下げから来年3月まで約5か月間の政策据え置き期間が想定される状況となっています。
ドル円の急騰と現在の水準
この金融市場の変化を受けてドル円は急騰し、143.80円から一気に145円近くまで上昇しました。ニューヨーク市場は独立記念日のため半日取引となり、午後は静かな展開となりました。
東京市場では売りから入る動きが見られ、144.56円まで押し目を作りましたが、ニューヨーク市場休場のため大きな動きは期待できない状況です。
ドル円のレンジ相場継続見通し
大きな視点で見ると、ドル円は142円前半から148円のレンジ相場が継続しています。142円前半は非常に堅く、何度攻めても押し返される状況が続いています。一方、148円への到達も困難な状況で、過去には米中合意やイラン・イスラエル戦争への米軍参戦懸念で148円近くまで上昇したものの、その後急落する展開を繰り返しています。
1期目のトランプ政権時代も、当初は動きがあったものの、貿易交渉の内容が期待を下回り、トランプ大統領の発言に振り回される中で最終的に動かなくなった経緯があります。4月以降の動きを見ても、急激なドル安の後、リバウンドを経て横ばいとなっており、142円台突破も148円超えも困難な状況となっています。
トランプ減税法案の成立と内容
昨日、トランプ減税法案(ビッグ・ビューティフル・ビル)が下院で可決され成立しました。この法案は既存のトランプ減税と法人税減税を恒久化するもので、将来の財政赤字を押し上げることになります。チップや残業代への免税も含まれますが、景気刺激効果は限定的である一方、財政負担は3.8兆ドル(500兆円超)と非常に大きくなります。
減税法案の逆進性と格差拡大
この法案は著しい逆進性を持っており、年収1万ドル以下の低所得層は560ドルの負担増となる一方、年収が高いほど恩恵が大きくなる構造となっています。年収3万ドル超から徐々にメリットが生じ、12万ドルで6,000ドルの減税、年収330万ドル(約5億円)以上では年間11万8000ドルもの恩恵を受ける設計となっています。
長期金利上昇リスクと今後の展望
法案成立により支出増加が見込まれるため、長期金利の上昇傾向が予想されます。長短金利差の拡大により、現在4.86%の30年債金利が5%を超えて上昇するリスクがあります。ただし、短期金利についてはトランプ大統領が抑制を図ると予想されます。
7月利下げの確率はほぼゼロとなりましたが、ウォラー理事やボーマン副議長が今回の雇用統計をどう評価し、再び7月利下げを主張してくる可能性もあるため、引き続き注意が必要です。
当面はドル円のレンジ相場が継続し、戻り売りと押し目買いの両方が機能する環境が続くと予想されます。
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慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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