執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年3月28日 12時17分
振れ幅大きくもトレンド出にくいか、日銀の追加利上げ巡る動向にも警戒
米ドル/円、高値圏でしっかり
米ドル/円は150.942円まで上昇幅を広げたあと、4年ぶりの低水準となった米消費者信頼感指数から149.548円まで下落。その後、期末に関連した米ドル買いが出るなどして、150.70円台まで切り返しました。同水準からはトランプ大統領が米国産以外の全ての自動車に25%の関税を課すとしたことで、不安定な値動きとなる場面はありましたが、上昇の勢いは止まらず米ドル/円は151.207円レベルまで上昇幅を広げました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
下押し後のリバウンド狙い
来週は月初めで米雇用統計など重要指標が並びますが、最大の注目はトランプ大統領による相互関税の内容となります。米銀では、相互関税について、「税率が20%なら米インフレを1.5%押し上げ、成長率を2%押し下げる」一方で、「税率が10%なら米インフレを0.75%押し上げ、成長率を1%押し下げる」との試算を示しています。ただ、市場ではこれよりも少し楽観的な税率7%程度に留まるとの見方が少し優勢なようです。仮に20%以上となれば、株価調整や米国の経済成長鈍化からリスクオフの流れが強まり、クロス円主導で円が上昇する危険はあります。また、10%だったとしても市場の楽観的なムードを踏まえれば、リスク回避の流れが強まっても不思議ではありません。また、10%以下なら市場はリスクオンの流れが強まり、株高・円安をサポートしそうです。
また、トランプ米大統領は中国に対して、TikTokの米国事業の売却を承認すれば、対中関税の軽減を検討する案も示しています。20%の関税が課されても、この案を中国政府が受け入れれば、投資家センチメントが改善することも考えられるため、相互関税を受けた中国政府の出方にも注目が集まります。オプションが多数あり見通しづらい状況ですが、個人的には、米国の関税に対する報復措置などから、一旦はリスク回避の流れが強まると考えます。ただ、相互関税は米国にとっても諸刃の剣であるため、トランプ大統領も交渉余地は残すと思われ、安堵感から徐々に米ドル/円は下値を切り上げてくるのではないかと期待しています。
とはいえ、植田日銀総裁が「過去と比べ、為替変動が物価に影響及ぼしやすくなっている」としている点は気になります。日本にとっては、関税による輸入品価格の上昇はインフレ圧力となるため、円安が進むようなら日銀の早期追加利上げへのトーンが高まり、米ドル/円の上昇幅を抑制することも考えられます。このように考えると、振幅が大きくなる危険はありますが、全体的にはトレンドは出にくいかもしれません。
チャネル上限付近の動向に注目(テクニカル分析)
米ドル/円は短期的に幅の広いレンジでの推移を考えています。日足一目均衡表の雲のねじれと同じくして、下降レジスタンスラインを上抜けする格好になっており、トレンドが変化した可能性はあります。しかし、下降チャネルの幅と比較して、今回の上昇チャネルの幅が小さいこともあり、上昇のモメンタムが続かない危険はあります。直近の支持線にサポートされるなら、フィボナッチチャネルの38.2%ライン(黄色)が推移する153円付近を目指す一方で、支持線となる下限のラインを割り込んで来れば、147.000円付近まで調整した後に徐々に水準を戻してくるのではないかと、考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ(TradingViewチャート)」
予想レンジ:USD/JPY:147.500-153.500
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一言コメント
センバツ高校野球が開催されていますが、あの大谷選手の母校の花巻東が勝利しても、これまでよりメディアの扱いが少なかったように感じます。ほかに報道すべき話題、特に日米の政治の話題が多かったからでしょうか。
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