動画の内容 ポイントまとめ
トランプ2.0時代のドル円相場展望:エミン・ユルマズ氏の分析
2024年1月、トランプ氏の米大統領就任で、金融市場は新たな局面を迎えようとしています。米大統領選挙キャンペーン時からインフレ助長と金利上昇によるドル高が予測されていましたが、実際の政策運営はどうなるのでしょうか。エコノミストのエミン・ユルマズ氏が、トランプ政権2.0時代の為替相場の展望について語っていただきました。
トランプ政権2.0の政策スタンス
トランプ氏は選挙キャンペーンで過激な発言を行うことで知られていますが、実際の政策執行においては比較的穏健な姿勢を示すことが多いと指摘されています。特筆すべきは、閣僚陣の中でもトランプ氏自身が最も穏健な立場にあるという点です。
選挙期間中に主張していた1,400万人の不法移民の国外退去については、実際の執行は限定的になる可能性が高いと分析しています。仮に大規模な強制退去を実施した場合、深刻なインフレ圧力や賃金上昇圧力が生じる懸念があり、現実的には象徴的な措置に留まる可能性が指摘されています。
インフレと為替政策の方向性
トランプ氏は前回の政権時と異なり、「ドル高」への批判は控えめである一方、インフレ抑制への強い意志を示しています。これは、バイデン政権下でのインフレ政策への批判が選挙戦での重要な争点となった背景があります。
特に食料品価格の上昇、具体的には卵価格の月次3%以上の上昇などが、国民の不満を高める要因として認識されています。日用品の価格上昇は直接的に国民生活に影響を与えるため、インフレ抑制は政権の最重要課題の一つとして位置付けられています。
日本への影響と円相場
日本政府と日本銀行は、トランプ政権との関係を考慮しつつ、為替相場の安定を図ろうとしています。具体的には、ドル円相場を150円前後で維持することを目指していると見られています。極端な円安はトランプ氏からの批判リスクがあり、一方で円高も輸出競争力への影響が懸念されるため、微妙なバランスが求められています。
今後の為替相場展望
ドル需要の継続要因として、原油価格上昇による新興国のドル調達ニーズ、各国の米国債売却によるドル高圧力、国際金融市場での安全資産としての需要が挙げられます。予想される相場動向としては、ドル円相場は150円台でのレンジ相場が中心となり、クロス円は下落リスクに要注意、特にユーロ円には注意が必要です。
重要なリスク要因
トランプ大統領とイーロン・マスク氏との関係は重要なリスク要因の一つです。ソーシャルメディアへの強い影響力を持つマスク氏とトランプ氏との潜在的な対立可能性、利益相反の問題への懸念が指摘されています。
金融政策を巡る課題としては、FRBの政策余地の制限が挙げられます。利下げ余地が限定的である中、株価下落時の対応が難しくなる可能性があります。また、4年間で2回程度の大型株価調整(20-30%規模の下落)も想定されています。
トランプ政権内部の力学
閣僚人事においては、スコット・ベッセント財務長官の起用が市場にポジティブな影響を与えると見られています。相場経験者としての専門性と、良識派としての評価が評価されています。
市場への示唆
短期的な展望としては、ドル円相場は150円台を中心とした比較的安定的な展開が予想されます。ただし、クロス円の下落リスクには警戒が必要です。中長期的には、トランプ氏の政策実行力、FRBとの関係性、イーロン・マスク氏との関係展開、グローバル経済環境の変化に注目する必要があります。
結論
トランプ政権2.0下での為替相場は、表面的な過激な発言とは異なり、比較的安定的な展開が予想されます。ただし、複数の重要なリスク要因が存在することから、市場参加者は慎重な姿勢を維持する必要があります。
当面のドル円相場は150円台を中心としたレンジ相場が想定されますが、クロス円の下落リスクには警戒が必要です。インフレ抑制を重視する政権の姿勢は、一定程度のドル高を容認する可能性があり、この点は市場参加者にとって重要な判断材料となるでしょう。
市場参加者は、政策実行の実態とリスク要因の展開を注視しながら、機動的な対応を準備することが求められます。
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エコノミスト、グローバルストラテジスト
トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。
97年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学大学院にて生命工学修士取得。
2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に関わる。
2024年にレディーバードキャピタルを設立し、代表を務める。
現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信も積極的に行っている。

神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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