執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年1月17日 13時21分
日銀追加利上げ姿勢次第では、更なる円高も
米ドル/円、154円台へ下落
米ドル/円は154円台へ下落。一部報道から「トランプ氏側近が段階的な関税賦課を模索している」と伝わると、安堵感から米ドル/円は158円前半までの戻りを試しました。しかし、米国のインフレ指標が市場予想に届かなかったほか、ウォラー米FRB理事が「3月利下げの可能性が排除され得るとは考えていない」と述べ、米国の利下げ休止観測が後退する中、日銀の追加利上げへの思惑が高まり、米ドル/円は154.975円まで下落しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
FX実践解説、全てをさらったウォラーFRB理事、ドル円ガラガラ(2025年1月16日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
どっちに転んでも円高?
氷見野日銀副総裁の講演については、1月利上げに対して踏み込んだ発言はないだろうと考えていましたが、実際には「焦点は利上げするかどうかだ」と1月利上げに前向きな姿勢が示されました。また、氷見野副総裁が発言した翌日にも植田総裁が「(賃上げ)支店長会議で前向きな話多かった、会合で利上げを判断する」とし、発言を通じて利上げへの外堀は完全に埋まったと考えて良いようです。利上げをほぼほぼ織り込んだため、注目は展望レポートでの物価見通しや植田総裁の発言を通じた追加利上げや利上げペース加速への意識が高まるかどうかでしょう。早期の追加利上げ期待が広がれば、円がもう一段押し上げられることも考えられます。
もっとも、日銀が実際に利上げに踏み切れるかどうかは本邦の条件だけで決まりません。これまで日銀は「海外経済や金融市場の動向が日本の経済・物価見通しに与える影響を見極めつつ判断」としています。20日に就任し二期目がスタートするトランプ米次期大統領の発言を受けて金融市場で大きな混乱が起きれば、利上げが見送られることもあり得ます。ただし、リスク回避志向の高まりは円押し上げの材料となります。つまり、日銀が行動するしないに拘わらず、円が買われやすい状況が続きやすいように感じています。
155円付近の攻防(テクニカル分析)
米ドル/円は、これまでの支持線だった21日移動平均線を割り込んで下落ペースを早めましたが、ちょうど、12月3日安値148.644円からの上昇幅の38.2%押しのレベルで、下げの勢いが緩んでいます。この辺りで値固めできれば158円台への戻りも期待できそうですが、割り込んでくれば152.80円レベルの200日線に向けて下値模索の流れが強まるのではないかと、考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:152.500-158.500
1/20 週のイベント:
一言コメント
これまでの観測報道に対する市場参加者の怒りや失望が日銀に届いたのか、日銀がコミュニケーションの手段を変えてきたのかと勘繰りたくなるように、会合を控えて総裁や副総裁が発言しています。恐らく、新年の挨拶の時期と重なったことが、大きいと思われますが、こうした流れが続けば、観測記事に悩まされることも減るのでしょうか。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。