執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年10月25日 12時35分
イベント前の調整警戒、ローソク足も不穏な形
米ドル/円、一時153円台
トランプ氏が米大統領選挙で勝利すれば、関税賦課や拡張的な財政策から米金利が上昇するとの思惑が支えになって、米ドル/円は153.185円まで上昇幅を広げました。また、日銀の追加利上げが後ずれするとの思いが燻ったことも、米ドル/円が上昇する材料となった面もあります。もっとも、短期的なところで上昇スピードが速かったほか、本邦の複数当局者から円安けん制発言が聞かれたこともあって、上昇一巡後は151.58円付近まで押し戻されました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
FX実践解説、前日から一転してドル安相場「いざ、勝負!」(2024年10月24日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
トランプトレードの巻き戻し警戒
足もとの米ファンダメンタルズや米大統領選への期待感から、米国の年内利下げ見通しは、0.25%をベースにして1.6回程度まで後退しており、11月か12月のどちらかで利下げを見送る可能性を3割程度織り込むなど、米利下げに対する見方が変わってきています。また、賭けサイトの「ポリマーケット」では、トランプ氏の勝利を64%前後まで織り込む格好になっており、引き続きトランプトレードへの期待は強そうです。本邦の衆院選の結果次第である点は否定しませんが、こうした環境は米ドル/円を目先、下支えすると見られます。
米大統領選候補者の支持率
出所:Polymarket、ファイブサーティエイト
ただ、米大統領選を巡っては気になるデータも市場では囁かれています。これは、大統領選が行われる年に、選挙前の3カ月間にS&P500が上昇したときは80%以上の確率で与党候補が勝利するというものです。同指数は今年8月から280p超上昇していますので、この法則に従うならハリス氏勝利の確率はかなり高いことになります。実際にファイブサーティエイトでは、ハリス氏支持が46.6%、トランプ氏支持が45.8%(24日時点)とハリス氏が優勢です。こうした結果を見るにおいて、勝利がどちらに転ぶかはまだ分からないと思われ、そのため、選挙前にトランプトレード(金利高・ドル高)の巻き戻しが入る素地はあるように感じます。米ドル/円は底堅さを感じつつも、調整への警戒が徐々に高まっているように感じています。
また、雇用統計については、天候不良や航空大手ボーイングのストライキなどネガティブ材料が散見されるため、前月のような強いデータからは一転して弱さが目立つ指標結果になるとの見通しが優勢です。この点も、米国の利下げ期待剥落のムードを後退させて、米ドル/円の重しとなるかもしれません。
孕み線出現の影響は(テクニカル分析)
米ドル/円は、200日線を上抜けて、日足一目均衡表では三役好転の状態となり、買いシグナルが点灯しています。しかしながら、ダマシも多いと言われますが、ローソク足は高値圏で孕み足が出現したため、目先、高値警戒感がくすぶりやすいと感じます。151.404円付近の200日移動平均線を割り込んでくるようなら、148.315円(執筆時点)の21日線付近まで調整して、反発の力を蓄える展開が見通せます。逆に、孕み足がダマシとなるようなら、155.00円を目指して下値を切り上げていくことになりそうで、目先は神経質な値動きが続くのではないかと、考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:148.000-155.000
10/28 週のイベント:
一言コメント
200日線を越えてからの上昇スピードは少し速かったように感じました。やはり、200日線を挟んで通貨強弱が変わると見る投資家は多い様子で、ポジションのアンワインドが出たんでしょうね。
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