総括
FX「トリプル高、円買い介入をものともせず、南アに何が起きたのか」南アランド見通し
「通貨3位、株価16位」
「予想レンジ 南アランド円8.1-8.6」
(ポイント)
*トリプル高、円買い介入をものともせず
*トリプル高は4月25日に始まった。大買収提案で市場が活性化
*中銀はタカ派
*南アの野党が低迷の与党ANCに苦戦する理由
*ただムーディーズは選挙後の連立政権に警告
*IMFが成長見通しを0.1%引き下げ
*問題山積の中のランドの強さあり
*現在、電力負荷制限は行われていない(選挙前で配慮か?)
*日本企業、海外企業も問題山積でも撤退せず
*鉱産物価格依然堅調
*失業率は高水準
*アゴア法適用継続で南アの対米輸出への恩恵続く
*インフレ目標引き下げの議論が始まる
*外貨準備の財政活用を可決
*5月29日に大統領選挙と総選挙
*中国と南アの関係は強化されている
*グレイリストには2025年まで残る
*人口は増加、白人は減少
(トリプル高、円買い介入をものともせず)
4月は円買い介入があったが月間最強通貨だった。5月になっても介入が続いたがここまで最強だ。年間でも3位に浮上している。南ア全株指数も上昇、一時、年初来5%を超えて下落していたが、現在は2.04%高。南ア10年国債利回りは11%を割り込んで10.77%へ低下した。
(トリプル高は4月25日に始まった。大買収提案で市場が活性化)
世界最大の鉱業会社BHPグループによるアングロ・アメリカンに対する388億ドルの買収提案は、4月25日に行われた。そこから南アランド、南ア株式が急上昇した。債券が買われ利回りが低下した。トリプル高。
ただ翌26日にアングロは提案を拒否した。それは価格の問題であり、ここから価格を引き上げる交渉が行われる。期限は5月22日までだ。
BHPの買収の主な狙いは世界の脱炭素に不可欠な「銅」の持ち分の拡大だ。電気伝導率の高い銅は、再生可能エネルギーやEV(電気自動車)に欠かせない。生成AIで電力消費量の負担も増える中で、銅需要が膨らむ。2社合わせると世界シェアは10%にのぼるという。
アングロの筆頭株主は7%前後を握る南アの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・コーポレーション」で買収合戦のカギを握りそうだ。南ア発祥のダイヤモンド、デ・ビアスグループを傘下に抱えるアングロは南アと関係が深い。このほか、スイスのグレンコア、英豪リオティント、ブラジルのヴァーレ、中東、中国、インドも買収に乗り出すかもしれない。
(インフレターゲットを引き下げたい思惑、中銀はタカ派)
3月消費者物価は前年同月比5.3%上昇し、2月の5.6%から減速した。予想の5.4%をやや下回ったが、南ア中銀が利下げを開始する可能性は低いとみられている。南ア中銀はインフレが目標の中間値である4.5%に達するのは2025年末近くになると予想している。さらに南ア中銀はインフレターゲットを引き下げたい思惑がある。中銀は現在3-6%のインフレターゲットを3-5%、さらに2-4%へ引き下げる議論を始めようとしている。インフレ抑制を確固たるものとしたいようだ。4月の消費者物価発表は5月22日だ。
(南アの野党が意外と耐えている、日本の自民党のようだ)
南アの与党ANCは30年ぶりに選挙危機に直面しており、支持率が大幅に減少し、5月29日の選挙で議会の過半数を失う可能性があると予想されている。
しかし、1994年のアパルトヘイト廃止以来政権を握っているANCが支持を集めるのに苦戦しているにもかかわらず、政権維持に役立つ可能性がある重要な利点がある。
それは野党が分裂し、組織化されていないことだ。選挙には70の政党と11の無所属候補者が立候補しており、野党は細分化されているという。ANCは2019年に行われた前回総選挙で57%の得票率を獲得したが、失業率の上昇、長引く権力危機、増大する悪政疑惑を考慮すると支持率は急落すると予想されている。
しかし、アナリストらは主要な野党に対する支持が停滞する可能性も指摘している。
イプソスの世論調査では、国内最大野党の3党、民主同盟(DA)、経済自由戦士(EFF)、インカタ自由党(IFP)の伸びがわずかであることが示されている。
ANCは中道左派政党としての体裁をとってきたが、DAは右派である。EFFは土地の大規模な国有化を推進する左翼政党。一方、IFPはズールー民族主義を背景に台頭し、右傾化している。
ANCの最大のライバルであるDAの支持率は21.9%と推定されており、2019年の投票以来わずかに支持率が上昇した。EFFとIFPも同様の停滞を示し、世論調査はそれぞれ11.5%と4.4%で、前回の選挙でのそれぞれの評価よりも1%ポイントをわずかに上回った。ANCが支持を失っているにもかかわらず、DAとEFFが目立った成長を示さないため、野党の分裂が起きている。野党は団結しつつあるはずだが、野党間の分裂はさらに進んでいる。ANCの支持低下が野党第一党の支持の大幅な増加につながらない。ANCは主要なライバルが目立った成長を示さないため、選挙後も最大政党であり続けるだろう。
テクニカル分析(ランド/円)
円買い介入に勝つ
日足、介入で一時8.209まで下落も5日連続陽線でボリバン2σ上限へ近づく強さ。5月9日-10日の上昇ラインがサポート。4月29日-5月10日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、介入で円高も先週はボリバン3σ上限へ。4月22日週-5月6日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月6日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、ボリバン2σ上限へ。3月-4月の上昇ラインがサポート。22年6月-24年4月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線上向き。
年足、2023年は円とデッドヒートを繰り返しほぼ同位の10位。今年は円を大きく引き離す。21年-23年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。
喜望峰
ムーディーズは選挙後の連立政権に警告
ムーディーズは、今月の選挙後に連立政権が誕生した場合、南アは長年の課題解決でさらに前進するのに苦戦する可能性があると警告した。「新政権の使命の強弱や、支持確保に必要な小政党への譲歩によっては、すでに複雑化している財政、経済、社会政策目標の管理がさらに困難になる可能性がある」と述べた。
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