輸入会社で「実需」の為替業務を30年以上担当してきたT.Kさんは、FX歴15年というベテラン兼業トレーダーです。FX投資の特長であるレバレッジを使って高収益獲得を目指すのではなく、あえてボラティリティの低い時間帯でトレードし、100円、200円という小さな利益を積み重ねるやり方で素晴らしい成績を収めてきました。後編では利益確定の判断基準や損切りルールなどさらに詳しいトレード手法について伺います。
ハンドルネーム :T.K
年齢・性別 :50代男性
職業 :会社員(兼業トレーダー)
FX歴 :約15年
トレードスタイル:デイトレード&スイング
投資商品 :FX、個別株
▼前編はこちら
▼目次
1.オプションカットレートを必ずチェック
2.「ボラ」の低い時間帯にトレード
3.暗号資産は高ボラティリティ過ぎて撤退 い
4.トレードは100%スマホで
5.トレードの90%は失敗だったが・・・
6.利益確定は評価損益で判断
7.損切りは期間毎の収支で判断
8.為替介入で500万円の損切りを経験
9.FXは将棋のような知能ゲーム
10.FX投資をするなら必ず勉強しよう
オプションカットレートを必ずチェック
編集部:-
エントリーポイントはローソク足の動き方などで判断されているんでしょうか?
T.K氏:- もちろんローソク足は見ています。ただ、チャートの動きで判断する前に、外為どっとコムのアプリで提供されているニュースの市場概況で注文情報が出ていて、何円でオプションカットのオーダーが入っているかを確認するんです
編集部:- リアルタイムオーダーですね。
T.K氏:- FXを十数年間やってきて、ファンダメンタルズで相場の大きな流れはつかめますが、その流れとは関係なく、オプションカットのレート付近で大きく動くことがあるので、どこにオーダーが入っているのかを、頭に入れてトレードするようにしています。
編集部:- 頭の中には、オプションカットのレートでラインが引かれていて、その間をチャートが上がったり、下がったりしているんですね。
T.K氏:- はい、先ほども話したように、長期スパンで見れば上がる相場でも、ポジションを保有している2〜3分の間にも、一瞬大きく下がったり、下落相場でも、急に上がったりしますからね。
編集部:- なるほど。そういう大きな動きを利用して利益を出すんですか?
T.K氏:- いいえ、むしろオプションカットのラインを意識して、そこにかからない範囲内で、リスクを抑えてトレードするようにしています。
「ボラ」の低い時間帯にトレード
編集部:- ボラが上がる瞬間は使わないんですね。他にもエントリーで気をつけていることはありますか?
T.K氏:- 時間帯です。例えば、東京市場が9時に始まって、9時55分には金融機関が取引するその日の「仲値」が決まりますよね。また、会社が決済に必要な資金を調達しなければならない「ゴトー日(※2)」や月曜日は相場が動きますよね。会社で貿易を担当する私は「ドルを買わなきゃいけない」とか、「ドルを買うだろう」とか、仕事の経験をいかしています。
(※2)「ゴトー日」:毎月5、10、15、20、25、30日のように5と10がつく日のこと。日本企業の資金決済が多くなるため、ドルの実需が増える傾向がある。
編集部:- なるほど。
T.K氏:- 12時を超えると、会社はお昼休みになり、社員は食事に行きますので、相場の動きは穏やかになります。その後は、午後3時までしか会社は取引できないから、3時になる間際に相場が動くことがあります。4時になったら今度はロンドン市場が始まるから、また違う動きになりますよね。午後9時、11時になれば重要指標が発表され、アメリカの人たちが参入してきて、オプションカットが絡んできます。そういう時間帯に相場は動くということを頭に入れてトレードしています。
編集部:- 確かに時間帯によってボラティリティが変化します。
T.K氏:- ただ、私はボラティリティが高くなり過ぎないところでトレードするように心がけています。
編集部:- 本当にリスクを抑えたトレードスタイルなんですね。
T.K氏:- 基本的にはそうです。自分の性格とはちょっと違うかもしれないんですけれど(笑)、気持ちとしては、一日で1万円の利益が出たら上出来なんです。例えば、50円で利確して200回繰り返せば1万円の利益ですよね。そういうやり方です。
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暗号資産は高ボラティリティ過ぎて撤退
編集部:- ちなみにT.KさんはFX以外の投資はされていますか?
T.K氏:- 以前、株式投資を少しやってみました。書籍を1冊購入して、そこに掲載されていた「これから上がりそうなおすすめの株」というのを買って、あとは自分が好きな会社とか、興味のある会社とかの株も買いました。
編集部:- 個別株ですね。
T.K氏:- ただ、自分が好きで買った株は結構上がったんですが、「おすすめの株」は全部下がりましたね(爆笑)。下がった株は処分して、上がった株のいくつかは「塩漬け」で持っています。
編集部:- そうなんですね。
T.K氏:- あと暗号資産が流行ったときに、ビットコインを数万円分だけ買ってみました。どんなものなのかなっていう興味からです。そうしたら”乱暴”に価格が変動して、6,000円になったり、50万円になったり(笑)、「なんかすごいな」と思いながら、「でも私にはちょっと向いてないな」と思いました。
編集部:- ボラティリティが大きすぎたんですね。
T.K氏:- 結局、株式はものすごく勉強しないとダメですし、手数料も高い。私のような「短期売買のトレーダーには合っていないな」と思いました。また、暗号資産はボラティリティが大き過ぎました。最終的に「FXに集中しよう」というのが私の結論です。
編集部:- なるほど。
T.K氏:- 私はどちらかというと「古いタイプ」の人間で、本業で一生懸命働いてお金を稼いで、生活していくのがいいと思っているんです。仕事の合間にゲームのようにFXをするのが楽しいんですね。
トレードは100%スマホで
編集部:- 確かに、T.Kさんは毎日のポジション数がかなり多いですよね。FXのトレードはPCでしているんですか?それともスマホですか?
T.K氏:- 空き時間を使ってやっているので、100%スマホでトレードしていますね。ソファに寝転びながらテレビを見てやったりとか、5分くらいの休憩でやったり、そんなやり方ですね。こういう言い方が正しいのかわかりませんが、私にとってFXは趣味のひとつなんですよね。
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編集部:- 先ほどもおっしゃっていましたね。
T.K氏:- 先日も雇用統計の後に1ドル=144円台に下がったのを見て、ウォーキングに行って、家に帰ってきてチャートを見たら146円台になっていました(笑)。そのくらいの感じでやっているんです。週末を挟んで持ち越したくないので、金曜日はあまりポジションは持たないようにします。
編集部:- 月曜の朝、激しく相場が動く可能性がありますからね。
T.K氏:- ポジションを持つというのは、ものすごくストレスなんですよ。土、日はゆっくりしたいんで、金曜日にはあまり取引をしないようにしています。
編集部:- となると、T.Kさんは夜中のニューヨーク時間はトレードされないんですかね?次の日の仕事に影響が出ますよね。
T.K氏:- いや、これがやるんです。夜中の3時に目が覚めてやったり、トイレに行ったついでにやったりですね(笑)ただ朝5時過ぎるとあまりにも動かなくなるんで、エントリーすると、ピクリともすら動かないんで、その時間はやらないですね。
編集部:- その時間帯になるとスプレッドも広がるので、利益は出しにくくなりますよね。それにしても、夜中に目が覚めたら、すぐトレードするというのは(笑)、やっぱり、FXがお好きなんですね。
T.K氏:- そうですね(笑)。まあ、歳も歳なんで、目が覚めちゃうんですが(笑)。
トレードの90%は失敗だったが・・・
編集部:- しかし、2008年にスタートされてから、しっかりと収益を残されているので、T.KさんのFX投資は大成功なんだと思うんですが、ご自身ではどうですか?
T.K氏:- 自分自身は、トレードの90パーセント以上は失敗したと思っています。それは利益が出ていないというよりも、「もう少し待てば、もっと利益が出たのに」っていうケースがすごく多いからです。ただ、ドカンとやられてマイナスを出したというのは、失敗トレード90%のうちの2〜3%ですので、だからこそ、十数年に渡ってFX投資が続けられて、運用成績もプラスにできているのかなと思います。
編集部:- リスクを抑えてきたからこそなんですね。
T.K氏:- それと、自分は「運もあるんだ」と思っています。先日の雇用統計でもエントリーを間違えて、かなりの含み損になりそうなポジションを持ってしまったんですが、一瞬だけドルが上がって、2,000円くらいの利益が出たので、すぐに決済しました。
編集部:- ドンと落ちた後に、少し戻しましたよね。
T.K氏:- その1分後には。もう一度かなり下げてしまったので、そのまま持っていたら、100万円近い含み損になっていたかもしれないです。
編集部:- 結果的には素晴らしい判断で決済しましたね。
T.K氏:- だから「運がいいんだ」と思うんです。エントリーでミスったのに、それでも「2万円」とか、「5万円」とか、利益を求めていたら、大きな損を出したと思います。「もうちょっと(利益が欲しい)」って思って、ポジションを持ち続けちゃったと思うから。
編集部:- つまり、欲張らなかったから、損失を出さずに済んだと。
T.K氏:- あのときは、たくさんポジションを持っていて、ロット数がかなり多くなっていました。ドルが上がれば、10万円や20万円の利益は出ていたかもしれません。しかし、大きな利益を求めず、2,000円の利益で決済しました。そういう人は、なかなかいないと思いますが(笑)、私は100円や200円の利益で満足なんです。
利益確定は評価損益で判断
編集部:- 利益確定の判断はどうされているんですか?pipsですか?評価損益ですか?
T.K氏:- 評価損益を見て決めています。300円とか、500円とか、利益が出ていれば、もう決済しますね。
編集部:-
ロット数が多ければ、「もうちょっと利益を出したいな」っていう気持ちにもなりそうですが。
T.K氏:- ポジションを持ち続けるかどうかは、「5万円の利益が出せそうだ」「10万円まで利益が伸ばせそうだ」という自信が持てるかどうかで決まります。たくさんエントリーしても、自信が持てないときは、評価損益が0円でも撤退です。
損切りは期間毎の収支で判断
編集部:- 損切りのタイミングはどのように判断されるんですか?
T.K氏:- 年間収支がマイナスにならない損失額を意識しています。そして1カ月でマイナスにならない損失、1日でマイナスにならない損失と、期間ごとでマイナスにならない金額がいくらになるのかを損切りの基準にしています。
編集部:- なるほど。
T.K氏:- 例えば、その日3万円の利益が出ていたら、「2万円の損切りをしても1万円の利益は出ているのでOK」とか、その年100万円の利益が出ていたら、「80万円の損切りをしても20万円の利益は残るな」とか、少なくとも収支がマイナスにならない金額で損切りするようにしています。
編集部:- 最悪でも収支はマイナスにしないようにするんですね。
T.K氏:- それが私の損切りルールといえばルールですね。あとは優先順位の問題で決めています。もちろん、少しでも利益が残るように心がけているんですが、例えば、子どもの勉強をみてあげなきゃいけない時間になってしまったら、ポジションがマイナスでも損切りして勉強をみます。
編集部:- それは素晴らしいですね。FX投資よりも家族やお子さんを優先されるところが素敵です。その日、その週、その月がマイナスにならないようにすることで、年間収支がプラスになるようなやり方をされているんですね。
T.K氏:- その通りです。だから、去年の為替介入で大きな損失が出たんですが、それまでにかなり利益が出ていたので、迷わずに損切りしました。年間収支がマイナスにならないことがわかっていたから、「ここで切ってもいいんだ」って。
為替介入で500万円の損切りを経験
編集部:- T.Kさんにとって、過去最大の失敗はいつでしたか?
T.K氏:- やっぱり去年の為替介入で損切りしたことですかね。
編集部:- どれくらいの損失額でしたか?
T.K氏:- 500万円くらいだったと思います。
編集部:- 結構大きな金額ですね。
T.K氏:- それ以外だとトルコリラです(笑)。200万円くらいの損切りでした。
編集部:- そういう失敗をされたときには、メンタル的に厳しいと思うのですが、気分転換などはされるんですよね?
T.K氏:- ポジションを持つと、利益が出ていても、損失が出ていても、いずれにせよ、ものすごくストレスがたまります。だから、できるだけ速くポジションを決済するようにしているんです。それと大きな損失を出したときは、しばらく相場から離れるようにします。去年11月の為替介入で500万円の損切りをしたときは、年末までまったくやりませんでした。
編集部:- 「休むも相場」と言いますからね。
T.K氏:- 年が明けてから、少しずつ再開したという感じです。
編集部:- ご家族の方々は、T.KさんがFX投資をされていることについてどのような反応ですか?大きな損切りをされた後の様子を見て、心配されていませんか?
T.K氏:- そんなに心配はしていないと思いますね(笑)。
編集部:- FX投資の収支についてお話されることはないのですか?
T.K氏:- 「FXで利益が出たから、おいしいもの食べに行こうか!」みたいな感じで報告しますね(笑)。子どもは「ゲームでもしているんだろう」って思っていると思います。ソファに寝て、テレビを見ながら携帯をいじっていますからね(笑)
FXは将棋のような知能ゲーム
編集部:- そうなんでしょうね(笑)T.KさんがFX投資をされていて楽しいなって思うのはどんなときですか?
T.K氏:- そうですね。私にとっては趣味のひとつですね。FXは単純で「下がるか」「上がるか」を当てる「知能ゲーム」だと思うんです。決してギャンブルではありませんが。将棋を指すときのように、自分で戦略を練り、自分なりに分析を行い、駒を進めたときに、それがうまくいったときの喜びというか、それが楽しいというか、そういう感覚があります。50円であれ、100円であれ、結果として利益が出たときに実感します。
編集部:- ポジションを持つとストレスがたまることもあるけれど、それにも増して魅力があるっていうことですね。
T.K氏:- その通りですね。
FX投資をするなら必ず勉強しよう
編集部:- FX初心者へのアドバイスはありますか?
T.K氏:- 私も50歳を過ぎてきて、「大儲けがしたい」とか、「いい車に乗りたい」とか、「いい時計をしたい」とか、 そういう欲求がだんだんなくなってきたんですが、若い世代の人たちで、「投資でそういう目的を達成したい」と考えているのであれば、真剣に勉強して、FXに取り組まれるべきだと思います。FXは決してギャンブルではなくて、勝ち負けの世界ではなくて、自分の資産を運用して利益を得るためのツールだと思いますし、チャレンジされたらいいと思います。
編集部:- しっかりと準備をして臨むべきだということですね。
T.K氏:- もちろん、若い世代の人たちの中にも、今の私と同じようなタイプの方々もいらっしゃると思うので、そのような方は私と同じようなやり方で、地味だけれども、利益をコツコツと積み上げていくようなやり方をされたらいいと思います。50円の利益を200回実現すると1万円になります。
編集部:- そうですね。
T.K氏:- 毎日1万円の利益が得られたら、月に20万円の収入になりますよね。これを1年間続けたら、年間で200万円を超えます。それが10年続いたら、2,000万円以上の収益が獲得できるわけです。
編集部:- 確かにそういう計算になりますね。
T.K氏:- それってなかなか大変なんですよ。副業を始めてパートタイムで働いてお金を稼ぐにしても、月に20万円をもらうのはやっぱり大変じゃないですか。肉体的にもきついと思います。でも、FX投資なら、スマホひとつで月20万円の収入が実現するかもしれない。若い人たちには、いろいろな可能性があると思うんです。自分なりにチャレンジすればいいと思います。
編集部:- 本業以外に収入を得る手段のひとつということですね。
T.K氏:- FXで年間数億円を稼がれている人もいます。実際にそういうことが可能な収入を得る手段なんですね。もちろん、私みたいに100円、200円をコツコツ積み上げる人がいてもいいと思います。投資に正解はないので、自分なりのスタイル、自分なりのトレード手法を見つけて、チャレンジしたらいいと思いますね。ただ、投資にはリスクもあるので、一生懸命に勉強して、リスク対策も取る必要があるよということですね。利益を出している”億り人”は、絶対に勉強しています。
編集部:- もう一度生まれ変わったとして、T.KさんはFX投資をやると思いますか?
T.K氏:- そうですね…。今の感じだとやりますね(笑)。ただ、きっと今と同じようなやり方で、ゲームを楽しむようにやるんでしょうね。
編集部:- 今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
マネ育PickUp編集部より
1回の取引で50円の利益。それを200回実現して一日で1万円の利益を得るというT.Kさんの”コツコツ”トレード手法。FX投資で「生活の糧を得よう」と思うと、一気にプレッシャーは高まりますが、この利益で「缶コーヒーが買える」「お昼のお弁当が買える」というような意識でトレードすれば、かなり気軽にできそうです。ポジションを持つこと自体がストレスになるというT.Kさんが見つけた「冷静なメンタルを保つための方法」なのかもしれません。仕事の空き時間でFXをトレードしている兼業トレーダーの方は一度試してみてはどうでしょうか?
▼前編はこちら
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