輸入会社で貿易を担当するT.KさんはFX歴15年のベテラン兼業トレーダーです。本業ではアジア各地を飛び回りながら、商品を買い付けるとともに、金融機関から購入資金となるドル調達を担当するなど、「実需」のための為替業務を30年近く行ってきました。あくまでも「FXは趣味のひとつ」というT.Kさんですが、本業での経験と知識を生かし、リスクを抑えた手法で、しっかりと利益を積み上げています。今回は着実に利益を獲得するベテラントレーダーT.Kさんのトレード手法や投資哲学について迫ります。
ハンドルネーム :T.K
年齢・性別 :50代男性
職業 :会社員(兼業トレーダー)
FX歴 :約15年
トレードスタイル:デイトレード&スイング
投資商品 :FX、個別株
▼目次
1.体調を崩してFXの世界に
2.FX会社は厳正な審査で選択
3.銀行に預けていても1,000万円までしか守られない
4.FXは100円の利益で十分
5.ファンダメンタルズでトレンドを把握しチャートで判断
6.FXは忙しい仕事の合間の「楽しみ」
7.為替相場は思い通りにならない
8.ドル/円は長めのスキャルピング、メキシコペソは長期保有
体調を崩してFXの世界に
編集部:- さっそくですが、T.KさんがFX投資を始めたのはいつですか?
T.K氏:- 私自身「投資」をするという感覚はなかったんですが、2008年に始めました。
編集部:- FXを選ばれた理由は?
T.K氏:- これが「たまたま」なんです。
編集部:- と言いますと?
T.K氏:- 私が大学を卒業して会社に就職したのは1990年代の終わりです。それから30代半ばまでの十数年間は、ひたすら仕事に明け暮れて、アジア各地を飛び回っていました。だから投資などを考える暇もなかったんです。
編集部:- 確か輸入会社でしたよね。
T.K氏:- とにかく仕事が忙しすぎて、投資に触れることすらありませんでした。ただ、あまりにも激務で、ちょっと体調を崩してしまったんです。それで少しだけ仕事のペースを抑えるようにしました。年齢的にも30代半ばに差し掛かっていましたからね。
編集部:- そろそろ健康が気になる年齢になったってことですね。
T.K氏:- 少しだけ仕事のペースを落としたことで、時間に余裕が出てきて、インターネットなどをいろいろ見るようになりました。そのときにFXという個人でも為替取引ができる金融商品があることを知ったんです。
FX会社は厳正な審査で選択
編集部:- 海外メディアが「ミセスワタナベ」なんていう名称で、「日本の個人投資家が相場に大きな影響を与えている」というような記事が出て、個人投資家が注目を集め始めた時期でした。その一方で、中には大きな損を出してしまう人もいて、「FXはハイリスク・ハイリターン」というような記事も出ていました。その点は気になりませんでしたか?
T.K氏:- 正直、FXという商品は初めてで、よく知りませんでしたから、最初はとても不安でした。他人に聞くことはありませんでしたが、ただ、自分は性格的に、いろいろと調べるのが好きでしたので、FX会社に預けたお金は本当に運用に回るのか、入金はできたけれど、出金ができなくなることはないのか、FX会社がきちんと存続していくのか、もし破綻してしまったときに、預けたお金は保全されるのか、そういうことをいろいろと調べました。
編集部:- T.Kさんが就職された90年代後半は、バブルが弾けて大手証券会社や銀行などの金融機関が相次いで潰れた時代でしたね。
T.K氏:- はい、だから自己資本比率とか、信託保全の仕組みとか、そういうものから、しっかりと見させていただきました。
編集部:- 会社の経営方針や財務状況などを詳しく調べたんですね。
T.K氏:- そうです。私にとっては「安心してお金を預けられる会社かどうか」というところが、一番重要だったんです。財務や経営がしっかりしているなら、「1回くらいはFXをやってもいいかな」って思ったんです。
編集部:- なかなか徹底していますね。そうなると、外為どっとコムもT.Kさんの「お眼鏡にかなった」FX会社ということでよろしいでしょうか?(笑)。
T.K氏:- そうですね。そのとき複数社で口座を開設しましたが、その中のひとつでした(笑)。その後、各社の口座で実際にトレードしてみて、アプリの使い勝手とか、手数料(スプレッド)とか、いろいろな要素からメインで利用するFX会社を選択しました。
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銀行に預けていても1,000万円までしか守られない
編集部:- 厳しいチェックをクリアして、選んでいただけたんですね。どうもありがとうございます。ちなみにどれくらいの資金でスタートされたんでしょうか?
T.K氏:- 確か500万円くらいだったと思います。銀行預金は1,000万円までが保証される仕組みですよね?
編集部:- 「ペイオフ制度(※1)」のことですね。
(※1)「預金保険制度とペイオフ」:預金保険制度により、金融機関が預金の払戻しができなくなった場合、預金者の保護と資金決済の確保をはかり、金融の信用秩序を維持することが目的。預金者一人あたりに元本1,000万円までとその利息が保護される。
T.K氏:- 確か2005年だったと思うんですが、預金者保護のルールが変更されて、万が一の場合でも、預金者のお金は1,000万円までしか保証してもらえなくなりましたよね。当時、銀行の金利はすごく低くて、銀行に現金を預けていても、FX会社に500万円を入金して運用していても、「リスクはそんなに変わらないんじゃないか」って思ったんです。
FXは100円の利益で十分
編集部:- そうなんですか?FXはレバレッジを使った高い効率の運用が最大の特長です。確かにリスクも高くなりますが、資産を大きく増やすことも可能です。そういう考えはなかったんですか?
T.K氏:- 1年間で資金を「600万円にしよう」とか「700万円にしよう」とか、そういう気持ちはありませんでした。100円や200円の利益が出たら、「おっ、コーヒー代が出た」とか、1,000円の利益が出たら、「お昼の食事代が出るぞ」とか、そんな感覚でトレードしていたんです。
編集部:- お小遣いを稼ぐみたいな感じですね(笑)。
T.K氏:- そもそもFXの取引ルールをほとんど知りませんでしたので、「強制ロスカット」だけ気をつけるようにしました。「ある程度大きな金額を入れておけば大丈夫だろう」ということで、最初に500万円を入れたんです。
編集部:- 確かに100円の利益を得るのに500万円の保証金は十分な金額ですね。レバレッジはあまりかけずに運用されていたんですね。
T.K氏:- はい、本当に「50円、100円の利益でいい」という考えでした。現在もたいして変わっていません。
編集部:- かなりリスクを抑えた運用で始められたんですね。そうやって少しずつ経験を積みながら、ご自身のトレードルールを構築されたんですね。
T.K氏:- そうですね。
ファンダメンタルズでトレンドを把握しチャートで判断
編集部:- T.Kさんのトレードルールについて、もう少し詳しく知りたいのですが、投資判断はファンダメンタルズ分析ですか?それともテクニカル分析ですか?テクニカルはどのようなものを使われていますか?
T.K氏:- 会社で30年以上、貿易の仕事を担当してきました。アジア各国を飛び回って、商品を買い付けるだけでなく、ドルを買ったり、売らざるを得ない場合は売ったりと、為替取引をしてきました。その間にアジアの通貨危機やリーマン・ショックなどが起きて、いろいろな経験を積みました。
編集部:- 為替相場のいいときも悪いときも、両方を経験済みというわけですね。
T.K氏:- それが「ファンダメンタルズ分析」と呼べるのか、よくわからないのですが、私はまず、そのときの社会情勢から「こういうときは上がるだろう」「こういうときは下がるだろう」という、相場の大きな流れを判断しています。
編集部:- まず相場トレンドを把握するということですね。
T.K氏:- その上で、自分は短気ではないと思いますが、じっくりと待つような性格でもないので、「テクニカル分析」と呼べるものなのかわかりませんが、チャートの動きを見ながら、短期トレードをするようになりました。
編集部:- 本業での経験を生かしながら、トレードされているんですね。ちなみにチャートは何分足を見て判断していらっしゃるんですか?
T.K氏:- 特に決めていません。日足、週足、4時間足、1時間足、5分足、1分足と、いろいろ見ています。ただ、短期トレードが多いので、1分足はよく見ていますね。
FXは忙しい仕事の合間の「楽しみ」
編集部:- エントリーの判断はどのようにされていますか?
T.K氏:- 正直なところ、明確なものはないんです。ちょっと言い方が難しいのですが、私は「生活のための収入をFXで稼ごう」という意識はまったくないんです。どちらかというと「趣味」のひとつなんです。FXを本業にされている方もたくさんいらっしゃると思いますが、私の場合は、本業の合間に「楽しむ」ものなんですよ。
編集部:- ゲーム感覚でFXを楽しまれているんですね。
T.K氏:- そうですね(笑)。仕事の合間の「空き時間」でエントリーしているので、本当にそれがいいタイミングなのか、よく分からないことも多いのですが、トレードするのが面白いし、好きなんです。もちろん、「タイミングが極端に悪い」と思ったときはエントリーしません。自分が「できる」と思ったときにエントリーします。
編集部:- なるほど。
T.K氏:- ただ、いつも注意しているとすれば時間帯ですね。「この時間帯はボラティリティが大きくなるから、ちょっとやめておこう」とか、「この時間帯はボラティリティが小さいから、エントリーでミスしても、損は出さずに100円くらいの利益は出せるかな」とか、時間帯を考えてエントリーすることが多いですね。
為替相場は思い通りにならない
編集部:- 会社で貿易業務に携わってきたこと、為替予約でドルを調達されていたと思うんですが、その経験は今のFX投資に役立っていますか?
T.K氏:- すごく役に立っていると思います。覚えていらっしゃると思うのですが、1995年に円高がものすごく進んで、70円台の史上最高値を記録しましたよね。メキシコがペソを切り下げたことで通貨危機に陥って、その後は1ドル=100円〜120円で推移していましたが、2007年くらいから再び円高が進んだ時期に、銀行が中小企業向けに外貨建てのデリバティブ商品などを積極的に販売するようになっていて、銀行との関係は大切なので、お付き合いで購入したんです。「今後、1ドルが120円や130円と円安になる可能性があります」と言われて。
編集部:- 「円高のうちに買っておきましょう」と勧められたんですね。
T.K氏:- はい、ただその後、リーマン・ショックがあったり、東日本大震災があったりして、為替相場は大きく動き、1ドル=120円で購入した金融商品を、1ドル=80円や90円で売却せざるを得ない事態になりました。その結果、毎月300万円、500万円という損失を経験することになりました。長期スパンで捉えると、為替は大きく変動します。私は「大きなリスクがあるんだ」「自分の予想通りにはならないんだ」ということを、身を持って知りました。
編集部:- 直近20年間だけでも、1ドル=80円から150円まで、約70円の変動幅ですからね。
T.K氏:- 銀行のような”プロ”が、相場を予想した上で販売しているはずの金融商品を購入したつもりだったんです。「それなのに予想が外れて、こんなに損が出るのか」と思ったんですね。
編集部:- なるほど、そういう経験があったから、低レバレッジで利益を確実に獲得するスタイルなんですね。
T.K氏:- そうなんです。リスクを抑えて、コツコツと積み上げていくやり方がいいんです。
ドル/円は長めのスキャルピング、メキシコペソは長期保有
編集部:- 通貨ペアは米ドル/円ですか?
T.K氏:- 米ドル/円がメインですね。始めたときの通貨ペアは米ドル/円でした。その後、ポンド、豪ドル、トルコリラ、南アランドなどもやりました。
編集部:- いろいろと試されているんですね。
T.K氏:- やっぱり、日本人のトレーダーは金利差のスワップポイントに興味がわきますよね(笑)。
編集部:- そうですね。それで高金利通貨を。
T.K氏:- はい、今でもメキシコペソは持っています。ただ、相場は何が起こるかわかりませんからね。FXを始めたときから、円安方向の意識が強いので、今でも売りから入るエントリーは少ないんです。ポジションはその日のうちに決済してしまうデイトレードがほとんどですね。
編集部:- デイトレードの通貨ペアは米ドル/円で、メキシコペソはずっと買い持ちされている感じでしょうか。
T.K氏:- そうですね、メキシコペソと南アランド、トルコリラを2017年くらいから持っていました。ただその後、トルコリラは政情不安から相場があまりに不安定になってしまったので、全部処分してしまいました。南アランドも上がったり下がったりで、利益が取りにくいので、売却して、今はメキシコペソだけです。
編集部:- 高金利通貨はボラティリティが高くなりがちですからね。
T.K氏:- メキシコペソを、一番最初に買ったのは、1メキシコペソ=5円くらいです。
編集部:- 一番いいところで入られましたね。
T.K氏:- 新型コロナの影響で、一度ひどいペソ安になりましたが、それでも我慢して持っていたら、「あれよあれよ」という感じで、1メキシコペソ=8円くらいまでペソが戻ってくれました。
編集部:- それはかなり利益が出ていそうですね(笑)。
T.K氏:- 少しずつ売って利益を確定しながら、まだ少し残っているという状況です。
編集部:- 米ドル/円でのデイトレードということでしたが、ポジションを翌日に持ち越すことはないんでしょうか?
T.K氏:- よほどのことがない限り、その日に持ったポジションは、その日のうちに決済します。ただ、評価損が大きいときは、なかなか損切りできずに、そのまま持ち越す場合もあります。外為どっとコムのアプリでポジションの平均保有時間が出ますよね。あれで見ると2〜3分で売買していますね。
編集部:- ちょっと長めのスキャルピングという感じですかね。
T.K氏:- 私は50円や100円の利益が取れたら十分なんで、そのくらいになるのかなと思っています。
マネ育PickUp編集部より
本業で貿易を担当していたことから、30年以上「実需」のドル調達をしてきたT.Kさん。自己資本比率や信託保全などからFX会社を選ぶところは、T.Kさんがビジネスマンであることを示すエピソードでしょう。そうした経験を十分に生かし、リスクを抑えてマイナスを出さないというやり方を徹底することで、着実に利益を積み上げてきました。その手法は、会社に勤めながらFX投資をする兼業トレーダーが参考にするべきトレードスタイルといえそうです。後編ではさらに詳しくトレード手法について伺います。
▼後編はこちら
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