総括
FX「リラ急騰は1日で終わる、インフレは58%へ急騰」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円5.0-6.0
(ポイント)
*予想外の利上げでのリラ急騰は1日で終わる、その後は尻すぼみ
*政策金利引き上げでもCPI上昇
*2Q・GDPはまずまずだが、3Qは苦しい
*貿易赤字は続く
*8月製造業PMI悪化
*リラ買い介入は行わず
*6月経常収支は黒字化
*為替保護リラ預金制度を解除へ
*エネルギー問題で海外と交渉
*ムーディーズはトルコの政策に前向きな評価
*エルドアン大統領はEUに加盟したい
*新財務大臣は合理的な政策に変わると主張、経常収支改善も目標
*今年は建国100周年
(リラ急騰は1日で終わる、その後は尻すぼみ)
8月24日のサプライズ的な政策金利の7.5%引き上げは、リラ円を5.728円まで引き上げたが、その後は、殆ど伸びず、一時5.357まで下落、月末終値は5.412となった。それでも8月は米ドルを抑え月間最強通貨となった。株価(イスタンブール100指数)は上昇を続け、年初来47.78%高、10年国債利回りは19.12%、いずれも異常な水準にある。
(2Q・GDPはまずまずだが、3Qは苦しい)
2Q・GDPは、は前年同期比3.8%増だった。予想の3.5%増を上回った。家計支出が好調だった。家計支出は10%以上増加した。5月の選挙を控えた財政刺激策が経済成長を支援する要因となった。低金利も経済活動を下支えしたが、中銀は6月以降金融引き締めを開始しており、年内は景気減速が見込まれている。政策転換でも需要・インフレ・経常赤字の抑制で望ましい効果が出ていない。次回の中銀理事会で大幅な追加利上げが実施され、下半期の経済成長が鈍化するとの見方も出ている。
(貿易赤字は続く)
7月の貿易赤字は前年比14.2%増の122億ドルとなった。8月製造業PMIは49、7月の49.9を下回った。
(利上げでも消費者物価の上昇は続く)
8月の消費者物価は前年同月比58.94%上昇と予想の55.9%を上回った。リラ急落や最近の増税で2カ月連続で上昇率が加速した。7月は47.83%上昇だった。
シムシェキ財務相はインフレとの戦いには時間がかかり、移行期間には忍耐が必要だと指摘。「インフレを管理・抑制するため、必要なことは全て(金融引き締め、信用政策、所得政策)行う。われわれはインフレと戦う決意を完全に固めている」としている。
8月の生産者物価は前年同月比49.41%上昇。
(8月製造業PMI悪化)
8月の製造業PMIは49.0、前月の49.9から低下した。企業は新規受注の主な阻害要因として、通貨リラの対ドル相場下落と賃金上昇による投入コスト上昇を受けた強い価格上昇圧力を挙げた。
また、新規事業の伸び悩みから減産や買い控えの動きが広がり、生産価格も上昇した。一方、一部企業は採用を継続し、雇用は4カ月連続で上昇した。
(リラ買い介入は行わず)
シムシェク財務大臣は、中央銀行が外貨準備を売却して為替相場に介入したという主張を一蹴した。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
8月24日の大陽線後は、尻すぼみ
日足、8月24日の大陽線で一気にボリバン3σ上限を突破、5.77をつける。ただ、行き過ぎで反落。中位には留まる。5日線下向き、20日線上向き。
8月24日-9月1日の上昇ラインがサポート。8月24日-29日の下降ラインが上値抵抗。雲中。
週足、先週は6週ぶり陰線。8月21日週-28日週の上昇ラインがサポート。8月21日週-28日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、8月最強もまだ2σ下限近辺で推移。23年6月-7月の下降ラインを上抜く。7月-8月の上昇ラインがサポート。5月-6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、8年連続陰線。その間52円から5円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月から陰転。
メルハバ
トルコレストランでの思い出
2002,2003年頃、横浜スタジアムそばのトルコレストランへ何度か通った。ご主人曰く、「ユーロは良い通貨だ。物が安く買える」と、誕生したばかりの「ユーロ」を賞賛していた。ユーロを持てば、国内物価の上昇に悩まされることはない。国民の多くがドルやユーロを買う事で、よりリラが安くなり、物価が上ったのだろう。それでもトルコがユーロ通貨統合に参加すれば解決することであった。あれから20年、EU加盟は遠く、通貨の状況も変わらず、リラ安・物価高が続いている。一度、リラ安に怒ったエルドアン大統領が、トルコ国民なら「ベッドの下にある、ドル、ユーロ、金を売ってリラを買え」と鼓舞したことがあった。国民は生活防衛のためにはそれは出来ない。
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