【告知】20時30分から開催 米雇用統計ライブ
更新日時:2023年7月7日 21時33分(結果を追記)
執筆日時:2023年7月5日 14時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米NFP発表直前、労働市場の見方は底堅くも減速の兆候!米ドル/円150円に向けた課題は-7月7日の米国雇用統計の予想と戦略 2023年7月号-By 外為どっとコム総研
目次
1.はじめに
2023年7月7日(金)、日本時間21時30分に米国6月雇用統計が発表されます。FRBにとってインフレ抑制は優先課題ですが、その傍ら景気減速も懸念される状況になり、FRBは二方向を睨んで難しい舵取りを迫られています。今月の雇用統計の結果は、今年後半の経済見通しや金融政策見通しを左右すると言っても過言ではないイベントになりそうで、市場関係者も大変注目しています。では振り返りからです。
2.前回のおさらい
・6月利上げスキップ強まる
6月2日、米労働省が発表した5月の非農業部門雇用者数(NFP)は33.9万人増と、市場予想(19.5万人)を上回る伸びを示しました。前月からの上昇幅は2020年4月以来の大きさでした。また、失業率は3.4%から3.7%へ悪化し、時間給は前月比で0.3%と前の月の0.4%から伸びが鈍化しました。また、週平均労働時間は34.3時間へ若干低下しました。
雇用者数の伸びは大きく、まだ労働市場のひっ迫傾向はなくなっていないものの、時間給の動向からはインフレが落ち着きつつある兆候が確認できたほか、労働時間の減少傾向から需要鈍化が懸念されるなど、強弱入り交じる内容で判断は難しかったようです。ただし、全体的には米金融当局が利上げを休止する根拠が増えた格好と言え、市場ではFRBが6月の利上げをスキップして、7月に利上げを実施するとの見方が優勢になりました。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
138.90円付近だった米ドル/円は、NFPの上振れを受けて139.40円台まで上昇後に、時間給の物足りなさから138.70円台まで押し戻されたものの、その後は米長期金利の上昇を受けてNY終盤に140.072円まで上昇幅を広げました。ダウ平均は米利上げのペースダウン観測や、米上院での債務上限停止法案の可決を好感して、700.4ドル高い33,762.76ドルで取引を終えました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・時間給減速警戒、労働市場の浸食は進行中
・失業率の悪化は要注意
足もとのNFPの平均が28万人増と歴史的に見て未だ高水準であるほか、求人件数も過去の平均を大幅に上回るなど、雇用主の採用意欲が旺盛な状態である様子が窺え、労働市場への悲観的な見方はそれほど高まっていません。労働市場の需給ひっ迫感は残っていて、少なくとも労働市場がこれまでの利上げに見合う減速をしていない点は多くの人が認めるところでしょう。
しかし、コロナ禍での就業者減少分をほぼ取り戻す中で、新規失業保険申請件数、チャレンジャー社が示す人員削減数、Indeed Job Postings Indexなど各種雇用関連指標からは、労働市場の減速傾向も見られています。実際に5月分の家計調査では、就業者数が前月比31.0万人減少していたほか、足許では失業者が職を見つけられる割合も2021年秋の水準まで低下しています。その他、週平均の労働時間も縮小傾向と、徐々に労働市場の浸食が進んでいる印象はあります。もっとも、底堅い直近の流れを急速に変化させるほどのネガティブな話題が見当たらないため、今月もNFPは堅調な着地を期待しますが、それでも過剰な期待は禁物です。
図表3.雇用関連指標一覧
出所:外為どっとコム総研
※各データにおいて修正が入ったものは修正後を表示
一方、低下基調である時間給については減速一服への警戒が必要です。S&Pグローバル社の購買担当者調査では、インフレの底堅さから賃金の伸び加速も一部見込まれます。また、5月に3.7%へ急速に悪化した失業率も気になる要素です。2020年5月以降で、失業率が2カ月連続で悪化したことはなく、仮に今回、2カ月連続で悪化すると、労働市場に対する見方がかなり慎重になりそうです。したがって、失業率の結果にも注意を払う必要があります。
個人的には、パウエルFRB議長の言う「抑制的な政策が十分に行われたと言える状況にはない」との認識を補完する格好になり、米ドルの底堅さは維持されると考えます。もっとも、すでに7月利上げの織り込みが進む過程で米ドルはかなり上昇してきている上、次の9月利上げを織り込むには少しデータが不足しているとあっては、米ドルの上値が制約的になるかもしれません。
☆想定するシナリオ
※本指標発表後、5分の値幅(過去3カ月):平均71銭
出所:外為どっとコム総研
4.今回の戦略
米雇用の底堅さはある程度織り込み済ではあるものの、結果を受けて改めて底堅さを確認して期待感から、米ドル/円は買いが先行しそうです。ここで、145円台より上側で足場を固められれば150円が見えてきそうですが、それに失敗すれば、21日移動平均線が推移する142.269円付近まで後退して、再度、上値更新に向けて力を蓄えることになるのではないでしょうか。
図表5.米ドル/円チャート-日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
図表6.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
2023年06月 | 22.5 | 20.9 | 3.6 | 3.6 |
2023年05月 | 19.5 | 33.9 | 3.5 | 3.7 |
2023年04月 | 17.8 | 25.3 | 3.6 | 3.5 |
2023年03月 | 24.0 | 23.6 | 3.6 | 3.5 |
2023年02月 | 21.5 | 31.1 | 3.4 | 3.6 |
2023年01月 | 19.0 | 51.7 | 3.6 | 3.4 |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
2023年06月 | 0.3 | 0.4 | 62.6 |
2023年05月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年04月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年03月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年02月 | 0.3 | 0.2 | 62.5 |
2023年01月 | 0.3 | 0.3 | 62.4 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2023年06月 | 48.1 | 53.1 |
2023年05月 | 51.4 | 50.8 |
2023年04月 | 50.2 | 50.8 |
2023年03月 | 49.9 | 51.3 |
2023年02月 | 49.1 | 54.0 |
2023年01月 | 50.6 | 50.0 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
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