【告知】20時30分から開催 米雇用統計ライブ
更新日時:2023年5月9日 12時00分(指標結果を更新)
執筆日時:2023年5月4日 17時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米ドル/円200日線定着に失敗? 予想比小幅強めの結果なら戻り売り検討か-5月5日の米国雇用統計の予想と戦略 2023年5月号-By 外為どっとコム総研
目次
1.はじめに
2023年5月5日(金)、日本時間21時30分に米国の4月雇用統計が発表されます。NFP(非農業部門雇用者数)は昨年5月以降続いた、コンセンサス(市場予想)を実績が上回る流れが一服しています。今月もこの傾向が続けば、「5月の0.25%利上げを最後に利上げが停止され、年後半には利下げに転じる」との投資家が描くメインシナリオの現実味が増してきそうです。今月の雇用データが市場の見方を補完するものになるのかどうか注目されます。
2.前回のおさらい
・5月FOMCでの利上げを後押し
4月7日、米労働省が発表した3月の非農業部門雇用者数(NFP)は23.6万人増と、市場予想(24.0万人)を下回りました。また、失業率は3.5%(市場予想3.6%)、時間給の前月比は0.3%(市場予想0.3%)でした。内訳では、ヘルスケア・社会福祉、運輸・倉庫業が好調だった一方で、小売業、人材派遣が不調でした。NFPは予想を下回ったものの、年初から100万人超増加しており、労働市場が底堅いペースで拡大している様子を示しました。結果を受けて、5月FOMC(連邦公開市場委員会)での0.25%利上げの扉が開いたとの受け止め方が優勢でした。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
直前に悪い経済指標が並んでいたため、5月FOMCでの金利据え置きを視野に入れていた投資家のドル買い戻しが優勢となり、米ドル/円は131円半ばから132.365円まで強含み、米金利は2年債利回りが3.993%、10年債利回りは3.413%まで上昇しました。また、聖金曜日の祝日(グッドフライデー)のため米株式市場は休場でした。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・時間給はディスインフレ傾向のスピード鈍化を示唆か
・昨年夏場と同じような予想と結果の動向が気になる
図表3に雇用関連のデータをまとめましたが、これを見るとドラスティックな変化はないものの、全体的に労働市場の減速傾向が見られます。ハイテク・金融セクター中心に人員削減計画がなかなか表に出てこなかったように感じていましたが、こうして改めてデータを並べてみると、削減の効果が徐々に出てきているように見受けられます。また、サービス業でも陰りが出てきており、雇用減速の流れが全産業へ広がりつつある様子もうかがえます。
また、雇用統計は12日を含む週の雇用状況を調査結果であるため、シリコンバレー銀行の破綻が3月10日だったことを考えると、3月分のデータには破綻の影響が十分に反映されていない可能性があります。実質的には今回の雇用データに破たん後の初期の影響を含んでいると見られるため、予想以上に弱い数字が出る危険もあります。そうした思いもあってか、市場予想はコロナ前の19年の平均である20万人程度を下回る17.8万人となっています。
図表3.雇用関連指標一覧
出所:外為どっとコム総研
※各データにおいて修正が入ったものは修正後を表示
しかし、前向きな材料もあります。図表4はNFPと市場予想との関係を示したチャートですが、今年に入ってからのNFPと市場予想の推移は昨年夏場と同じような形状をしています。当時は7月にNFPと市場予想の乖離が7月にピークをつけ、その後乖離が縮小した段階で、一度横ばいに推移しています。前回と同じになるとの確証はありませんが、米国の労働市場が大きく崩れているとまでは言えない状況ですので、現状の市場予想はやや悲観的過ぎているかもしれません。
利上げが進む中で雇用市場の拡大ペースの減速は確認できますが、そのペースが緩やかである点を踏まえると、3カ月平均で25万人程度となる20万人当たりが着地点になるのではないかと個人的には考えています。
また、時間給については、雇用ひっ迫の状態が一部で残っているほか、1-3月期の雇用コスト指数が下げ渋る格好を示していることで、時間給は横ばいが見込まれており、米国のディスインフレが一服しそうな雰囲気です。以上のように考えると、FRBが積極的に利下げを検討しなければいけない時期はまだ先になるのではないでしょうか。
図表4.NFPの結果と市場予想の推移
出所:外為どっとコム総研
☆想定するシナリオ
※本指標発表後、5分の値幅(過去3カ月):平均87銭
出所:外為どっとコム総研
4.今回の戦略
さて、米ドル/円は200日移動平均線を一時超えましたが、定着できずに押し戻されています。また、1月16日安値(127.225円)を起点とするフィボナッチタイムゾーンからは、5月2日高値(137.770円)でいったん短期的なトップをつけた可能性があります。とするなら、目先は調整が進みやすい状況と思われますので、予想比強めの雇用統計の結果で跳ね上げたところで、戻り売りを狙いたいと考えます。
雇用統計の結果次第ではありますが、136.00-50円付近がそうしたポイントになるのではないでしょうか。状況によっては超短期で買いで追随しながら、目線を下向きに変える場所を探すのもありでしょう。利食いのターゲットは133.000円付近を個人的には想定しています。また、200日線を越えてしまったら、売りポジションを決済して様子を見たいと考えています。
さらに、3月24日安値(129.647円)を起点とする上昇チャネルは機能していると見ていますので、133.000円付近まで下げたところでは売りポジションをリリースして、今度は買い場を摸索したいと考えています。
図表6.米ドル/円チャート-日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
図表5.[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
2023年04月 | 17.8 | 25.3 | 3.6 | 3.4 |
2023年03月 | 24.0 | 23.6 | 3.6 | 3.5 |
2023年02月 | 21.5 | 31.1 | 3.4 | 3.6 |
2023年01月 | 19.0 | 51.7 | 3.6 | 3.4 |
2022年12月 | 20.0 | 22.3 | 3.7 | 3.5 |
2022年11月 | 20.0 | 26.3 | 3.7 | 3.6 |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
2023年04月 | 0.3 | 0.3 |
62.6 |
2023年03月 | 0.3 | 0.3 | 62.6 |
2023年02月 | 0.3 | 0.2 | 62.5 |
2023年01月 | 0.3 | 0.3 | 62.4 |
2022年12月 | 0.4 | 0.4 | 62.3 |
2022年11月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2023年04月 | 50.2 | 50.8 |
2023年03月 | 46.9 | 51.3 |
2023年02月 | 49.1 | 54.0 |
2023年01月 | 50.6 | 50.0 |
2022年12月 | 50.8 | 49.4 |
2022年11月 | 48.9 | 50.6 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
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