【告知】20時45分から開催 米雇用統計ライブ
更新日時:2023年2月6日 12時50分(データを追記しました)
執筆日時:2023年2月2日 14時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
米ドル/円は戻り売り狙い、米FRBは年内利下げ見通さず 時給動向へ焦点移動 2月3日の米国雇用統計の予想と戦略 2023年2月号-By 外為どっとコム総研
目次
1.はじめに
2023年2月3日(金)、日本時間22時30分に米国の1月雇用統計が発表されます。IT企業中心に人員削減計画が発表されながらも、雇用情勢は急速に悪化するでもなく、全体的には底堅さを維持しているとの評価が優勢です。米国の成長鈍化懸念が意識される中で、FRBの利上げ停止の一つのピースである賃金インフレの動向が注目されます。では、早速、前回の振り返りからです。
2.前回のおさらい
・FRBの利上げペース減速を肯定
1月6日、米労働省が発表した12月の非農業部門雇用者数(NFP)は22.3万人増と、11月の25.6万人(26.3万人から修正)を下回りました。また、失業率は3.5%(11月は3.6%: 3.7%から修正)へ改善し、時間給は前月比で0.3%(11月は0.4%:0.6%から修正)と伸びが鈍化しました。ヘルスケア、レジャーが好調だった一方で、人材派遣業の減少が伸びを抑制しました。労働市場のひっ迫がまだ残っていることを示唆した一方、賃金の伸びが抑制されつつある点でインフレのピークアウト期待を強める結果でした。
市場では、リセッションへの懸念を緩和させつつ、FRBに利上げペース減速の余地を与える結果との受け止め方が優勢で、CMEのFedWatchツールにおける2月1日会合での0.25%利上げ織り込み度は、9日現在で78.7%と0.5%利上げを大きく上回る状態です。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省
134.35-40円付近で推移していた米ドル/円は、結果を受けて133.20円台まで売りが先行しました。その後、134.10円付近まで戻す場面は見られたものの、3.56%まで低下した米長期金利の動向が重しとなり、131.993円まで下げ幅を拡大しました。また、ダウ工業株30種平均は700.53ドル高い33630.61ドルで取引を終えました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
3.今回の見どころ
・天候悪化のノイズで焦点がインフレ動向へ遷移
・FRBはハト派に踏み込めない可能性も
大手IT企業を中心に人員削減計画が相次いで出され、労働市場が活力を失いつつありますが、需給ギャップの解消には至っておらず、想定以上に雇用情勢は底堅さを示しています。図表3.に示すように、求人件数が依然として高水準をキープしているほか、雇用統計に使われる12日を含む週の新規失業保険申請件数も歴史的な低水準へ低下しています。また、人員削減数は11月に大きく増加していましたが、12月はそこから減少するなど、全体的には労働市場への悲観的な見方が高まっているようには感じません。
図表3.雇用関連指標一覧
出所:外為どっとコム総研
ただ、1日に発表されたADP雇用統計の結果が、市場予想の17.8万人を大幅に下回る10.6万人に留まったことで、政府公表のデータも下振れる危険が出てきました。ADP社によれば、カリフォルニアの記録的な洪水のほか、東部や中部での悪天候で採用活動が鈍ったことが要因としています。政府公表のデータについても同じ週の調査となるため、NFPへの期待も持ちづらくなり、3日のデータはさえない数字が出ても当然と言える状況です。
ただ、ADP社は調査週以外は雇用は全般好調だったコメントしており、今回のNFPの結果が米国の労働市場のすう勢を正確に写していない可能性を指摘しています。同様の調査となるNFPも、イレギュラーな要因でしかも実状と違う結果が出る可能性があるとあって、注目度は低下気味です。市場の関心は時給の動向へ移ったかもしれません。賃金インフレについては、コロナの水際対策の緩和による外国人就労者との置き換わりなどを通じて、今後、抑制されていくと考えますが、物価上昇にまだ賃金が追い付いていない部分はあり、賃金上昇傾向は今後もしばらく続きそうです。FRBも年内の利下げを織り込んでいません。今月のデータがFRBのこうした姿勢に変化をもたらすのか注目されます。
図表4.時間給と雇用コスト指数
出所:外為どっとコム総研
さて、今月の市場予想はNFPは19.0万人、時給の前月比で0.3%が見込まれています。反応ですが、昨年12月は天候の特殊要因もあり、市場はより時給の結果が着目されると予想しています。その上で、物価上昇に賃金が追いついていない部分がまだあり、本格的な賃金のディスインフレ傾向はまだ先との思から、指標発表直後は上目線と考えています。ただ、中期的な米経済の減速観測から、米ドルの上値の重さは払しょくされづらいため、上昇が継続するかは微妙です。
☆想定するシナリオ
※本指標発表後、5分の値幅(過去3カ月):平均46銭
出所:外為どっとコム総研
図表5[雇用統計の実績と予想]
年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||||
予想値 | 実績値 | 修正値 | 予想値 | 実績値 | 修正値 | |
2023年01月 | 19.0 | 51.7 | – | 3.6 | 3.4 | – |
2022年12月 | 20.0 | 22.3 | 26.0 | 3.7 | 3.5 | 3.6 |
2022年11月 | 20.0 | 26.3 | 25.6 | 3.7 | 3.7 | – |
2022年10月 | 20.0 | 26.1 | 28.4 | 3.5 | 3.7 | – |
2022年09月 | 26.0 | 26.3 | 31.5 | 3.7 | 3.5 | – |
2022年08月 | 29.8 | 31.5 | 29.2 | 3.5 | 3.7 | – |
年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
予想値 | 実績値 | 実績値 | |
2023年01月 | 0.3 | 0.3 | 62.4 |
2022年12月 | 0.4 | 0.3 | 62.3 |
2022年11月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年10月 | 0.3 | 0.4 | 62.2 |
2022年08月 | 0.3 | 0.3 | 62.3 |
2022年08月 | 0.4 | 0.3 | 62.4 |
◇関連の経済データ実績
年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
2022年01月 | 50.6 | 50.0 |
2022年12月 | 50.8 | 49.9 |
2022年11月 | 48.4 | 51.5 |
2022年10月 | 50.0 | 49.1 |
2022年09月 | 48.7 | 53.0 |
2022年08月 | 54.2 | 50.2 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
4.今回の戦略
テクニカル的には、週足一目均衡表・雲の中で下げ渋る格好を示す局面はありながらも、上値を徐々に切り下げており、トレンド転換したとは言えそうにありません。週足一目雲上限が推移する130.894円や、132.700円付近を低下する同転換線付近では上昇が抑えられそうな雰囲気です。指標結果で持ち上げられた場面では、こうしたポイントで戻り売りが有効になりそうです。
図表6.米ドル/円チャート-週足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
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