総括
FX「利上げ減速で0.5%引き上げ。重要なのはニアショアリング」メキシコペソ見通し
予想レンジ 6.7-7.2
(ポイント)
*政策金利は0.5%の利上げに留まり、利上げ減速を実践
*ファンダメンタルズは強い
*大きな期待は既に始まっているニアショアリング
*10月鉱工業生産は堅調
*11月消費者物価は総合で低下、コアで上昇
*ペソ円下落は円買い介入、原油安、世界的な利上げ減速論によるもの
*11月の自動車生産増加
*今年は唯一ドルより強いのがペソ
*原油が安い。メキシコの長期金利が低下
*バークレーズがペソ堅調見通し、ムーディーズは弱気
*ムーディーズは格下げ、S&Pは見通し引き上げ
(政策金利、0.5%引き上げ10.5%へ)
メキシコ中銀は12月15日、政策金利を予想通り0.5%引き上げ、10.5%とした。これまで4回連続で0.75%利上げを行ってきたが、インフレが鈍化する中、利上げ幅を縮小。ただ、少なくともあと1回は利上げを実施する可能性があると示唆した。
今回は政策委員5人のうち4人が0.5%利上げを支持。エスキベル副総裁が0.25%利上げを提案した。
今回の声明で「引き締めサイクル」がまもなく終了することが明確に示され来年2月に0.25%の利上げが実施されると予想されている。
(10月鉱工業生産)
ファンダメンタルズは悪くない。10月鉱工業生産は前月比0.4%増で9月の-0.2%を上回った。11月の自動車生産台数は27万8824台と前年同月比で8%増えた。7カ月連続で前年同月の水準を上回った。米国向け自動車の主要生産地であるメキシコで、半導体の供給制約で縮小した生産台数が回復しつつある。
(やはり中長期はニアショアリングに期待大)
利上げ減速、原油安・円高でペソ高が修正されているが、未来は明るい。米国とメキシコは、アジアからメキシコへの「ニアショアリング」と呼ばれる事業移転を誘致する戦略を立てている。
メキシコの対内直接投資においては、パンデミックによって発生したサプライチェーンの分断によるニアショアリングの流れが指摘されている。元経済財務次官のルイス・デ・ラ・カジェ氏はUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に関するフォーラムにおいて、「ニアショアリングでのメキシコの大きな利点は、北米、欧州、アジア太平洋、ラテンアメリカと同時に統合できる唯一の新興国であり、中国、インド、ブラジル、インドネシアなどの競合にはまねできないことだ。もう1つの大きな利点は、米国と国境を接するメキシコの地理的な位置であり、物流面での優位性を民間部門とともに促進する必要ある。メキシコが必要とする最も重要なことは米国東部との新たな国境開放だ。これによりメキシコ南部地域の開発が活発になるため、USMCAの恩恵は国内の16~17州にとどまらず、32州すべてに広がる」との趣旨の発言を行った。
英国バークレイズ銀行の調査は、メキシコへの投資移転はすでに始まっていると分析している。同調査によると、世界における2021年の直接投資受入額でメキシコは10位となり、ドイツの直接投資受入額をわずかに上回った。メキシコの直接投資受入額は過去22年間の平均266億ドルを上回り、2022年上半期のみで275億ドルを記録している。同銀行の調査は「2022年末には400億ドルを超えると予想している」と指摘している。
テクニカル分析
ボリバン2σ下位で横ばい、なべ底になるか。5日線上向く
日足、ボリバン下位で12月5日から横ばい推移。12月14日-15日の上昇ラインがサポート。11月29日-30日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向く、20日線下向き。
週足、ボリバン中位下抜く。8月1日週-12月12日週の上昇ラインがサポート。11月7日週-28日週の下降ラインが上値抵抗。5週線が20週線を下抜く。
月足、11月は4か月ぶり陰線。9月-10月の上昇ラインを下抜く。4月-8月の上昇ラインがサポート。ボリバン上位。
年足、2021年は陽転。20年-21年の下降ラインが上値抵抗だが上抜く。20年-21年の上昇ラインがサポート。
VAMOS MEXICO
新興国資産の「強気」派、約1年半ぶりに「弱気」上回る
HSBCによると、新興国資産に対する投資家の明るい見方が過去3カ月間でほぼ倍増し、2021年7月以来約1年半ぶりに「強気」が「弱気」を上回った。
今後3カ月間の新興国資産の見通しについて「強気」とする割合は29%と、9月に行われた前回調査の15%から上昇。一方、「弱気」は41%から18%に低下した。
インフレ懸念の緩和や世界主要中銀による金融引き締め減速期待、中国の経済活動再開や不動産セクター支援を巡るニュースなどが、今回の調査の背景にあるという見方を示した。
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