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FX/為替「米雇用はペース鈍化路線へ回帰か、ドル円は138.000円死守なるか 9月2日の米国雇用統計の予想と戦略 2022年9月号」By 外為どっとコム総研

米雇用統計の予想と戦略


更新日時:2022年09日05日 12時00分 指標結果を反映
執筆日時:2022年09月01日 14時00分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人

米雇用はペース鈍化路線へ回帰か、ドル円は138.000円死守なるか 9月2日の米国雇用統計の予想と戦略 2022年9月号

目次

 

1.はじめに

2022年9月2日(金)、日本時間21時30分に米国の8月雇用統計が発表されます。7月NFPは市場予想の2倍となる52.8万人での着地となり市場を驚かせました。雇用拡大ペースが加速していくのか、それとも3月以降のトレンドに戻すのか注目されます。また、9月20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅見通しに影響するかも着目されます。では、早速、前回の振り返りです。

2.前回のおさらい

・7月NFPは52.8万人増
・賃金も上昇、労働需給がひっ迫

8月5日、米労働省が発表した7月の非農業部門雇用者数(NFP)は52.8万人増と市場予想の25.0万人増の2倍超となり、米国の景気後退不安が和らぎました。また、同失業率は3.5%と6月の3.6%から低下。平均時給は前月比+0.5%(6月は+0.4%)へ加速しました。幅広い業種で雇用が増加し、改めて労働需給のひっ迫が長期化する可能性が示されました。

図表1.分野別新規雇用者数(千人)出所:米国労働省

NFP表

米ドル/円は、米長期金利の上昇とともに135.482円まで、発表直前のレベルから2円超急騰しました。かたや株式市場はまちまち。好調な雇用市場と積極的な金融引き締め観測が交錯し、方向性は明確になりませんでした。ダウ工業株30種平均は前日比76.65ドル高い32,803.47ドルで取引を終えました。

図表2.前回発表前後のドル円の動き

USDJPY30分チャート
米ドル/円 30分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート

3.今回の見どころ

・雇用拡大ペース、緩やかに鈍化か
・ロングコビットの影響で短期はノイズ混じり

7月分の雇用統計については、実質GDPが前期比ベースで2期連続のマイナス成長だったほか、他の雇用指標もそれ程強くない中で上振れる結果となり、市場関係者を困惑させました。実際に、2020年のコロナ前のレベルに就労者数の水準へ戻しているほか、就労者数は季節調整前では、前月から38.5万人減少しています。また、求人件数も頭打ち傾向を示していて(図表3.)、需給が緩み始めていると考えるのが普通と思われます。

にもかかわらず、7月のNFPは52.8万人増加でした。理由は、複数の職を持つ労働者が増加したほか、新型コロナウイルス問題によるかく乱が続いているためなど様々あるようです。米ブルッキングス研究所は、コロナウイルス感染症の後遺症で十分に働けない労働者(ロングコビット)が200万人~400万人いると報告しており、こうした部分が需給関係を歪めている可能性を指摘しています。需給バランスが崩れているため、労働市場の数字にはかなりノイズが入っていると思われ、単月の数字を見て労働市場の好不調を判断するのは少し危険でしょう。

図表3.米求人件数と就業者数の推移データ:米国労働省

求人件数と労働者数

さて、8月のNFPですが、ロングコビットの存在で起きている人手不足に重心を置けば、市場の引き締まり傾向が続くとする考えも正当化できますが、就労者数がコロナ前の水準に戻しているほか、求人件数、新規失業保険申請件数の動きを基にすれば、雇用拡大ペースは緩やかに鈍化すると見るのが妥当と考えます。また、FOMCの利上げサイクルはまだ続きそうなため、余程のネガティブサプライズでもなければ、9月FOMCについては0.75%利上げが優勢な情勢です。

9月1日の14時時点のBloomberg調査によるNFPの市場予想の中央値は29.8万人と、前月の52.8万人から半分近くに減少すると見込まれています。市場は前月はノイズが大きかったとみているようです。そこで、①は予想レンジの上限を超える40.0万人以上、②は29.8~40.0万人、③は市場予想を下振れする20.0万人~29.7万人、④はエコノミストの下限以下の4つに分けたいと思います。

①は、労働市場の引き締まりから、金利の最終到達地点(ターミナルレート)の上振れや「異常に大幅な利上げ(≒0.75%)」の継続性から大幅利上げ継続となり、米ドル高が加速しそうで、②は「大幅な利上げ(≒0.5%)」の継続性や利下げ時期の後ろ倒し観測から米ドル上昇で反応するのではないかと考えます。③は、労働市場の引き締まり緩和期待からタカ派姿勢が若干修正され米ドルは小幅安、そして④は米経済の鈍化が意識されてFRBの利下げ時期の前倒し期待から米ドルは大幅下落するのではないでしょうか。②をメインシナリオと考えています。

☆想定するシナリオ

パターン NFP(万人) 想定される米ドル/円の値動き 理由
40.0以上 発表後、1.5円上昇 異常に大幅な利上げ継続
29.8~40.0 発表後、50銭で振幅 大幅な利上げ継続
20.0~29.7 発表後、50銭下落 米上げペース鈍化
19.9以下 発表後、1.5円下落 利下げ前倒し期待

※本指標発表後、1時間の値幅(過去3カ月):平均1.0円

図表4.[雇用統計の実績と予想]

年月 非農業雇用者数変化(万人) 失業率(%)
予想値 実績値 修正値 予想値 実績値 修正値
2022年08月 29.8 31.5 3.5 3.7
2022年07月 25.0 52.8 52.6 3.5 3.6
2022年06月 26.8 37.2 39.8 3.5 3.6
2022年05月 32.5 39.0 38.4 3.5 3.6
2022年04月 39.1 42.8 43.6 3.5 3.6
2022年03月 49.0 43.1 42.8 3.7 3.6

 

年月 平均時給/前月比(%) 労働参加率(%)
予想値 実績値 実績値
2022年08月 0.4 0.3 62.4
2022年07月 0.3 0.5 62.1
2022年06月 0.3 0.4 62.3
2022年05月 0.4 0.3 62.3
2022年04月 0.4 0.3 62.2
2022年03月 0.4 0.5 62.4

◇関連の経済データ実績

年月 ISM製造業雇用指数 ISM非製造業雇用指数
2022年08月 54.2
2022年07月 49.9 49.1
2022年06月 47.3 47.4
2022年05月 49.6 50.2
2022年04月 50.9 49.5
2022年03月 56.3 54.0

出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー

4.今回の戦略

・138.000円付近までなら買いで追随、同水準割れなら撤退

発表前のレベルによっては調整が必要ですが、シナリオ①なら141.00円を目指す形になり、②なら140円の大台回復が見込まれます。一方で、③なら138.70円付近の5日移動平均線のサポート力を確認となり、④なら、日足ボリンジャーバンド(期間21日)の+1σレベルとなる138.000円割れを試す形を見込んでいます。

結果を受けて上値を試す形になれば、そのまま買いで追随したいところです。また、仮に下方向を試す格好となっても、138.000円割れを回避したときは買いで反発を狙いたいです。ただ、このレベルを割り込むようなら、136.000円付近までの調整もあり得るため、買いはいったん手仕舞いと考えます。

図表5.米ドル/円チャート-日足

USD
出所:外為どっとコム「ネオチャート

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