みなさんはFXが「どのような金融商品だ」と思っていますか?「ギャンブル性が高い」「乱高下する相場の精神的負担が大きい」「強制ロスカットで多額の資金を失う可能性がある」、FXの特徴についてこのように説明をする人たちがいます。また、「FXは危険だ」「投資の素人は手を出してはいけない」などと注意してくれる人たちもいます。果たして本当にそうなのでしょうか?
確かに、金融商品の中で「ハイリスク・ハイリーターン」に分類されるFXですが、実はリスクを抑えた投資方法や、しっかりとした資金管理方法など、FXで失敗しないためのやり方を心掛ければ、初心者でも、着実に利益が獲得できます。今回は、FX初心者が失敗しないための「コツ」について考えてみましょう。
目次
- ▼FXは損失よりも利益が多くなればいい
- ▼避けられない損失を最小限に抑える3つのコツ
- ▼(1)明確な損切りルールの確立と実践
- ▼(2)レバレッジを使いすぎない
- ▼(3)口座維持の有効比率を落とさない
- ▼冷静に取引ができる状況を維持しよう
FXは損失よりも利益が多くなればいい
そもそもFXとは、「相場が上がるか」それとも「下がるか」を予測することで利益を得る金融商品です。相場が予測通りになるか、外れてしまうかは50%の確率です。実際にやってみるとよくわかりますが、毎回、利益を得るためにエントリーしても、すべてのポジションで必ず利益が得られる訳ではありません。いつかは必ず損が出てしまうものなのです。FXトレーダーで、為替相場の将来を100%的中させられる人など、どこにもいないでしょう。
だから、FXは常に損失が出る可能性を考えてトレードしなければなりません。そして、どうしても避けられない損失は、できるだけ最小限に抑える工夫が必要です。1週間、1ヵ月、1年でも期間の設定はひとそれぞれで構いません。自分が定めた期間中の収支がプラスになるように、損失を抑えるようにすることが大切です。
避けられない損失を最小限に抑える3つのコツ
最終的に収支をプラスにするために、損失を最小限に抑える方法のひとつが「損切り」です。
(1)明確な損切りルールの確立と実践
FXのトレードで一番難しいのは損切りでしょう。自ら損をすることを決める決断ほど、難しいものはありません。相場は常に変動するので、「もう少し待っていたら、プラスになった」「もう少し待っていれば、たくさん利益が出た」などという、「たら」「れば」は、しょっちゅう起こります。
「もう少し待てば、相場が動いてプラスになるかもしれない」そういう淡い期待を抱いて、なかなか決済ボタンが押せずにいたら、さらに損失を拡大させてしまった経験はありませんか?目の前の損失額を受け入れられずに、深傷を負った経験は、歴戦のトレーダーでも必ずあります。FX初心者が、そのワナに陥ってしまうのは、ある意味で当然なのです。FX初心者がそうしたミスを防ぐためには、明確な損切りルールを用意しなければなりません。
・自分のリスク許容額を確認
金銭感覚は個人で異なります。損失を出したときに、「1,000円でも資金が減るのがイヤだ」というAさんのような人もいれば、「10万円くらいまでなら大丈夫」というBさんみたいな人もいるということです。年齢、性格、年収、家族構成など、さまざまな違いから、お金に対する個人の価値観は異なります。だから、トレーダーの「損切りライン」は、トレーダーごとに異なります。自分はいったいいくらまでなら損失を許容できるのか、じっくりと考えてみてください。それがあなたのリスク許容額です。
・自分なりの損切りルール確立
損切りにはいろいろな方法があります。
(A)「2%ルール」の利用
投資の世界には「2%ルール」というものがあります。トレーダーが受け入れるべき最大許容リスクは「元手の2%まで」というもので、1980年代、数年間で数百億円もの利益を出したウォール街の伝説的な投資家集団「タートルズ」が用いた投資ルールのひとつです。
当時カリスマトレーダーとして名を馳せていたリチャード・デニス氏が友人である数理学者との間で賭けをしました。それは、「投資の素人は2週間のトレーニングで、利益の出せるトレーダーになるかどうか」というものです。新聞広告で集められた23人の素人トレーダーたちは、1年間の平均で25%も資産を増やし、結局、デニス氏は友人との賭けに勝つのですが、タートルズの損切りルールが、「元手の2%まで」だったことから、損失リスクの目安として、今でも広く知られています。
これをFXの「損切りルール」に当てはめてみましょう。損失額が口座に入れた証拠金の2%に達したら、必ずそのポジションは「損切り」するのです。
例えば、上述したBさんが100万円の証拠金でFXをしています。そこで損切りに「2%ルール」を使ってみることにしました。Bさんは1ポジションで2万円の損失が出たら、必ず損切りをします。ただ、Bさんは10万円くらいの損なら失敗した自分を許せるということなので、毎回2万円の損失を出したとしても、5回まではポジションを持つことができます。
表からも分かるように、5回連続で2%の損失を出しても、損失総額は証拠金の10%です。
もしこれが「10%(10万円)ルール」だったらどうでしょうか。リスク許容額が10万円のBさんは、1回だけの失敗で、限度額に達してしまいます。
この2%ルールが正解というつもりはありません。別に何%でも構わないのですが、重要なのは、損切りルールが、自分の用意できるお金と密接に関係しているということです。用意した資金と比較して大きすぎる損失まで許容する「損切り」では意味がありません。そこから自分なりの比率を見つけてください。
(B)損失額で損切り
例えば、ポジションの含み損が「3,000円になったら」とか、「5,000円になったら」とか、損失額を決めて「損切り」するというやり方もあります。
「売り」でも「買い」でも、FXでポジションを持つと、リアルタイムでポジションごとの「評価損益」が下記のように表示されます。もし含み損が、自分で決めた損切り金額に達したら、迷わずに損切りするのです。
(外為どっとコムの「外貨ネクストネオ」スマートフォン新アプリから作成)
資金の何%で損切りとするよりも、自分が決めた損失額で「損切り」すると、今、自分がいくら損失を負っているのかという計算がしやすくなります。
(C)値幅で損切り
また、動いた値幅で判断するという方法もあります。「買値から〇〇銭下落したら損切り」とか、「売値から〇〇銭上昇したら損切り」とか、エントリーしたときのレートから判断するのです。
下図のように、チャートを見ながら為替レートの変動幅で判断します。相場の動きに合わせて損切りするので、タイミングが取りやすいのではないでしょうか。
このようにFXでは、自分が許容できる範囲内に損失額を限定することで、運用リスクを抑え、失敗を回避することが大切です。
(2)レバレッジを使いすぎない
FXの最大のメリットはレバレッジを使い、口座に入れた資金よりも大きな金額でトレードできることです。個人であれば最大25倍までのレバレッジが使えます。
FX初心者の中には、FX投資をするからには「たくさん利益を得たい」「簡単に利益を得たい」と考えて、ついレバレッジを掛けてトレードしてしまう人も少なくありません。
ただ、高レバレッジで大きなリターンが期待できる一方で、大きな損失を出すリスクも高いのです。FXの経験が少ない初心者は、大きな含み損を抱えたとき、その金額の大きさから精神的な負担を感じて、冷静な判断ができなくなり、さらに大きな損失を出してしまう可能性があります。
また、高レバレッジで運用すると、資金に余裕がなくなり、相場が大きく変動すると、強制ロスカットでポジションが決裁されてしまう可能性があります。FX初心者はそういうことが起きないようなレベルのレバレッジに抑えてトレードしなければなりません。
そして、レバレッジが高くならないようにするためには、トレードする際にロット数を増やしすぎないこと。そして、ポジションを持ちすぎないようにすることです。
(3)口座維持の有効比率を落とさない
レバレッジを高くしてリスクを取りすぎないようにするもうひとつの理由は、強制ロスカットにならないようにするためです。強制ロスカットにならないようにするためには、FX口座の有効比率が100%を下回らないようにする必要があります。100%を切ると強制ロスカットされてしまうからです。
例えば、1米ドル=100円のとき、口座に10万円の資金を入れて、レバレッジ5倍、5,000通貨(5Lot)の取引を行います。その際に必要となる最低限の必要証拠金(※1)は2万円(4,000円×5Lot)です。
※1外為どっとコムでは、「必要証拠金」のことを「取引保証金」と呼んでいる
もし口座に2万円しか入金されていない状態だと、為替相場が1米ドル=100円から、わずかにでも変動したら、有効比率が100%を下回ってしまい、そのポジションは強制的にロスカットされます。
しかし、あなたは口座に証拠金として10万円の資金を入れているので、
5ロット・レバレッジ5倍の場合
10万円-2万円=8万円
現在は8万円の「余裕」がある状態です。
10ロット・レバレッジ10倍の場合
10万円-4万円=6万円
6万円の余裕があります。
当然、ロット数が増えて、レバレッジが上がれば、資金的な余裕はなくなります。
5ロット・レバレッジ5倍の場合は、1ドル=84円で有効比率100%に到達します。買値から16円の値下がりまでは耐えられるのです。一方で、10ロット・レバレッジ10倍の場合は、1ドル=94円でした。6円の値下がりまでは耐えられますが、5ロット・レバレッジ5倍と比較すると10円の開きがあります。
つまり、大きなロットで取引したい人、ポジションをたくさん持ちたい人は、その分、証拠金も増やしておかないと、強制ロスカット発動までの余裕が、どんどん減ってしまうのです。
FX投資で失敗しないためには、証拠金、ロットサイズ、ロット数を調節して、口座維持のための有効比率を200%以下にしないことです。特に初心者はFX会社からのアラート通知が届かないレベルを必ず維持してください。
冷静に取引ができる状況を維持しよう
今回は初心者がFX投資で失敗しないコツとして3つほど紹介しました。(1)明確な損切りルールの確立と実践。(2)レバレッジを使いすぎない。(3)口座維持のための有効比率を落とさない。この3つはあなたの大切な資金を減らさらないという点において、いずれも密接に関係しています。
FXで一番大切なのは、損失が出てしまったときに、大きく資金を減らさないようにすることです。また、大きな損失が出ると、どんなに経験のある人でも動揺するはずです。「余裕を持って冷静にトレードできる」という心理状態は、資金の減少以上に重要かもしれません。「損した分を取り返そう」と感情的にトレードしてしまうことほど危険なものはありません。経験の少ないFX初心者は、FX投資で失敗しないためにも、ぜひこの3つのコツで損失を抑えて、余裕を持ってトレードしてください。
マネ育PickUp編集部K氏:大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。 その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携 わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。
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