こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。
第20回目は「豪ドルの下値余地を限定的と考える理由」です。
順を追ってご説明いたします。
目次
1.豪ドル相場の定点観測
2.豪ドルの唯一の懸念材料は資源価格の急落
3.豪ドルは上昇を想定し押し目買い方針
1.豪ドル相場の定点観測
まずは現在の豪ドル相場について状況を確認します。
豪ドル情報の一覧表
AUD/USDはこの2週間で89pips下落し、6月27日執筆時点で1AUD = 0.6920USDとなっています。6月15日開催のFOMCに対する思惑で上下する局面は見られましたが、そこまで大きな変動はなく、やや上値の重い相場展開が続きました。
AUD/USDチャート、日足
AUD/JPYはこの2週間で1.37円の下落し、1AUD=93.19JPYとなっています。ドル/円の上下につれて変動しましたが、終わってみればドル/円が横ばいだったこともあり、AUD/USDが下落した分をそのまま反映した形です。
AUD/JPYチャート、日足
なぜ豪ドルの上値が重かったのかを考えてみると、コモディティ価格の下落が少なからず影響したと考えています。総合的なコモディティの価値を示すBCOM(Bloomberg Commodity)は2週前比で10.4%下落しています。
BCOMチャート、日足
2.豪ドルの唯一の懸念材料は資源価格の急落
現在のオーストラリアのファンダメンタルズは極めて良好です。
海外との取引を集計した「経常収支」は資源高に起因する大幅な貿易収支の伸びを背景に過去に例をみない高水準で推移しています。また国内の労働市場はパンデミック以前よりもさらに改善しています。
高水準で推移するオーストラリアの経常収支
パンデミック以前よりも改善した労働市場
これらオーストラリアのファンダメンタルズはアメリカと比較しても決して劣るものではないです。今年の4月から足元までAUD/USDはすでに700pipsほど米ドル高が進み、相対的に豪ドル安が進んできたことを考慮すると、今の水準よりもさらに一方的な豪ドル安に傾く可能性は極めて低いとみています。
とはいえ豪ドルが下落し続けるシナリオも無いわけではないです。例えばコモディティ価格が急落する場合には、資源国であるオーストラリアの経常収支や労働環境の悪化を連想させ、それが豪ドルの続落に繋がる可能性もあります。
そこでコモディティ価格の急落可能性は高いのか?という視点で考えると、少ないように思います。
代表的なコモディティである原油にフォーカスを当ててみると、原油価格の急落にはその需給バランスが崩れることが必要で、需給バランスに大きな影響を与えるOEPCプラスの生産方針をみているとそこまで大きく増産に傾いていないです。そもそもOPECプラスとしては現在の資源高は経済にプラスに働きますし、米国との関係もそこまで良好なものではないので、EUや日本など西側諸国に配慮して供給量を増やし、需給バランスを崩して価格を低下させる動きは出てきにくいと考えます。
とすると前回号でも述べていますがそろそろAUD/USDは底打ちし反転していくのではないかというのが私の見方です。
3.豪ドルは上昇を想定し押し目買い方針
方針はこれまでに述べてきた通り、AUD/USDの底打ち反転をイメージしているので、どこで底を打って、反転していくのかを図っていくのですが、1つは年初来安値(0.6830レベル)を下抜けてから拾っていく方法が考えられます。ここにストップを置いているプレイヤーは多いでしょうから、それが一掃されたあとにエントリーしていくということです。
AUD/USDチャート、日足
もう一つは節目の0.70を明確に上抜けてから後追い的に追っかけることも考えています。なかなか底打ちのタイミングを計るのは難しいので大分戻ってきたら入っていく方が利幅は小さいですが、無難な戦略と言えます。
他にもRBAやFOMC等で流れが一変するかもしれないのでチャートだけでなく、イベントを見て判断する準備をしておくと良いでしょう。
AUD/JPYに関してはドル/円次第のところがありますので、ドル/円が過度に下押しするような局面があれば拾っていきたいですが、現在の相場は米ドル主導のところもあって、仮に米ドル安が進んで豪ドル高となっても、一方で米ドル安の影響でドル/円が下押し、AUD/JPYはあまり動かなかったとなる可能性もありますので、AUD/USDの方が狙いやすい局面と考えています。
AUD/JPYにこだわるのであれば、ドル/円を軸に判断して、ドル/円が下押したタイミングで長い軸でロングエントリーしていくと、スワップポイントも絡めて、プラスに持っていける可能性は高くなると思います。
本日は以上となります。
引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
戸田裕大
<参考文献>
豪ドルチャート、IMM通貨ポジションデータ:外為どっとコム
BCOMデータ:Investing.com
経済指標:Investing.com、Australian Bureau of Statistics
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戸田裕大氏レポート
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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