“リスク・オフ時の円買い再開。”

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3月から破竹の勢いで上昇していたドル・円相場がついに大きく転換し、週足ベースでの陽線(終値が始値を上回る。)が9週でストップした。

週明けの本日は129.20で始まり、仲値に向けてのドル買いで一時129.62の高値を付けたがその後失速し、お昼前後は128.75近辺でやや円高気味に推移している。

今週末、週の始値の129.20よりも安く引ければ2週連続の陰線(終値が始値を下回る。)となり、先週初付けた131.34が当面の高値となって更なる下への調整も考えられる。

先週初までの“行け、行けどんどん!”のドル高から急にセンチメントが変わった感が有るが、この背景には市場が再びリスク・オフ時の円買いを再開したことにある。

注目の米国4月のCPI.(消費者物価指数、季節調整済み)は8.3%と1981年12月以来の高水準だった3月8.5%を下回ったが、市場予想の8.1%を上回った。
CPI.の減速は昨年8月以来となり、インフレ懸念が多少後退して債券が買われて長期債利回りは下落した。
市場予想は下回ったものの8.3%と言う数字は依然として米国の高インフレを表しており、株式市場はインフレ長期化を嫌気して続落して、ダウ、ナスダック、S&P.の3指数共年初来安値を更新した。

株安&金利低下(債券高)のリスク・オフ相場となった訳であるが、此処で先週初までの動きと違って大きな円買いが入った。

リスク・オフ時のドル買い&円買いの復活である。

ドル上昇=その他通貨下落であるから、ユーロ、ポンド、豪ドルなどが下げ、買われた円の上昇と相まってクロス・ベースでの円上昇は際立ったものであった。

この突然の市場のセンチメントの変化(ぷっつりと止まっていた円買いの復活。)には驚いたが、幾つかの理由が挙げられる。

先ずはFRB.が金融引き締めに転じて以来株価と債券価格が下落し、年初から世界の株式時価総額は21兆ドル、債券は17兆ドル、合計38兆ドルもの価値が減少したと言われる。
世界のGDP.(国内総生産)の半分近くが4ヶ月ちょっとで霧散したことになる。
投資家が既存の債権の処分を図り、新規投資を控える(リスク・オフの動き)のは当然である。
結果として株や仮想通貨などのリスク資産は売られ、安全資産として米国債券が買われて金利は低下する。
(金が買われないのが今一つ理解出来ないのだが..)

次に日米の景況感に対しての判断が変化しつつあるのかも知れない。
FRB.の引き締めにより米国経済のスローダウンが懸念され、インフレ下の景気減速(スタグフレーション)を心配する声が聞かれだしたが、我が国は日銀の頑なな金融緩和政策により金融面での心配はない。
週末の日経新聞の記事によると、東証プライムの上場企業で先週までに決算を発表した約1100社(全体の95%)の2022年3月期の純利益が前年比で+36%となり4年ぶりの最高益を更新したらしい。
低金利+円安で大企業は儲かって仕方ないらしい。

一言で言うと米国ではドル高と金融引き締めで企業業績に翳りが見える中、我が国では金融緩和と円安で企業業績の更なる上振れも囁かれる。
米国に対してはリスク・オフ、日本に対しては金利差拡大を差し引いてもリスク・オンと言う考えも有るのだ。

実はこのロジックを基にして先週ある大手米系証券会社が顧客に対して円買いを勧めた。

それが主因かどうかは不明だが、ドル・円相場は一時127.51の安値を付けて市場を驚かせたが円買いが一巡すると再びドル買いが台頭して129円台を回復した。

先週の戦略はCPI.発表後にドルが下がれば買い増すと言うものであったが、シナリオとは違う理由で下がったものの、やはりドルが下がれば買い増すと言うBuy on dips.の戦略が有効と心得る。

先週、突然の市場のセンチメントの変化で一時的にドル安&円高となったが基調的なドル高の流れが変わったとは思えない。

とは言えウクライナ情勢やフィンランドとスウェーデンのNATO.加盟に対するロシアの反発などの地政学的リスク増大によるリスク・オフの動きや、先週から話題になりだした日米間の企業業績見通しに対する市場の反応にも留意したい。
言い換えれば短期的なドル安&円高の動きにも対処出来るようにしておきたい。

今週のテクニカル分析の見立ては129円を下切れて一旦ショートにしたポジションは128円近辺でスクェア。(ポジションの解消。)
今週は中途半端なところでのドル買いは控え、寧ろ128円を下切ったらストップの売り、逆に130円を上切ったらストップの買いを考える。

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