ドル・円相場の騰勢が止まらない。
まるで糸の切れた凧の様な上がりっぷりである。
今朝の東京市場では122.05で始まり、それを安値として午前10時までは122.20近辺で割合静かな動きをしていたが、10時10分に日銀が“このところの長期金利の動きを踏まえ、10年金利の操作目標をゼロ%程度とする市場調節方針をしっかり実現する様に努める。”として無制限の国債オペを通告した為にドル買いが台頭し、123円台へ突入した。
日銀のお役所言葉を平たく言うと、“最近、国債10年物の金利がイールド・カーブ・コントロール上限の0.25%近くまで上昇しているので、0.25%で無制限に国債を買って金利がそれ以上上がらない様にします。”と宣言したのだ。
確かに先週10年物国債は0.245%まで上昇しており、一部には昨今の物価の上昇を受けてもしかして日銀が一時的にせよ0.25%以上の金利上昇を認めるかも知れないとの憶測が有ったが、大方の予想通りにオペを通告したのだ。
市場はもしオペを行わないで金利上昇を容認したら円高に振れると予想していた。
午後2時現在で10年物国債は0.241%で取り引きされており、どうやら市場は日銀のオペには大して敬意を表してはいない様に思われる。
片や政策金利の0.5%の利上げをも容認し、10年物債券利回りが2.5%になろうとしている間、もう一方は政策金利をゼロに固定し、10年物債券利回りが0.25%を超えることはまかりならんと宣言したのだから、ドル・円相場が更なる上昇を続けるのはごく自然な動きであろう。
拡大し続ける日米金利差、悪化し続ける日本の国際収支、ゲーム・チェンジによるリスク・オフ時の円買いの動きの終焉などを見ると、ドル・円相場が何処まで上昇するのか見当も付かない。
頼みの綱の当局(鈴木財務大臣)からは、“為替相場の急速な動きは望ましくない。”と子供でも分かる様なコメントが飛び出したが、とても円安牽制とは思えない発言に終わった。
どうやら誰が考えてもドル高&円安の動きが続きそうであるが、塾長にはこの上げ相場を取れなかった負け惜しみではないが、どうもゲームが簡単過ぎる様に見えて仕方ない。
それと何と言っても上昇スピードが速過ぎる。
はっきり言ってスピード違反気味である。
お上(金融当局や政治サイド)からの円安牽制が期待出来ない今はテクニカルな相場の反転を望むしか無い。
チャート見ると、トレンドを示す移動平均線は明らかに更なる上昇を指示しているが売られ過ぎ、買われ過ぎを示す下の部分に見えるストキャスティクスは明らかに買われ過ぎを示している。
年初、暫くレンジの高値であった116.34を付けた時にもストキャスティクスは天井に張り付いて買われ過ぎを示していたが、その後113.47まで下落した。
現在のストキャスティクスもピタリと天井に張り付いており、何時ドルが下がっても不思議ではない様相を呈している。
テクニカル分析はあくまでも参考にするに留めるべきだと思うのだが、昨今はテクニカル分析を重視して売買の指示をするAI.の活躍は無視出来ない。
AI.のご登場を願うとはどうも情けないものだが、他にこのドル・円の騰勢を止める手立てが見付からない。
それともう一つの円安牽制の望みの綱である政治サイドからは為替に関して何のコメントも聞かれない。
金利安、円安、株高を演出したアベノミクスを踏襲する気は些かも無い岸田首相が自分の岸田カラーを打ち出そうとすれば当然アベノミクスの反対の動きが出てもおかしくはない。
アベノミクスからの決別は金利高、円高、株安を意味する。
果たして海外から、Mr. Status quo.(何もしない人。)の異名を取る岸田首相が思い切った政策変換を図るかどうかは知らないが、そうでもしなければ円相場は下落を続けるであろう。
早くも市場はアベノミクスによる円安誘導で2015年6月に付けた125.85を意識しだしたが、上で述べたテクニカルな観点からの反落や、123~125円のストライクで買われた大量のドル・コール・オプションの利食いのドル売りにも留意したい。
ストップを入れてのドル買いポジションの保持か、下がったら買うBuy on dips.の戦略が
有効であろうか?
因みにシカゴ・IMM.は果敢に円の売り持ち(約82億ドル相当の買い持ち)を保持しているが我が国の個人投資家はこの上げ相場に付いて行けずにドルの売り持ち(約5億ドル相当)で捉まった感が有る。
後者がタオルを投げてドルの買い戻しに入れば、更なるドルの上昇を加速するかも知れない。
恐ろしい..
今週のテクニカル分析の見立ては相変わらずドルの更なる上昇を見込んでおり、ドル・ロングの保持を勧めている。
ターゲットは125円。