“ウクライナ情勢のヘッドラインに右往左往。”

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16日に発表された1月米連邦公開市場委員会(FOMC.)議事要旨では、利上げを近いうちに開始し、必要があれば引締めペースを加速することも正当化されるとの内容が示されたものの、バランスシート縮小(QT.)の開始時期や利上げ幅に関して具体的な議論はなく、既に市場に織り込まれている以上のタカ派的な内容ではなかったため相場の反応は限られ、長期金利とドルが小幅下落した。

尤も1月のFOMC.は市場を驚かせた7.5%と言う40年ぶりの高水準であった1月の米国消費者物価指数(CPI.)発表前に開かれており、発表後の開催であればもっとタカ派的な議論になった筈で、バランスシート縮小(QT.)や果たして0.5%の利上げが妥当かなどに関してもっと白熱した議論が為されたであろう。

それよりも現在の市場の関心はウクライナ情勢の行方である。

先週もウクライナ情勢に関するニュースのヘッドラインで相場は揺れた。

ウクライナ情勢に大きな進展が見られずリスク・オフの動きとなり、じわじわと円高が進んでいたが15日、ロシア国防省が“ウクライナ国境付近に集結していた軍部隊の一部が演習を終え、撤収を開始する。”と発表すると一旦はユーロ買い&円売りの動きとなったが、バイデン米大統領は“その様な兆候は見られない。”と一蹴した。

バイデン米大統領は,“ロシアがウクライナに侵攻する可能性はまだ高い。ロシアがウクライナに侵攻すれば断固として対応する用意がある。”などと述べて強気の姿勢を崩していない。
20日に終了予定であったウクライナに隣接するベラルーシで行われていたロシア・ベラルーシ両国軍による合同演習が延期されたと言うニュースが流れて週明けのオセアニア市場で一時ドル・円は114.88、ユーロ・円は129.99の安値を付けたが、マクロン仏大統領の呼びかけに応じてバイデン米大統領とプーチン露大統領の米露首脳会談が行われると言うニュースが流れてドル・円は115円台を回復し、ユーロ・円も130.60近くまで戻している。

又もやニュースに翻弄された感じがするが、この様な状態は暫く続くと思われる。

ロシアはNATO.の東方不拡大の保障とウクライナの加盟阻止を望んでいるが、NATO.側とウクライナはそれは出来ない。
NATO.側とウクライナはウクライナ周辺からのロシア軍撤退を求めるが、ロシアはそれは出来ない。

あれだけ大規模の軍隊を送ってウクライナに対する恫喝を行っているプーチン大統領が“何も得ることなく”おめおめと引き下がるとは思えない。

一方中間選挙を控えながら支持率低下に悩むバイデン大統領もアフガニスタンに続いて外交面での失態を国民に晒す訳にはいかない。

お互いにメンツを潰さない様に意地を張り合う状態が何時まで続くのか皆目見当がつかない。

我々は、依然として大きなリスクを取る状況ではないのであろう。

それにしてもドル・円の動きは鈍い。
先週は高値115.87、安値114.79の値幅1円8銭に留まった。

ファンダメンタルズ(日米金利差、日米景況感の違い、)によるドル高&円安の思惑と地政学的リスク(現在はウクライナ情勢がそれの筆頭。)によるドル安&円高の思惑との鬩ぎ合いが続き、115円を挟んだ取引が続くかと思われるが、今は全く鳴りを潜めている政治サイドからの円安牽制の動きには注意したい。

以前のレポートでも指摘したが、現在の円相場は実質実効レートベースから言うと実に50年ぶりの安値圏内にある。

昨今、身の回りの物価上昇には目を見張るものが有るが、多くが円安による輸入物価上昇によるものであることには疑いの余地は無い。

夏の参院選を控えて支持率が低迷気味の岸田内閣にとって “金の掛からない人気取り。”となり得る円安牽制は荒唐無稽な話ではない。

塾長がこの話題を出すことも決して荒唐無稽なものではないと信じている。


今週のテクニカル分析の見立てはレンジを予想するが、依然として下サイドへのブレークにより注意。
115.80を上切らない限り、ドル・ショートの保持。

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