“ドル高、金利高、株高。”  

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今年も残すところあと1週間。

今年は新型コロナ・ウィルスとFRB.の政策転換に翻弄された1年であった様な気がする。

今年の主要通貨と株価、そして米国10年債利回りの始値、終値(12月24日現在)を見るとドル高、金利高、株高であったことが一目瞭然である。

      ドル・円 ユーロ・ドル ポンド・ドル 日経平均 ダウ 米10年債
1月4日  103.15 1.2251 1.3563 27,258.38 30,223.89 0.919%
12月24日 114.31 1.1306 1.3390 28,782.59 35,950.56 1.492%
     +10.8% -7.7% -1.3% +5.6% +18.9% +0.573%

為替に関しては、夏から秋に掛けて新型コロナ・ウィルス・デルタ株による新規感染者数が世界的に激減し、一時リスク・オフの動きとなって安全通貨とされるドルと円が買われたが、新たな変異株であるオミクロンの出現によって世界的な供給制約問題とインフレ懸念が再燃して今度はリスク・オンとなってドルと円が売られ、名目金利の高いドルがより買われて結果としてドル・円が上昇することとなった。
他通貨に対してのドル高よりも、対円でのそれが顕著である。

FRB.はそれまで“一時的”としていたインフレに対する懸念から“一時的”の文字を外し、11月からのテーパリング(金融緩和の一環としての資産購入の段階的縮小)開始を宣言した。これを受けてドル・円相場は上げ足を速めて今年最高値の115.51を示現した。
12月、今年最後のFOMC.において2022年3月テーパリング終了後、年3回の利上げの可能性について討議され、2022年は金利差拡大によるドル高&円安の進行が期待されるが、果たしてどうであろうか?

円金利が低く保たれる中、米金利が上昇すれば金利差拡大の観点から対円でドルが上昇すると考えるのが自然だが、金利差は所謂ファンダメンタルズ(経済的基礎要因)の一つで、為替相場を決める要因の一つでしかない。他の要因として地政学的リスク(特定地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりにより起きるリスク)を忘れてはならない。
その中には秋の米国中間選挙、台湾、ウクライナ、そしてイランを巡る米中露が絡んだ緊張関係、そして新型コロナ・ウィルスが挙げられる。
米国中間選挙ではアフガニスタンでの処理の拙さや物価高による支持率低下に喘ぐバイデン大統領の敗北及び議会での民主党過半数割れ、台湾、ウクライナでは中国とロシアの武力侵攻の可能性、そして核合意を巡るアメリカとイランの緊張関係悪化などが大きなリスク・オフ要因として横たわる。
新型コロナ・ウィルスに関しては現在変異型のオミクロンが全世界で猛威を振るい、新感染者数が激増しているがその毒性は弱く、重症化リスクは低いと言うがこの後新たな変異型ウィルスが出現する可能性は否定出来ない。
これらのリスク要因が顕在化すれば金利差拡大によるドルの優位性はもろく崩れる。
2022年はファンダメンタルズ対地政学リスクの綱引きとなり、基調はドル高&円安であるが突然のドル安&円高にも備えなければならないと言う難しい年になりそうである。

今年のドル・円相場の安値は1月に付けた102.60、高値は11月に付けた115.51でその値幅は12円91銭となって5年ぶりの大きな値幅となったが、過去15年間のドル・円相場の動きを見てみると面白いパターンが見て取れる。

Open High Low Close 年間値幅 陽・陰線
2007 118.99 124.12 107.19 111.70 16.93   陰線
2008 111.66 112.11 87.11 90.68 25.00   陰線
2009 90.72 101.44 84.79 93.02 16.65   陽線
2010 92.97 94.99 80.24 81.15 14.75   陰線
2011 81.22 85.53 75.57 76.94 9.96   陰線
2012 76.89 86.78 76.02 86.75 10.76   陽線
2013 86.74 105.41 86.55 105.31 18.86   陽線
2014 105.23 121.84 100.76 119.66 21.08   陽線
2015 119.74 125.85 115.84 120.31 10.01   陽線
2016 120.16 121.68 98.80 117.04 22.88   陰線
2017 117.42 118.60 107.32 112.68 11.28   陰線
2018 112.61 114.54 104.63 109.60 9.91   陰線
2019 109.64 112.40 104.44 108.64 7.96   陰線
2020 108.74 112.22 101.18 103.29 11.04   陰線
2021 103.07 115.51 102.60 114.31 12.91   陽線
2022                       ?

此れを見ると2009年を除いてドル・円相場が陰線(年末相場が年始のそれよりも低い。)から陽線(年末相場が年始のそれよりも高い。)、或いは陽線から陰線へと転換するのが大体
4~5年の周期で起きていることが分かる。
2009年は始値と終値を比べると前後のパターンとは違った陽線を示しているが、その年の動きを見ると米金利低下と米国財政赤字拡大を嫌気したドル売りが進み、夏から秋に掛けては101円台から84円台へとドル安&円高が進んだ。
1年を通して見ると陰線の年であっと言ってもあながち間違いとは言えまい。

無理矢理に2009年も陰線としてカウントとすると、
2007年から2011年の5年間は陰線。
2012年から2015年の4年間は陽線。
2016年から2020年までの5年間は陰線。
そして2021年は陽線で2022年以降はどうなるか?

イメージとしては2022年3月のテーパリング終了、そして利上げ開始によるドル高が進み、秋のアメリカの中間選挙を控えてドルが売られる。
夏までのドル上昇過程でも上で挙げた地政学的リスク(台湾、ウクライナ、イラン問題と新型コロナ・ウィルス)に常に怯えながらのドル買いを余儀なくされると言うシナリオはどうであろうか?

レンジとしては110円~120円を大きく逸脱することは無かろう。


今年最後のレポートとなります。
1年間ご覧頂き、有り難う御座いました。
来年も宜しくお願い致します。

良いお年をお迎え下さい。

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