【豪ドル】米金融政策との差を考慮したトレード戦略「なっとく 豪ドル見通し」戸田裕大

なっとく豪ドル見通しタイトル

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。またオーストラリアと中国の関係、豪ドルと人民元の関係についても折を見て触れていきたいと考えています。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第7回目は「【豪ドル】米金融政策との差を考慮したトレード戦略」です。

目次

1.現在の豪ドル相場の確認
2.RBA(Reserve Bank of Australia:豪州中央銀行)金融政策の振り返り
3.今後の注目材料
4.相場の見通し

1.現在の豪ドル相場の確認

まずは現在の豪ドル相場を確認していきましょう。

<豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足>
作成時点のAUD/USDレート:0.7171

豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足

AUD/USD相場は12月7日RBA(オーストラリア中銀)の金融政策決定会合の2営業日前(12月5日)まで売られ続け、一時0.6992レベルまで下落しました。ただ0.7000を一時割り込んだことで達成感が出たのか、その後はじわじわと0.71台の後半まで買い戻されています。特に大きな要因があって買い戻されているわけではなく、行き過ぎた相場の自律反発の範疇と考えています。

<豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足>
作成時点のAUD/JPYレート:81.44

豪ドル/円(AUD/JPY)チャート、日足

AUD/JPYもAUD/USDに引きずられるかたちで下落しました。安値はAUD/USDと同じくRBA金融政策決定会合の2営業日前(12月5日)で、78.78レベルです。その後は買い戻され現在の水準81.44円に至っています。RBAの金融政策決定会合で流れが変わることが多いのが豪ドルですので、このまま上昇するかどうかは一つの注目点でしょう。

2.RBA(Reserve Bank of Australia:豪州中央銀行)金融政策の振り返り

豪ドルを取引する上でRBA金融政策決定会合はとても重要です。ファンダメンタルズ分析の王道とも呼べる「金融政策の変化」を一緒にみていきましょう。直近では12月7日にRBA金融政策決定会合が行われました。そこで前回11月2日からの変更点を以下に記しています。

2021年11月2日に発表のRBA金融政策
● 銀行間の翌日物貸出レート0.10%(短期政策金利)
● 少なくとも2022年2月中旬まで週に40億豪ドルの国債買い入れを実施(量的緩和の継続)

現行の(2021年12月7日に発表された)RBA金融政策
● 変更なし

11月からの変更点はなしです。

ただし金融政策決定会合で発表された内容の中で、押さえておきたいポイントを4点お伝えいたします。

1点目がオーストラリアの景気回復は強い点です。家計の消費は力強く戻っており、事業に関する投資活動も改善しています。オミクロン株の影響は不透明ですが、高いワクチン接種率(2回接種が89.3%)であることから、RBAは現時点でオミクロンの影響は大きくないと考えています。

2点目が他国の中銀の動向を注視している点です。すなわちRBAは米国の金融政策を強く意識しています。米国が利上げに転じるまではなるべく緩和的な金融政策を採り続けたい、そんなRBAの意向が報告から浮彫になっています。

3点目がオーストラリアの債券市場を注視していることです。債券は投資家からみれば「投資」対象ですが、国や企業からみれば「調達」の市場です。景気を回復させるためには低利で調達できる環境を維持したいのが本音でしょう。オーストラリア債券市場が急騰する場合には再びYCC(イールドカーブコントロールと呼ばれる債券利回りの誘導目標)を復活させる可能性も頭の片隅に入れて置くとよいかも知れません。

4点目がなんといっても物価の安定と雇用環境の改善を目標にしている点です。RBAは「実質インフレが2~3%で推移しない限りは利上げには踏み切らない」と明言しています。また「賃金が今の水準よりもさらに上昇すること」をもう一つの利上げ条件としています。

これら4点を抑えておくと、さまざまなヘッドラインに振らされることなく、RBAの意図を汲み取った取引ができるはずです。

3.今後の注目材料

今後の注目材料を4点お伝えします。

1点目は12月15日(水)のFRB金融政策決定会合です。豪ドルが相対的に売られるか買われるかは、米ドル次第のところもあるので、米国の金融政策には注意が必要です。現在は2022年6月末のテーパリング(金融緩和の縮小)完了スケジュールになっていますが、これが3月末に早まる可能性があります。またその場合には第一回目の利上げが2022年5月になることも想定され、米ドルが買われやすく、豪ドルが売られやすい展開に備える必要があります。

2点目は12月16日(木)の11月オーストラリア雇用統計です。RBA議事録をみても賃金の上昇など雇用環境と金融政策を結び付けていることは明確です。そのため、雇用情勢についても欠かさずに見ていく必要があります。

以降は月末まで大きなイベントはありません。クリスマスに入り、また年末を控え、月末に掛けては閑散とした相場が想定されます。

4.相場の見通し

AUD/USDについては短期的には買い優勢、ただし年末には方向感のない推移を想定します。

12月のRBAを経て豪ドル買戻しが優勢になっていますので、短期的にはついていくのが無難だと思います。ただし米ドルとの対比ではFRBがテーパリングの完了や早期利上げを目指す一方で、RBAはなるべくなら緩和を引き延ばしたい意向が鮮明であり、豪ドルの上昇は長続きしないと考えます。

また年末にかけては市場参加者が減少し、方向感のない相場になっていくことも想定されます。無理せず買いでついていき、キリのよいところで一足早く撤退したい、そんな相場観です。

AUD/JPYについては、ドル円次第のところもありますが、こちらも短期的には底堅い展開を想定しています。ドル円がぐっと下がったところで買えれば短期では負けにくいと思います。

ただし、FRBが早期にテーパリングを完了し利上げに転じる中で、ドル円が素直に買われるかどうかは疑問が残ります。米利上げが新興国売りを誘い、結果としてリスクオフとなり、低金利調達通貨である円が買われる可能性があるからです。

従って豪ドル円も長い目線で買い持ちをすることはないと思います。むしろ来年にかけてのポジションとしては上がったところは売った方がワークするように思います。


本日はここまでとなります。

引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。

戸田裕大


<参考文献・ご留意事項>
Reserve Bank of Australia:Statement by Philip Lowe, Governor: Monetary Policy Decision
https://www.rba.gov.au/media-releases/2021/mr-21-29.html

The Sydney Morning Herald:The race to end the pandemic
https://www.smh.com.au/national/covid-19-global-vaccine-tracker-and-data-centre-20210128-p56xht.html

各種チャート:Investing.com

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若竹コンサルティング 創業者 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本のグローバル企業300社、在中国のグローバル企業450社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は若竹コンサルティング代表として、為替市場調査と為替リスク管理に関するコンサルティング業務を提供する傍ら、為替相場講演会に多数登壇している。著書に「米中金融戦争 香港情勢と通貨覇権争いの行方」。
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