“パウエルFRB.議長の変節。”

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FRB.執行部内で最もハト派的(金融緩和に積極的)と目されていたパウエル議長がどうやら考えを変えたらしい。

パウエル議長は30日、上院銀行委員会の証言の中でオミクロン株については新たなリスクと指摘し、ここ2週間のデータを検討する必要性を示すと同時に、米国経済が堅調でインフレ高進が来年半ばまで持続すると予想される中、12月14日~15日に開催される次回のFOMC.(米連邦公開市場委員会)で大規模な債券買い入れプログラムの縮小加速を検討すべきと述べた。
さらに、インフレの高まりが“一過性”=(Transitory)という表現について、現在の高水準にあるインフレ率を説明する上でもはや正確でないとし、“一過性という文言の使用をやめる適切な時期の可能性がある。”と語り、市場を驚かせた。

議会証言前に配られた事前の証言原稿にはこの様な記述は無く、この突然の変節ぶりは唐突感さえ感じさせたがその布石は11月22日の議長再任後の記者会見に於いて見ることが出来た。
パウエル議長は“インフレ抑制にコミットする。”と話し、それまでの無神経とも言える“インフレは一過性である。”との主張をがらりと変えた。

穿った見方をすると、議長再任の条件として不支持に悩むバイデン大統領からのインフレ抑制に対する強い要望が有ったのかも知れない。

これを受けて今月からのテーパリングの金額が大きく増額される可能性が高まり、株は大きく下げて一時112.54の安値を付けたドル・円相場は113円台に戻すこととなった。

ところがどっこい、11月26日に勃発したオミクロン騒動は未だその全貌が明らかにならず、リスク・オフの流れは続いており金、原油、仮想通貨などのリスク商品が軒並み売られて逆に円とスイス・フランが買われ、安全資産である米国債券が買われて長期債利回りが大きく低下することとなった。

米利上げ期待によるドル上昇とオミクロン騒動による不安からのリスク・オフによる円上昇期待が交錯してドル・円相場は甚だ見通し難い状況となった。

金曜日に発表になった11月の米国雇用統計の数字も混乱に拍車を掛けた。

注目の非農業部門雇用者数は市場予想の+55万人から大きくかけ離れた+21万人に留まったものの、失業率は市場予想の+4.5%を下回る+4.2%となって好悪材料が入り混じる結果となった。
次回のFOMC.に於いて好材料となった失業率を好感してパウエル議長の思惑通りにテーパリングを進めていくのか、或いは悪材料となった雇用者数減少を意識してタカ派的(金融緩和に消極的)な意見が多少収まるのか、非常に気になるところである。

パウエル議長が新たなリスクと指摘したオミクロンに関しても予断を許さない状況が続く。

世界各国で新たな感染者が増加し、その伝搬力は極めて強いものだとは察するが、果たして強毒性なのか、既存のワクチンが効くのかなどが未だ判然としない。
研究機関はその判別に凡そ2週間が必要だと言っていたが、今週末でそろそろ2週間が経つ。

今週も、相変わらずニュースのヘッドラインに踊らさられる時が続きそうである。


何れにせよ、12月に入り市場参加者の減少と共に市場の流動性は減少する。
市場の流動性の減少と共に市場のボラティリティ(変動率)は増加する。

今は大きくリスクを取る時ではないと心得る。


先週も述べたが現状の様にニュースのヘッドラインに踊らさられる状況ではテクニカル分析は余り役に立たない。
個人的にはどちらかと言うと、下サイドへの動きに注意したいと思っている。

因みに先週火曜日の時点で我が国の個人投資家は115円から113円台への下落に向かってドルの買い持ち(約14億ドル相当)を増やしており、シカゴ・IMM.も多少減らしたとは言えネットで約7万9千枚(ドル換算で87億ドル相当)の円の売り持ち(ドルの買い持ち)を保持していることもドルの上昇に懐疑的な理由の一つである。

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