総括
FX「中銀サプライズ人事で市場は動揺、下げを加速」メキシコペソ見通し
(通貨6位、株価8位)
予想レンジ 5.1-5.6
(ポイント)
*サプライズな中銀総裁人事で動揺し下げる。背景にはマイナス成長、高インフレもあるかもしれない
*米中緊張、欧州コロナ感染拡大、トルコリラ暴落でのリスク回避でも弱含む
*消費者物価が7%台へ上昇
*今夜は経常収支3貿易収支の発表
*鉄鋼輸入に関税15%
*中国TPP加盟、特別扱いせず審査
*フィッチは格付けを据え置いた
*フィッチの成長率見通しはそれぞれ5.9%と2.8%。
*自動車産業はパンデミックと半導体不足で不調
*政策金利は0.25%引き上げて5.0%。4会合連続
*中銀は3Qの景気は減速したが、4Qは持ち直すとした
*9月郷里送金、7カ月連続で40億ドルを上回った
*株価は好調
*ペソは年初来高値更新後、反落。対円で5.666がダブルトップ
*資源関連産業を政府が独占 大統領が法案提出
*外需は強いが内需は弱い
(サプライズな中銀総裁人事で動揺し下げる)
ロペスオブラドール大統領が、次期中銀総裁人事でエレラ前財務・公債相に対する指名撤回に伴い、財務副大臣のロドリゲス氏を総裁に起用することを発表した。大統領から6月に次期中銀総裁に指名されていたエレラ氏は、先週に指名を「考え直すことを決めた」と告げられたと明らかにした。サプライズであった。市場では金融政策運営の先行き不透明感が強まり、ペソは下落した。ロドリゲス氏はロペスオブラドール氏のメキシコ市長時代に市政で登用され、その後も同市政で出世してきた人物。しかし、財務省ではこれまで目立った存在ではない。このため、ロドリゲス氏が中銀の独立性を十分に保てないのではないかと懸念されている。一方、大統領は、中銀総裁人事を変更した理由は明らかにしていない。一方でロドリゲス氏については、独立的に行動するだろうと述べ、同氏の政府も中銀の独立性を尊重していると強調した。
大統領は、今回の「変心」がペソに打撃を与えるとの見方について、「これまで中銀の決定において政府、財務省による干渉は一度もなかった。私も決してそんなことはしない」と言い切った。
(中銀総裁人事前からペソは弱含んでいた)
米中緊張、欧州コロナ感染拡大、トルコリラ暴落でのリスク回避で弱含んでいた。メキシコ国内では自動車産業においては月間の自動車生産・販売台数が10年ぶりの低水準に低迷している。全世界に影響が及んでいる半導体不足は、特に北米に大きな打撃を与えており、メキシコはGDPの3%以上を自動車産業に依存しているため極めて大きな影響を受けている。10月の自動車生産が同月としては2011年以来最も少なくなった。
(消費者物価が7%台へ上昇)
11月前半の消費者物価の前年比上昇率は7.05%と、2001年4月以来20年7カ月ぶりの高い伸びになった。10月後半の6.36%から加速し予想の6.87%も上回った。
物価上昇率は、中銀の目標レンジ(3%を中心に上下1ポイント)を上回って推移し続けている。中銀は今月、政策金利を5.0%に引き上げたが、今回の物価上振れを受けて市場では追加利上げ観測が広がりそうだ。
(鉄鋼輸入に関税15% 韓国や台湾を対象)
メキシコ政府は11月23日、鉄鋼製品の輸入に対して15%の関税を導入した。新型コロナウイルスの影響を受けた国内産業の保護を目的とした一時的措置で、2024年までに税率を段階的に引き下げる。環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟する日本は対象外だが、韓国などから輸入する鉄鋼製品を使う日本企業の現地法人などが影響を受ける可能性がある。
USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を結ぶ米国とカナダから輸入する場合は今回の措置の対象外だという。関税の対象国から鉄鋼製品を調達してメキシコで組み立てをしている日本の自動車メーカーなどの負担が増える可能性がある。
(今夜は経常収支、貿易収支発表)
今週は3Q経常収支、10月貿易収支の発表がある。米国からの仕送りで経常黒字が続くか。
10月貿易収支は自動車輸出不振で赤字予想。
テクニカル分析
日足、週足でボリバン下限へ下落
日足、年初来高値5.666のダブルトップから下落しボリバン3σ下限を一時下抜く。ボリバン2σ下限は5.358,3σ下限は5.29。11月24日-25日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。雲下。
週足、10月18日週、25日週と上ヒゲが長く下押しボリバン3σ下限に近づく。3月8日週-10月4日週の上昇ラインを下抜く。11月8日週-15日週の下降ラインが上値抵抗。5.666がダブルトップ。
月足、雲下限で抵抗される。雲下での推移が長い(2016年1月以来)。ボリバン中位は上に抜ける。10月は4か月ぶり陽線も11月はここまで陰線。21年3月-10月の上昇ラインを下抜く。20年2月-21年10月の下降ラインが上値抵抗。
年足、陽転。15年-20年の下降ラインを上抜く。
VAMOS MEXICO
中国TPP加盟、特別扱いせず審査
メキシコ経済省のデラモラ通商担当次官は11月22日、日本経済新聞の取材に応じ、中国が9月に申請した環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟について「特別扱いせず審査する」と述べた。メキシコが中国の加盟を歓迎したという報道については「まだ決めていない」と否定し、慎重に検討する考えを示した。
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