“所詮はレンジか?” 

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先週のドル・円相場は米国長期金利の低下に伴って113.60のサポート(下値支持線)を下切ると、本邦大手通信会社の自社株買いに充当する目的と思われた外株売り=円転のドル売り&円買いの実需弾に押されて、一時安値112.73を示現した。

ところが週央に発表された米国10月の消費者物価指数により、市場の雰囲気は一変した。

指数は対前年比市場の予想値の+5.9%を上回る+6.2%となり前月の+5.2%を大きく上回った。
これは1990年11月以来31年ぶりの大幅な伸びとなり、これを受けてFRB.が予想より早く利上げを行うとの観測が高まって長期10年債利回りは前日の引け値1.439%から1.569%へと大きく上昇した。

それまで連騰を続けていたニューヨーク株式市場の3指数共、金利上昇を嫌気して前日からの下げを引き継いで大きく下げることとなった。

金利上昇(債券価格下落)、株価下落のダブル安の中、ドルは主要通貨に対して上昇し、特に米金利上昇に敏感なドル・円相場は再び114円台を回復することとなった。

クラリダFRB副議長が"利上げを検討するのはまだずっと先だ。政策金利を引き上げる必要条件は2022年末までに満たされる可能性。"と発言し、早期利上げ観測が後退していた矢先での消費者物価指数の大きな上昇に市場は驚きを隠せない。

前日に発表された10月の卸売物価指数も前年比+8.6%と、9月と同様に物価上昇の加速は止まっておらず、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴うサプライチェーン(供給網)の問題が続く中、高インフレが当面続く公算が大きいことが示された形となった。

バイデン大統領の支持率は42%と不支持率48%を大きく下回っているが、不支持者の多くはこの1年で大きく上昇した、ガソリン、ガス、食料品、中古車などの価格に加え、家賃(住居費)などの生活費の上昇に対して大きな不満を抱いており、来年秋の中間選挙を控えてバイデン大統領は"インフレ傾向の改善が私の最優先課題だ。"と発言せざるを得ない状況となっている。

FRB.が大統領の要望に対して忖度する筈も無いのだが、ハト派(金融緩和に積極的)のFRB.幹部に微妙な影響を与える事は否めまい。

さてそのFRB.幹部についてであるが、今週はFRB.関係者(地区連銀総裁を含む。)の発言予定がまさに目白押しとなっている。
火曜日にデーリー・サンフランシスコ連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、水曜日にボスティック・アトランタ連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、ウォラーFRB理事、ボウマンFRB理事、メスター・クリーブランド連銀総裁、木曜日にエバンス・シカゴ連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁そして金曜日にウォラーFRB理事、クラリダFRB副議長の発言が予定されており、正に"これでもか!"と言わんばかりに続く。

バーキン総裁やボスティック総裁といったタカ派な地区連銀総裁だけでなく、今までハト派的か中立と思われていたメンバーから早期利上げに対して積極的な意見が聞かれるようであればドル高に弾みがつくかも知れないが、この1週間を振り返っても"所詮はレンジ。"の感は拭えない。

テクニカル分析に重きを置くとどうしても順張り的な手法に傾き、"下がれば追っ掛けて売り、上がれば追っ掛けて買う。"衝動に駆られるが、ドル・円に関しては慎重に臨みたい。

毎週の様に同じデータの話をして恐縮であるが、逆張りが得意な我が国個人投資家は前週のネット1億ドルの売り持ちから逆転して9億ドルの買い持ちに転じた。

114円台でドルの売り持ちに転じ、113円台のLow.から112円台では再びドルの買い持ちに転じたのである。

お見事と言えようか?

シカゴ・IMM.の数字は11日がベテランズ・デイでニューヨーク市場がお休みだったせいか、発表されず。


今週のテクニカル分析の見立ては、レンジの中間である114円前後ではニュートラル。

113.25を下切ると更なる下落に注意で、逆に114.20を上切ると更なる上昇に要注意。
可能性としては114.20を上切る方が大きいと思われるが、113.25を下切ると112円台のLow.も有り得ようか?

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