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【底堅い豪ドル】背景に過去最高の貿易黒字と70%を超える高いワクチン接種率「なっとく 豪ドル見通し」戸田裕大

なっとく豪ドル見通しタイトル

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、オーストラリアのマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。またオーストラリアと中国の関係、豪ドルと人民元の関係についても折を見て触れていきたいと考えています。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第5回目は「【底堅い豪ドル】背景に過去最高の貿易黒字と70%を超える高いワクチン接種率」です。

目次

1.現在の豪ドル相場の確認
2.RBA(Reserve Bank of Australia:豪州中央銀行)金融政策の振り返り
3.RBA金融政策決定会合の報告書からヒントを得る
4.今後の注目材料
5.相場の見通し

1.現在の豪ドル相場の確認

まずは現在の豪ドル相場を確認していきましょう。

<豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足>
作成時点のAUD/USDレート:0.7470

豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足
豪ドル/日本円(AUD/USD)相場は9月後半まで売り優勢で0.7170前後まで下押しましたが、その後は強烈に買い戻され10月21日には一時0.7550前後まで上昇しました。米ドルが大きく動いていない中で豪ドルが買い戻された理由として、過去最高を記録した2021年8月貿易収支(黒字)や、ワクチン接種の進展が見られたことが挙げられます。

<豪ドル/円(AUD/JPY)チャート、日足>
作成時点のAUD/JPYレート:85.11

豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足
豪ドル/円(AUD/JPY)については9月22日から上昇基調に転じています。丁度ドル/円が大きく上昇を開始したところから、豪ドル/円も一緒に上昇している格好です。ただし9月22日の安値から10月21日前後の高値を結んだ「直近の値上がり幅」は、ドル円5.12%に対して、豪ドル/円は9.45%とより大きく上昇したことが確認できました。

2.RBA(Reserve Bank of Australia:豪州中央銀行)金融政策の振り返り

市場の注目がテーパリングや利上げなど特に米国の金融政策に集まる中で、その比較対象となるRBA金融政策に注目しておくことは重要と考えます。ファンダメンタルズ分析の王道とも呼べる金融政策を一緒にみていきましょう

直近では10月5日にRBA金融政策決定会合が行われました。前回9月7日の変更点はありませんでしたが、念のため現行の制度を以下に記しておきます。

(1) 2021年9月7日に発表のRBA金融政策
・銀行間の翌日物貸出レート10%(短期政策金利)
・2024年4月満期の国債利回りが10%になるよう調整(目先3年までの金利低下を促す、通称「イールド・カーブ・コントロール」)
・少なくとも2022年2月中旬まで週に40億豪ドル、11月中旬まで週に40億豪ドルの国債買い入れを実施(量的緩和の継続)

(2)現行(2021年10月5日に発表された)のRBA金融政策
・変更点なし

3.RBA金融政策決定会合の報告書からヒントを得る

ここではRBA金融政策決定会合の報告書から現在のオーストラリアの景気動向を探っていきます。

RBA:現在の景気拡大の足踏みは一時的で、ワクチン接種率や制限が緩和されることで経済は回復に向かう見込み。

私見:足元のオーストラリアのワクチン接種率は25日時点で一回接種が86.81%、二回接種が73.43%まで上昇しています。オーストラリアが掲げる最初の目標70%を突破したことから今後はさらにさまざまな制限が緩和されていき、つれて経済活動も活発になると想定されます。

RBA:第4四半期は再びプラス成長に戻り、2022年後半にパンデミック以前の経済活動に戻ることを想定。

私見:実際にパンデミック以前の経済活動に戻るのに何カ月かかるのか?そこは不透明だと思います。ここは実際に現地の生活や、私たちの肌感覚と合わせてみていくのが良いと思います。戻りが鈍ければ、それだけ金融緩和の期間も長くなるはずです。

RBA:ロックダウンが労働市場に大きな影響を及ぼしている。

私見:オーストラリアの8月と9月の新規雇用者数増減はそれぞれマイナスに転じており、直近では失業率も悪化しています。雇用環境の悪化はRBAが金融緩和継続は適切と考えている背景の大きな一つとして挙げられるでしょう。

RBA:インフレ圧力は大きくない。賃金と価格の圧力は依然として抑制されていて、インフレ率、賃金上昇率共に1.7%前後で推移している。

RBA:実際のインフレが持続的に2〜3%の目標範囲内に収まるまで、政策金利は引き上げない。想定では、そういった環境に落ち着くのは2024年以降。

私見:RBAの動きを察知するためには賃金の上昇とインフレ圧力をみていくことが重要になります。米国と同様ですが、雇用統計や、物価指数の発表には注目してみていきましょう。

4.今後の注目材料

今後の注目材料ですが、6点お伝えします。

一点目はやはりFEDの金融政策です。豪ドルが相対的に売られるか買われるかは、米ドル次第のところも多分にあるので、米国の金融政策にも注目が必要です。市場参加者の米国の早期利上げ観測は高まっており、現在の中心値は2022年6月のFOMCで一回目の利上げが行われることです。これがさらに早まるのかどうか注目が集まります。

二点目はオーストラリアの物価動向です。10月27日(水)には7-9月期消費者物価指数が、29日(金)には卸売物価指数が発表になります。消費者物価が3%を超えてくるようですと、早期のテーパリング、利上げの期待が高まると思います。

三点目は11月2日(火)のRBA金融政策決定会合です。これは月一のビッグ・イベントですので、AUD(豪ドル)を取引する方は必ず抑えておきましょう。今月も政策の「変更なし」が基本路線になると思いますが、ワクチン接種も進んできているため、政策の変更やその示唆には警戒しておいた方が無難でしょう。

四点目は11月4日(木)オーストラリアの9月貿易収支です。資源高を背景に8月は過去最大の貿易黒字を記録したオーストラリアですが、これが豪ドルの買い材料になったと見る向きもあります。貿易は為替と直結することから貿易黒字は豪ドル高が連想されやすいです。ここは要注意と言えそうです。

<オーストラリアの貿易収支 単位:百万豪ドル>

オーストラリアの貿易収支
五点目は11月11日(木)の10月オーストラリア雇用統計です。新規雇用者数が3カ月連続のマイナスとなるのか、10月はプラスの数字が出てくるのか注目が集まります。

六点目はオーストラリアのコロナワクチン接種の進捗です。現在は二回接種が73.43%ですが、11月初旬には80%を超えると言われています。政府は70%と80%にそれぞれ閾値を設けており、そこを超えればその分の制限を緩和する方針です。ゆえに11月にワクチン接種率が80%に到達、もう一段豪ドルが買われるシナリオは頭の片隅に入れて置くと良いかも知れません。

5.相場の見通し

AUD/USD(豪ドル/米ドル)については、上目線で行きたいと思います。

理由として強い貿易収支、高いワクチン接種の進捗率を挙げたいと思います。また失業率も悪化したとはいえ、既にパンデミック前の水準にありますので、徐々に賃金上昇圧力が高まるものと想定します。

上値の目安としては0.7750、0.8000を挙げておきます。細かいところまでは正直に想定しづらいところも多いので、過去のレジスタンスを参考に目安を定めました。

急速に米ドル高が進む場合には豪ドル安のシナリオもあり得ますが、その場合にも下落は限定的になると考えます。下値メドとして0.7250を挙げます。

AUD/JPY(豪ドル/円)については、ドル/円次第のところが多分にありますが、基本的には底堅い展開を想定しています。

ドル/円に大きめの調整が入るかどうかを見極めていく必要がありますが、84円台の前半は押し目買いの水準として検討出来るでしょう。上値はまずは85.50円、次いで年初来高値の86.27周辺をクリアに抜けてくるか注目です。

本日はここまでとなります。

引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。

戸田裕大

<参考文献・ご留意事項>

Reserve Bank of Australia:Statement by Philip Lowe, Governor: Monetary Policy Decision
https://www.rba.gov.au/media-releases/2021/mr-21-22.html
The Sydney Morning Herald:The race to end the pandemic
https://www.smh.com.au/national/covid-19-global-vaccine-tracker-and-data-centre-20210128-p56xht.html
豪州政府:National Plan to transition Australia's National COVID-19 Response
https://www.australia.gov.au/national-plan

各種チャート:Investing.com

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【インタビュー記事】

戸田裕大氏レポート

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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