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短期的に下押し圧力が強まりそうな豪ドル「なっとく 豪ドル見通し」戸田裕大

なっとく豪ドル見通しタイトル

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、豪州のマクロ経済政策などをもとに、豪ドルの現状や相場見通しについてお伝えしていきます。また豪州と中国の関係、豪ドルと人民元の関係についても折を見て触れていきたいと考えています。豪ドルの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第4回目は「短期的に下押し圧力が強まりそうな豪ドル」です。

目次

1.現在の豪ドル相場の確認
2.RBA(豪中銀)のスタンス
3.今後の注目材料
4.相場の見通し

1.現在の豪ドル相場の確認

まずは現在の豪ドル相場を確認していきましょう。

<豪ドル/米ドル(AUD/USD)チャート、日足>

f:id:gaitamesk:20210928092925p:plain
作成時点のAUD/USDレート:0.7276

AUD/USD相場は8月後半~9月初旬に掛けて買い戻しの動きが優勢でしたが、その後は売り込まれ結局1ヵ月で見れば「行って来い」の展開となりました。具体的には9月1日に発表された4-6月期国内総生産(GDP、前期比)が+0.7%と強く豪ドル買いが強まったのですが、9月7日のRBA(豪州中央銀行)金融政策発表で量的緩和の延長が公表されると再度売り込まれました。

<豪ドル/日本円(AUD/JPY)チャート、日足>

f:id:gaitamesk:20210928092930p:plain
作成時点のAUD/JPYレート:80.53

AUD/JPYについてもAUD/USDと同様に「行って来い」のチャートになっていますが、異なる点は直近の力強い上昇です。恒大集団など中国不動産業界に対する市場の不安が一旦は楽観的になってきたことでAUD/JPYは買い戻されています。なお震源地の人民元(CNH/JPY)はさらに力強く買い戻されています

2.RBA(豪中銀)のスタンス

市場の注目がテーパリングや利上げなど特に米国の金融政策に集まる中で、その比較対象となるRBAのスタンスに注目しておくことは極めて重要です。ファンダメンタルズ分析の王道とも呼べる金融政策の確認、豪ドル・レポートではRBAの金融政策スタンスをしっかりとウォッチしていきます。

直近では9月7日に金融政策決定会合が行われました。前回8月3日と、比較すると以下のようになります。

2021年8月3日に発表のRBA金融政策

  • ・銀行間の翌日物貸出レート0.10%(短期政策金利)
  • ・024年4月満期の国債利回りが0.10%になるよう調整(目先3年までの金利低下を促す、通称「イールド・カーブ・コントロール」)
  • ・少なくとも2021年9月初旬まで週に50億豪ドル、11月中旬まで週に40億豪ドルの国債買い入れを実施(量的緩和の継続)

現行(2021年9月7日に発表された)のRBA金融政策

  • ・少なくとも2022年2月中旬まで週に40億豪ドルの国債買い入れを実施(量的緩和の延長
  • ・その他、変更点なし

量的緩和が来年の2月中旬まで延長になったのが変更点です。

ポイントは、豪州は米国よりも長く量的緩和を続ける可能性が高まっていることです。米国はおそらく11月にテーパリングを開始し、順調なら来年の中旬にテーパリングを完了します。

諸条件が同じであれば、基軸通貨である米ドルの方が資産保管として好まれやすいと考えます。従って豪ドルを積極的に買っていく動きにはなりにくいはずです。

③ 直近の報告書より戸田が抜粋 RBAは9月21日に9月7日金融政策決定会合の議事録を公表しました。議事録の内容のうちポイントをいくつか解説します。


<RBAの見通し>
世界経済について、全体に回復のペースはスローダウンしているが多くの先進国では年内にパンデミック前の経済活動の水準に戻ると見込まれる。一方で物価高の影響はサプライチェーンの破壊に伴い当初想定より長引きそうだ。

中国経済については政策の変更に伴い不確実性が高まっている。想定よりも経済指標が弱く、さらなる金融政策の緩和が見込まれる。特に不動産セクターの規制改革に伴い、消費者の需要は制限され、一部の大手不動産(おそらく恒大集団を念頭)に流動性危機が訪れている。これらが金融市場全体のリスクになり得る。

国内景気については新型コロナウイルスの影響で回復がやや遅れている。第3四半期はマイナス成長を見込み、失業率の増加が見込まれる。不確実性は高いが中銀のメインシナリオでは第4四半期からはプラス成長を見込み、2022年の下半期にはパンデミック前の経済活動を上回る見込み。

まとめると、新型コロナウイルスの影響や中国の景気悪化を受けて、景気回復のシナリオを前回よりも引き下げています。このあたりが豪ドルの上値の重さとも関係があるように思います

3.今後の注目材料

今後の注目材料ですが、3点お伝えします。

一点目がFEDの金融政策です。豪ドルが相対的に売られるか買われるかは、米ドル次第のところも多分にあるので、やはり米国の金融政策には注目が必要です。米国はインフレ圧力が高まり早期のテーパリング完了や利上げを余儀なくされる可能性が高いです。このシナリオの場合は豪ドルの上値は重くなると思います。

二点目は10月5日(火)のRBA金融政策決定会合です。これは月一のビッグ・イベントですので、AUDを取引する方は必ず抑えておきましょう。政策の「変更なし」が基本路線になると思います。中国経済との関係が深い豪州ですから、恒大集団など中国不景気の影響がどこまで豪州経済に波及しているのか、この辺りが注目点と思います。

三点目は新型コロナウイルスのワクチン接種率です。豪州のモリソン首相はワクチン接種率70%~80%を目安にウィズ・コロナ態勢に意向したい考えを示しています。The Sydney Morning Herald紙(豪州で最も読まれている日刊紙)によれば現在の想定では10月後半に70%、11月初旬に80%のワクチン接種率を見込んでいます。となると10月の後半くらいから豪ドルに楽観的な雰囲気が出てくるのかも知れません

4.相場の見通し

AUD/USDについては、中国の恒大集団の着地(ソフト or ハード)にも依ると思うのですが、短期的には引き続き下方向を見ています。大きなチャートポイントである0.70をワンタッチ目指してじり安の展開になっていくことをメインシナリオに据えます。

一方で0.70辺りでは達成感も出やすく、また時期的に豪州のワクチン接種がすすみwithコロナ体制へと歩を進める見込みです。従って下を追う場合は、深追いは禁物と言えそうです。

AUD/JPYについては、ドル円が上に抜けてきた感があり、しばらくは安定して推移すると思います。週をまたぐようなポジションの取り方をするのであれば、押し目買い方針で良いと思います。ただし他にもっと上を目指す通貨もあると思いますので、クロス円を買い持ちするのであれば、他通貨(例えば人民元)でも良いと思います。逆にドル円が下を試すのであれば、AUD/JPYで売っていくのが良いでしょう。


本日はここまでとなります。

引き続き、みなさんのお役に立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。

戸田裕大 <参考文献・ご留意事項>
Reserve Bank of Australia:Minutes of the Monetary Policy Meeting of the Reserve Bank Board
https://www.rba.gov.au/monetary-policy/rba-board-minutes/2021/2021-09-07.html

The Sydney Morning Herald:The race to end the pandemic
https://www.smh.com.au/national/covid-19-global-vaccine-tracker-and-data-centre-20210128-p56xht.html

各種チャート:Investing.comより筆者が加工して添付

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大氏
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、 日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は法人向けにトレジャリー業務(為替・金利・資金)に関するサービスを提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022 年)。
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