先週の金融市場はリスク・オフからリスク・オンへの大転換が起き、大波乱の展開となった。
リスク・オフの引き金となったのは先週のレポートでも指摘した中国不動産大手の恒大集団の債務問題であった。
東京市場が敬老の日で休場の中、 先週月曜日の欧米市場ではドイツDax.が-2.4%、ロンドンFT.が-0.9%、ニューヨーク株式市場でも3指数共大きく下げてダウは-1.8%、ナスダックは-2.2%、S&P.は-1.7%の下落を演じた。
当然市場はリスク・オフの動きとなって債券は買われて米国長期金利も大きく下げ、10年債利回りは一時1.2%台へ下落した。
連休明けの東京株式市場でも下げの連鎖は続き、日経平均は3万円の大台を割り込んで29,840円で火曜日の取引を終えた。戦略を諦めるには未だ早いのかなと感じている。
リスク・オフ時の常で為替市場ではドルと円が買われ、ドル・円相場は前週の安値109.11に迫る109.13を示現し、ついに永らく続いた109円~111円のレンジの下サイドを切るかと思われたが、23日に終了したFOMC.をきっかけにリスク・オンへと市場のセンチメントは激変した。
別に恒大集団の債務問題が解決した訳ではない。
寧ろ聞くところによると23日に期日が来た社債の利払いが行われなかったらしい。
30日以内に利払いが履行されなければデフォルト(債務不履行)となって恒大集団は破綻してしまうのではないのかと思ったのだが、市場は落ち着きを取り戻しつつあるかの様である。
矢張り恒大集団は“Too big to fail.”=(大き過ぎて潰せない。)で中国政府としても放っておけないことを市場は察知しているのか?
その後、“中国政府は恒大集団に短期的なドル建て債のデフォルトを避けるように指示した。”とか、“中国政府は地方政府に恒大集団の経営破綻に備えるように指示した。”とか、相反するニュースが飛び交う。
どうも中国絡みの話はよく分からないが、個人的にはこのまますんなり解決するとはとても思えないのだが..
注目のFOMC.では市場の予想通りに政策金利は据え置かれ、声明で“予想通りに進展が続いた場合、テーパリング(資産買い入れペースの減速)が近く正当化される可能性が有ると判断する。”とし、パウエルFRB.議長はFOMC.後の記者会見でより具体的に“早ければ次回のFOMC.でテーパリングの開始の発表の可能性が有り、テーパリングは2022年の半ばまでに完了する可能性が有る。”と述べて、市場は今回のFOMC.を以前よりもタカ派的(金融緩和に消極的)と捉えた。
債券は売られ、長期金利は上昇して10年債利回りは週初から終値ベースで0.14%上昇して1.452%で週を終えた。
不思議なのは金利上昇にも拘わらずニューヨーク株式市場は堅調に推移し、3指数とも週初の恒大集団の債務問題で下げた分を取り戻して週間ベースで4週ぶりの上げで週を終えた。
株高でリスク・オンとなれば、リスク・オフの流れの逆となり債券は売られ(金利は上昇)、為替市場ではドルと円が売られる。
その他通貨に対してのドル売りは限られたものであったが、全ての通貨に対しての円売りは進み、米国金利の上昇と相まってドル・円相場はあれよあれよと言う間に値を戻し、金曜日には高値110.79を示現した。
22日(水)に付けた109.13から24日(金)に付けた110.79までの三日間でこの3ヶ月のレンジの凡その安値と高値の両方を消化することとなった。
先週のレポートで、“そもそも3ヶ月以上もこれだけ狭いレンジ内での取引が続くと、何方かに噴き上がる様なマグマが溜まっていても不思議ではない。”と指摘し、先週前半のリスク・オフの場面では、“もしかして109円を下切るかな?”と思ったが、週後半のリスク・オン場面では“あれ、もしかして逆に111円を上切るかな?”とも思えなくもない。
勝手なものである。
今週は自民党総裁選が行われるが、誰が当選して次の内閣総理大臣になるのかは全く分からない。
投げやりな言い方で恐縮であるが、“誰がなっても大勢には影響あるまい。”である。
何となく、恒大集団の債務問題が燻っている間は株価が大きく上昇するとも思えず、菅首相退陣を機に盛り上がった“新しい政策期待”が剝げ落ちて日経平均株価の調整が起きれば再びリスク・オフとなって円高となる可能性も有ろうか?
テクニカル分析の見立てから言うとドル買い推奨なのだが、あれだけ続いた“110円台では買うな、売れ。109円台では売るな、買え。”の戦略を諦めるには未だ早いのかなと感じてている。