“リスクとしては下サイドに注意か?”

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注目の8月の米国雇用データが発表され、非農業部門雇用者数が前月比+23万5千人と市場予想の+75万人を大きく下回った。

デルタ変異株の感染拡大で新規感染者数が増える中、サービス部門で雇用が手控えられている事が原因であろうが、前月の7月分の非農業部門雇用者数は速報値の+94万3千人から+105万3千人へ上方修正され、また失業率も5.4%から5.2%に改善し、時間当たりの賃金の伸びも前月比+0.6%(市場の予想値は+0.3%)、前年比+4.3%(市場予想値は+4.0%)となって、“雇用者数の伸びは減ったが、雇用の中身は改善した。”という事か?

雇用統計発表直後ドル・円相場は109.60まで急落したが米長期金利の上昇と共に底堅く推移し(と言っても110円を超える様な大きく値を上げる程の力は無かったが..)109.70で週を終えた。

この“予想外に悪かった” 非農業部門雇用者数の増加により年内のテーパリングを危ぶむ声が聞かれだしたが、新型コロナウイルス経済対策の一環として実施されている週300ドルの失業給付上乗せ措置を巡り、全米50州の半数に当たる25州が9月期限前の打ち切りを発表しており、9月以降雇用者数が劇的に増加する可能性も有るのではなかろうか?

何れにせよパウエルFRB.議長は“テーパリングと利上げは全く別物である。”と明言しており、テーパリング開始のタイミングのずれが大元のアメリカの金融政策の根幹に影響を与えることは有るまい。


ところで金曜日に唐突に発表された菅首相の退陣表明には驚かされた。

内閣不支持率が支持率を上回り、このまま行くと秋の衆議院選挙では自民党は苦戦するだろうと思っていたが、菅首相は前日まで抱いていた再選意欲を収めてついに自らが退陣を選んだ。

政局の不安定は株価と通貨の下落を招くのが普通だが、金曜日の日経平均株価は終値で584円高を演じ、週明けの月曜日も午後3時半現在約530円高の29,650円近辺で取引され、3万円の大台回復も視野に入ってきた。

ドル・円相場の週明けの動きは同じく午後3時半現在で安値109.72、高値109.84の狭いレンジ内に留まっており、全く動意が見られない。

株価上昇の背景には現状のコロナ対策を含めた菅政権への“頼り無さ、不甲斐無さ。”からの脱却への期待が大きいのか、菅首相の退陣表明以降初めての読売新聞の世論調査では自民党支持率が4ポイント、衆議院比例代表で自民党に投じるとの比率も5ポイント上昇した。

現在総裁候補には岸田前政調会長が出馬の名乗りを上げ、河野規制改革担当相、石破元幹事長、高市前総務相、野田聖子幹事長代行、下村政調会長の6人が出馬の意欲を見せているが、現時点では誰が一番の本命なのかよく分からない。

先週までの総裁選の行方、衆議院選挙での与党敗退の可能性に対する危惧が後退し、株安による円高リスクは後退したと言えるかも知れないが、未だ予断は許さない。

気になるのはバイデン大統領の支持率低下である。
此方も不支持率が支持率を逆転して上回り、来年の中間選挙を控えて与党民主党には緊張感が走る。
伝統的に中間選挙では与党に厳しい結果となる事が多く、我が国同様にコロナ対策への不満が高まるとアフガン政策失敗の批判と共にバイデン政権への更なる不支持率増加に繋がる恐れも有ろう。
結果は株安とドル安ではなかろうか?

久々に我が国個人投資家とシカゴ・IMM.のポジションを見てみると、前者はドル・円相場の動きにつれて上手く売買を繰り返し、現状は約15億ドルの買い持ちと比較的穏やかなポジションを保持している。

後者は依然としてネットで円の6万3千枚の売り持ち(ネットでドルの約72億ドルの買い持ち)を保持しており、現在のレンジの下限である109円を切る様であれば円の買い戻し(ドルの売り戻し)に走る可能性は否定出来ない。


依然としてレンジ取引を意識しながら、下サイドへのレンジ・ブレークには留意したい。

テクニカル分析の見立てはこの膠着相場では変わらずで、戦略は先週と同じ。
109.30を下切れば更なる下落に注意、割合近いが110.10を上切れば更なる上昇に注意と思われるが、依然として109円~111円のレンジ内に留まろう。

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