厳格な空港での検査や、国内での厳しいロック・ダウンなどを実施してコロナ対策では最も成功していると言われたニュージーランドで先週新たな感染者が1人発見され、すかさずロック・ダウンを実施したにも拘わらず週末には21人の新感染者が見付かったらしい。
ニュージーランド政府によると少なくとも50~120人の潜在的な感染者が居ると判断しており、アーダーン首相はデルタ変異株を“Game changer. ”=(大きな影響を与える革新的な物)と呼んで、厳重な警戒を呼び掛けた。
我が国でも連日各都道府県で過去最大の感染者数の発表が相次ぐが、アメリカ、欧州、そして最もワクチン接種率が高くて安全だと言われていたイスラエルでさえデルタ変異株が猛威を振るい、夏前に描いていたアフター・コロナのシナリオ訂正の必要性が増して来た感が有る。
世界中でデルタ変異株を“Game changer. ”として認識すべき時が来ているのかも知れない。
アメリカでは先々週にミシガン大学が発表した8月の消費者信頼感指数が2011年以来10年ぶりの低水準に落ち込んで、一般消費者の購買意欲の低さを露呈して市場を驚かせたが、これは間違いなくデルタ株による最近の新感染者数の増加と非常に強い関係性があることは間違いあるまい。
私事で恐縮であるが、9月の終わりにシカゴに行く予定が有る。
もう20年以上も続いているのだが、アメリカ人7人に塾長を加えた8人で秋にアメリカの名門ゴルフ・コースを巡るイベントが有る。
昨年はコロナの影響で中止となったが、この春に幹事である大手米銀の元会長から“どうやらコロナが収まってきたから今年はやろう!”との声掛けが有り、今年はシカゴ近郊の3名門コースを回ることが決まった。
シカゴが在るイリノイ州は西海岸のカリフォルニアなどと違って割合コロナ・ウィルスの感染者数が少なく、目立った制限は無かったのだがデルタ株の猛威によりニューヨークやサンフランシスコ程ではないが、最近はレストランなどでマスク着用義務などの制限が始まったらしい。
先週その幹事からメールが来て、“現状では開催する積りではあるが、もしかしたら今年の催しもキャンセルせざるを得ないかも知れない。あと数週間様子を見ることにしよう。”との提案が有った。
春の楽観予想は吹き飛び、現在は約半年も掛けて練ったプランをキャンセルせざるを得ない程状況は変わった。
これを一例とすると、間違いなく全米レベルでは活動の低迷、消費の減退がより顕著な筈である。
好調な雇用状況と高いインフレ率により、FRB.による思ったよりも早い金融緩和政策からの脱却への期待が高まっていたが、その期待に対して多少のブレーキが掛かるかも知れない。
先週発表された前回FOMC.議事録によるとメンバーの多くが年内のテーパリングに対して前向きな姿勢を示したが、このFOMC.時点ではミシガン大学が発表した消費者信頼感指数が示す様な、急速に悪化した消費者マインドは反映されていない。
先週発表された8月ニューヨーク連銀製造業景気指数、7月の米国小売売上高、住宅着工件数なども市場予想を大幅に下回り、辛うじて好調な雇用状況を反映した新規失業保険申請者数は多少減少したものの、夏以降のアメリカ経済に対しての不安は残る。
今週はコロナの影響で3日から1日に短縮されたワイオミング州、ジャクソン・ホールでのカンサス連銀主催の金融シンポジュームが開かれ、市場は早くからパウエルFRB議長からテーパリングを含めた何らかの金融政策に関する発言が出ることを期待していたが、上で述べた急速に悪化しつつあるアメリカの経済状況を見ると現状維持のハト派的(金融緩和に積極的)な発言しか聞かれないかも知れない。
実は先週金曜日にFRB.内で最もタカ派的(金融緩和に消極的)と言われているカプラン・ダラス連銀総裁が、“もしデルタ株の感染が広がり経済の進展に支障をきたす様であれば、見解の修正に柔軟に対応するつもりだ。”と述べて、市場を驚かせた。
ニューヨーク株式市場の3指数は月曜日にダウとS&P.が最高値を更新した後3日連続で下落したがカプラン発言を好感して金曜日には大幅高で引けた。
コロナ・ウィルスの状況悪化であたふたする為替市場とは裏腹に何事も無かったかの様に堅調に推移する株式市場に驚くばかりである。
話は変わるが、週末に塾長が住む横浜市で市長選挙が行われ、野党が推薦する候補が自民・公明の与党が推す候補を抑えて初当選した。
支持率が史上最低に低迷する菅政権には大きな痛手で、週明けの東京株式市場では金曜日に約268円安で引けた日経平均株価は更に下げるかと思いきや、約500円の上げで午前を終えた。
タリバンが主権を握ったアフガニスタンの首都カブールにはアメリカ人が未だ1万5千人も滞在しており、彼らを残して米軍を撤退させたバイデン大統領に大きな批判が上がっている。
米軍撤退は同盟国であるイギリス、フランス、ドイツとの協議無しで行われ、外交上の失策を糾弾する動きも有る。
これらを嫌気してダウは下げるかと思いきや、週明けのダウ先物CME.は約140ポイントの上げ。
株式市場の考え、思惑は塾長には全く理解出来ない..
ドル・円相場は相変わらず110円を挟んだレンジ取引が続いているが、今週もジャクソン・ホールでのシンポジュームを控えて大きな動きは望めまい。
今週のテクニカル分析の見立ては矢張りレンジ。
109.30を下切れば更なる下落に注意、割合近いが110.10を上切れば更なる上昇に注意と思われるが、所詮は109円~111円のレンジ内。
下値での追っ掛け売りや、上値での追っ掛け買いは慎みたい。