先週のドル・円相場は米国の経済指標結果の良し悪しに一喜一憂する、神経質な動きを見せた。
週初は前週に発表された“100点満点。”の7月の米国雇用統計を反映して長期金利、株価、そしてドル・円相場の何れも上昇し、10年債利回りは終値ベースで1.36%、ニューヨーク株式市場の3指数の内ダウとS&P.は連日最高値を更新した。
長期金利が上がれば、ドル・円もつれ高になるのは常で一時110.79の高値を示現し111円台のトライも有り得るかとも思われたが、週央に発表された7月の米国消費者物価指数辺りから市場の雰囲気に変化が見られ始めた。
(此処まではドル高)
7月の米国消費者物価指数(CPI.)は前年同月比5.4%上昇と、コロナ禍が引き起こした供給網の混乱が続く中、13年ぶりの高水準にとどまったが、前月比では0.5%上昇と、6月の0.9%上昇から鈍化し、インフレがピークを付けた兆候が見られたと解釈されて長期金利は低下した。
食品とエネルギーを除くコア指数も前年比4.3%上昇、前月比0.3%上昇となり、こちらも6月の0.9%上昇から大きく鈍化して短期的な基調をみるうえで重視される前月比で前月から大きく低下し、過度なインフレ懸念が和らぎ、週初の好調な雇用統計の結果によって盛り上がった早期利上げ期待機運は後退した。
(此処からドル安。)
ところが翌日発表になった7月の卸売物価指数(PPI.)は市場予想の7.3%を上回る前年比7.8%上昇、この伸びは比較可能な2010年11月以降で最大となった。
前月比でも1.0%上昇し、消費者物価の前月比での鈍い伸びで一旦収まったインフレ懸念が再び広がり、タカ派(金融緩和に消極的)を勢い付けることとなった。
(再びドル高となったが、ドル・円の高値は110.54で抑えられた。)
そして金曜日に米ミシガン大学が発表した8月の消費者信頼感指数(速報値)は70.2と、2011年以来、約10年ぶりの低水準となった。
7月の確報値である81.2から大幅に低下し、ここ50年で3番目に大きな落ち込みとなり、たった一日で今度はハト派(金融緩和に積極的)を勢い付けて金融緩和早期縮小への思惑が後退し、ドル売りが優勢となってドル・円相場は安値109.55までドル安&円高が進んだ。
(再びドル安。)
以前はミシガン大学が発表する消費者信頼感指数に対して市場がこんなに敏感に反応したことを見たことが無いが、この要因として米国の雇用環境は著しく改善を見せてはいるが、新型コロナ・ウィルスのデルタ株による感染拡大やインフレ高騰への懸念が高まったことにより先行きの消費者マインドが慎重であることを表しているのであろう。
先週もFRB.高官から早期テーパリング開始を仄めかすタカ派的な発言が相次いだが、先週見られたまちまちの経済指標を受けて彼ら(ハト派、タカ派共に)がどう反応するかが注目される。
今週は18日に7月FOMC議事要旨が発表される。
議事要旨ではテーパリングに関わる議論の詳細(開始の条件、時期、手法など)がFOMC.でどの様に議論されたかが明らかになると思われる。
またその後来週のジャクソンホール会合を前にパウエルFRB.の記者会見が予定されており、“最もハト派。”であるパウエル議長がどの様な発言をするかが注目される。
先週は上述した様に米国発のミクロの経済指標に翻弄されたが、結局は週を通しては高値110.79、安値109.55の大きな109円~111円のレンジの中。
週明けの東京市場では日経平均株値が一時500円以上下げてドル・円相場も安値109.33までドル安&円高が進んだが、今週はレンジの下サイドである109円を下切れるか否かが注目される。
テクニカル分析の見立ては毎週様変わりで、今週は下サイドのブレークに警戒の様である。多くのテクニカル分析が順張りを得意としているので、相場が上がれば上を警戒し、逆に下がれば下を警戒するのは当然か?
ドル・円相場は午後2時現在109.40近辺で取引されているが、ニューヨーク市場の終値で109.50を下切っていれば108.80までの下落の可能性が有りと思われるが、当面は109円~111円のレンジはキープされると思っており、下値での突っ込み売りは避けたい。