【外為総研 House View】
目次
▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 7月の推移
・7月の各市場
・7月のポンド/円ポジション動向
・8月の英国注目イベント
・ポンド/円 8月の見通し
▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 7月の推移
・7月の各市場
・7月の豪ドル/円ポジション動向
・8月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 8月の見通し
ポンド/円
ポンド/円の基調と予想レンジ
ポンド/円 7月の推移
7月のポンド/円相場は148.451~154.068円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.8%下落(ポンド安・円高)した。世界的に新型コロナウイルス変異株「デルタ」の感染が拡大する中、上旬はポンド売りが優勢となった。
英イングランドのロックダウン(都市封鎖)解除への期待で強含む場面もあったが、英国内でのコロナ感染者も増加基調をたどる中で、景気の先行きに対する不透明感が重しとなり20日には148.45円前後まで下落した。
しかし、その後は英国の新型コロナ・変異株の新規感染者数がピークアウト。7日平均の感染者の伸びが鈍化した事なども好感され、ポンドは月末にかけて持ち直しの動きとなった。
出所:外為どっとコム
9日
英5月鉱工業生産は前月比+0.8%と市場予想(+1.4%)を下回った。なお、4月分は前月比-1.3%から-1.0%に修正された。その後に発表された英5月貿易収支は84.81億ポンドの赤字であった(予想110.50億ポンドの赤字)。
12日
英政府は、イングランドで実施している新型コロナウイルス感染拡大抑制措置の大部分を、計画通りに19日に解除すると発表。英国ではデルタ変異株の感染者が足元で急増しているが、ワクチン接種の進展によって重症患者数や死者数は減少している。こうした中、夏季休暇シーズンを前にロックダウン(都市封鎖)の全面的な解除に踏み切った。
14日
英6月消費者物価指数は前月比+0.5%、前年比+2.5%と予想(+0.2%、+2.2%)を上回る伸びとなった。一方、英6月生産者物価指数は前月比+0.4%、前年比+4.3%と予想(+0.6%、+4.8%)ほどの高い伸びとはならなかった。
15日
英6月失業率は5.8%、英6月失業保険申請件数は11.48万件減(前回6.0%、予想15.14万件減)、英3-5月ILO失業率は4.8%(前回4.7%、予想4.7%)、英3-5月週平均賃金は前年比+7.3%(前回+5.7%、予想+7.1%)であった。
その後、英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)メンバーであるソーンダース委員は、景気回復に伴うインフレ加速を抑えるため、「1-2カ月のうちに」金融刺激策の縮小を検討する必要があるとの見解を示した。これを受けてポンドは一時買いが強まったが、欧米株安や原油安を受けてリスク回避の動きに傾くとポンドは下落した。
19日
英国はこの日から、イングランドのロックダウン(都市封鎖)など新型コロナウイルス対策の行動規制についてほぼ全面的に解除。屋内交流の人数制限が撤廃され、マスク着用が強制から任意となった。他者との社会的距離も不要となった他、結婚式などでの人数の上限がなくなり、自宅勤務の推奨も停止。ナイトクラブも営業再開が許可される事になった。
ただ、前週末17日には、ジャビド英保健相が新型コロナウイルスの検査で陽性となった上に、ジョンソン英首相が濃厚接触者として自主隔離に入る事が明らかになった。
23日
英7月製造業PMI・速報値は60.4、同サービス業PMI・速報値は57.8と、いずれも予想(62.4、62.0)に届かなかった。なお、これより前に発表された英6月小売売上高は前月比+0.5%だった(予想-0.1%)。
27日
国際通貨基金(IMF)は世界経済見通しを公表。世界全体の2021年成長見通しを4月時点の6.0%で据え置いた一方、英国の2021年成長率見通しは4月時点の5.3%から7.0%へと引き上げた。
7月の各市場
7月のポンド/円ポジション動向
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8月の英国注目イベント
ポンド/円 8月の見通し
英国は7月19日に経済活動をほぼ全面的に再開。その後、一時新型コロナ・デルタ変異株の感染者が急増したものの、重症者や死者はワクチン効果などで抑えられており、足元では新規感染者数も鈍化している。
いち早く「ウィズ・コロナ」に舵を切った英国のコロナ政策は成功したと受け止められている。感染状況に急変がなければ、7月後半の流れを引き継いで、景気回復期待のポンド買いが入りやすい地合いが続きそうだ。
なお、8月5日の英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)にも注目が集まるだろう。政策金利(0.10%)や資産買い入れプログラムの規模(国債8750億ポンド+社債200億ポンド)は据え置きの公算が大きいが、資産買い入れプログラムの維持に反対を表明するMPC委員が複数に上る可能性がある。
これまで反対票を投じていたホールデン委員が6月に退任。残る8人のMPC委員のうち、足元ではラムスデン副総裁とソーンダース委員が早期の金融政策正常化に前向きな発言をしている。仮に、資産買い入れプログラム維持に対する反対が2票以上となれば、緩和縮小観測が強まり、ポンド相場を支える事になろう。
(予想レンジ:149.000-155.000円)
豪ドル/円
豪ドル/円の基調と予想レンジ
豪ドル/円 7月の推移
7月の豪ドル/円相場は79.837~84.189円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.3%下落(豪ドル安・円高)した。
豪中銀(RBA)が資産買い入れを縮小した6日には一時84.19円前後まで豪ドル高に振れたが、新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大による世界景気の先行き不安が広がった事や、ロウRBA総裁が市場の早期利上げ観測をけん制した事などから下落に転じた。
中国景気の減速懸念も相まって株安・資源安のリスク回避の流れが強まった20日には、約5カ月半ぶりに一時80円台を割り込み79.84円前後まで下値を拡大した。
その後は欧米株の持ち直しなどでリスク回避ムードが後退する中、81円台半ばへと反発したが、新型コロナ感染拡大に伴う最大都市シドニーのロックダウン(都市封鎖)延長などが重しとなり伸び悩んだ。
出所:外為どっとコム
1日
豪5月貿易収支は96.81億豪ドルの黒字となり、黒字額は市場予想(105.00億豪ドル)に届かなかった。中国6月財新製造業PMIは51.3と予想(51.9)を下回った。
5日
豪5月住宅建設許可件数は前月比-7.1%と市場予想(-5.0%)を下回った。一方、豪5月小売売上高は前月比+0.4%と予想(+0.1%)を上回った。なお、その後に発表された中国6月財新サービス業PMIは50.3と、予想(54.9)を下回った。
6日
RBAは予想通りに政策金利と3年国債の利回り誘導目標をいずれも0.10%に据え置いた。注目が集まったイールドカーブ・コントロール(YCC)の対象も現行の2024年4月償還債で維持し、緩和延長を示唆する2024年11月償還債への変更は見送った。また、9月で終了する資産買い入れプログラムについては、少なくとも11月中旬まで延長するとした一方、買い入れ額を週40億豪ドルペースに減額(現行週50億豪ドル)した。豪ドルは出尽くし売りで下落する場面もあったが、売り一巡後は緩和縮小を改めて消化する形で上昇した。
その後、ロウRBA総裁は「2024年までの利上げは見込まない」としながらも、「利上げはデータ次第で、日程ではない」などと発言。市場は、総裁が早期利上げを否定しなかったと受け止めた模様で、豪長期金利の上昇とともに豪ドル買いが加速した。しかし、独7月ZEW景況感調査と米6月ISM非製造業景況指数がいずれも悪化した事で欧米株が下落するとリスク回避の豪ドル売り・円買いへと流れが反転した。
8日
ロウRBA総裁は「持続的な2-3%のインフレには2024年までかかると予想」などと述べて、利上げの条件が整うのはまだ先になるとの見方を改めて表明。市場が、早ければ来年10月の利上げを見込んでいるのはなぜか、との問いに対し「市場はRBAの対応機能を適切に理解していない」と述べた。
15日
豪6月雇用統計は、失業率が4.9%に低下(前回5.1%、予想5.1%)し、新規雇用者数は前月比2.91万人増加した(前回11.52万人増、予想2.00万人増)。その後、中国で一連の経済指標が発表されたが、豪ドルはいずれも大きな反応は示さなかった。なお、中国の4-6月期国内総生産(GDP)は前年比+7.9%(予想+8.0%)、6月鉱工業生産は前年比+8.3%(予想+7.9%)、6月小売売上高は前年比+12.1%(予想10.8%)であった。
20日
RBAは6日の理事会の議事録を公表。「労働市場をはじめとする経済情勢の進展は理事会の予想を著しく上回った」と強調。その結果、債券買い入れを9月以降、現行の週50億豪ドルから40億豪ドルに縮小すると決定した事がわかった。一方で、「利上げの条件が整うのは2024年以降になる」と、改めて早期利上げには否定的な見解を示した。
27日
中国当局によるIT関連企業や教育関連企業への規制強化の動きを受けて、上海市場などで株価が続落。中国人民元も対ドルで下げ幅を拡大する中、豪ドルにも下落圧力がかかった。
28日
豪4-6月期消費者物価指数は前年比+3.8%(予想+3.7%、前回+1.1%)に加速した。ただ、RBAが重視する基調インフレは1.65%と予想通りで、RBAのインフレ目標である2~3%を下回ったままであった。
29日上海株や香港株が大幅に反発して取引を終了。中国人民元も対ドルで反発した。前日夜に中国当局が大手投資銀行の幹部に向けて、民間教育産業に対する規制強化は「的を絞ったもの」だと説明し、市場の不安払拭に動いた事が好感された。
7月の各市場
7月の豪ドル/円ポジション動向
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8月の豪州・中国注目イベント
豪ドル/円 8月の見通し
豪中銀(RBA)は8月3日の理事会で、金融政策の現状維持を決めた。一部で取り沙汰されていた資産買い入れプログラムの減額(9月以降、週50億豪ドルから40億豪ドルに減額する予定)取り止めは見送った。減額取り止め観測が豪ドルの上値を抑えていた面もあっただけに、8月の豪ドル/円相場はいくぶん上値余地が広がったと考えられる。
ただ、RBAは「資産買い入れプログラムに対する柔軟なアプローチを維持する」との見解も示しており、今後仮に豪州の新型コロナウイルスの感染状況がさらに悪化するようだと、減額取り止めもしくは増額に動く可能性もある。豪ドル相場の新型コロナ・デルタ変異株の感染状況に左右されやすい地合いも続きそうだ。
また、中国経済の情勢も気になるところだろう。コロナ禍からの世界経済の回復をリードしてきた中国では、足元で回復が鈍化している印象が強い。8月2日に発表された同国の7月財新製造業PMIは50.3と2カ月連続で低下し、分岐点の50.0に接近した。16日に発表される中国7月鉱工業生産や小売売上高の結果にも注目が集まりそうだ。
米長期金利の低下などで市場のリスク回避ムードが後退しているだけに、豪ドルの下値は限られると見るが、豪州の新型コロナ感染状況の改善や、中国景気の先行き不透明感の後退がなければ上値も限定的だろう。
(予想レンジ:78.500-83.000円)
神田卓也
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