こんにちは、戸田です。
本シリーズでは、「負けないFXトレーダーを育てる」をコンセプトに、過去に為替ディーラーとして様々な失敗を経験してきた私が、どういった工夫をして少しずつ上達していったのか体験談をお伝えしていきます。新人ディーラー(新人の個人投資家)にありがちな落とし穴と、その対策などを通じて、読者のみなさまの実力UPの参考にして頂きたいと考えています。
第5回目は「ドル円を好んで取引する凄腕ディーラーたち」です。
早速みていきましょう。
目次
1.色々な通貨ペアを取引する心理状況
2.凄腕ディーラーがドル円に立ち返る理由
3.終わりに
1.色々な通貨ペアを取引する心理状況
為替トレーディングの世界は楽しくも厳しい世界です。どんなに大きく勝っていても油断をしてしまったり気がゆるんでしまったりすると負けてしまい、これまで積み上げてきたものがもろくも崩れ去っていくことがあります。
そんな時に、ふと色々な通貨ペアに答えを求めて手を出してしまうこともあります。私は銀行員時代にさまざまなトレーダーから注文を預かっていたのですが、負けが込んできたトレーダーは色々な通貨ペアにチャレンジする傾向があるように感じました。
自分自身もそうです。私の場合は違うプロダクト、昨年で言えば下がっていた原油(WTI原油先物)を拾うなど試みたものの、焼け焦がされた記憶を鮮明に覚えています。
もしかすると「自分が今勝てていないのは通貨ペアが悪いのかも知れない」「他の通貨ペアなら勝てるかも知れない」こう言った心理状況になっていたのかも知れません。相場ですので、たまたま上手くいくこともありますが、私の経験からするとあまり上手くいかないことが多いように思います。
さまざまな通貨ペアやプロダクトを取引することのメリットは収益機会が多いことだと思います。動いている通貨ペアがあれば、そこに収益機会が生まれるのは事実です。
一方で大きく動いているからと言って根拠に乏しいトレードを行ってしまうとなかなか勝つことが出来ないように思います。取引をした後に、やっぱりよく分からない通貨ペアやプロダクトは取引しなければ良かったと思うこともしばしばです。
2.凄腕ディーラーがドル円に立ち返る理由
私はこれまで多くの為替トレーダーを見てきましたが、珍しい通貨ペアを好む方ほど、負けている傾向が強いように感じています。その通貨ペアが真に自分にとって得意な通貨ペアならよいのですが、そうではなくてなんとなく食指が動く。これは危険なサインかも知れません。
少し掘り下げて考えてみると、色々な通貨ペアにチャレンジすることで、各通貨ペアのトレードに必要な情報が十分に収集できない状況に陥るかも知れません。
FXはチャートだけを見て取引ができ、そしてそれで勝ち切ることが出来れば、それはどのような通貨ペアを取引しても問題ないように思います。ですが伝統的な投資家は取引通貨国のマクロ経済政策やニュースを漏れなくチェックしていますので、必ずしもチャートだけで勝てるとは思えません。
となると自分のトレードが上手くいかない時に情報がきちんと収集できる通貨ペアに立ち返ることは有効と言えそうです。
私たちがもっとも質の高い情報を入手出来る通貨ペア、それはドル円(USD/JPY)です。
なぜドル円が最も質の高い情報を入手できるのでしょうか?それは多くの日本人が日本語ネイティブですから日本円を動かす情報を仕入れることは比較的に容易ですし、また米国の金融政策(米ドル)に関する情報は例えば「マネ育チャンネル」などのFXメディアや、「日本経済新聞」などで入手することが出来ます。
ではEUR/GBPだとどうでしょうか?取引量世界2位と3位の通貨ではありますが、日本人が現地の情報を掴むのはドル円ほど簡単ではないかもしれません。もちろん欧州在住経験があったり、特に欧州の通貨が好きな方にとっては取引しやすいと思いますが、そうでない方も多いように思います。
例えばマネ育チャンネルにご出演されている松崎美子さんなどロンドンに拠点を構えている方にとってEUR/GBPは得意の通貨ペアかも知れません。それから手前味噌で恐縮ですが、私は上海在住経験があり人民元と日本円の取引が得意です。
でもそれらをもう一段突き詰めて考えると、それはやはりその通貨や経済圏をよく知っていると言うことに起因していると思うのです。だからこそ知らない通貨を取引するのは逆説的に危険な可能性が高いとも思っています。
振り返ってみると銀行員時代の凄腕ディーラーは、ドル円から目を逸らさない人が多かったように思います。当たり前ですが、日本にいればドル円の情報が一番入ってくるわけですからドル円で勝負するのが王道中の王道と言えるでしょう。
FXの面白いところは動かないなら動かないなりにレバレッジでリスク量を調整できることです。ドル円が動かないからと言って他の通貨ペアに浮気する、その結果として痛いダメージを負うくらいなら、レバレッジを調整してドル円と本気で向き合うのも一つの解決策と言えそうです。
3.終わりに
みなさんにも得意な通貨や好きな通貨、肌に合う通貨や通貨ペアがきっとあると思います。本記事では「情報」に焦点を置いてお伝えしましたが、他にもみなさんの生活のリズムやトレードのテンポによって合う合わないがあると思います。「なんだか最近の相場はよくわからないなぁ」と思う時には、やはり自分が最も信頼をおける通貨に立ち返ってみることが重要かも知れません。
そして自分には得意な通貨ペアはないと言う方になんといってもおススメなのがドル円です。ドル円であれば情報戦で負けることは少なくなります。新興国通貨、欧州通貨、オセアニア通貨などさまざまありますが、基本に立ち返る意味でドル円取引に戻ることはスランプ脱出に有効な手段だと思います。
私はテニスをするのですが、テニスの「型」とでも言いますか、自分なりの勝ちパターンを掴むには10年が必要と言われています。私たちもトレードを長く楽しんで、10年後くらいに「型」を持つつもりでやってみると、気楽に楽しめるかも知れません。それは長すぎると言うご意見もあろうかと思いますが、何事も習熟するには時間が掛かるものですから、長く楽しんで取引することが案外近道なのかなぁと思う今日この頃です。
本日はここまでとなります。
引き続き、みなさんのレベルアップに役立つ記事を作成してまいりますので、応援して頂けますと幸いです。
戸田裕大
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代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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