注目された前回タカ派に転じた感のあったFOMC.の議事要旨の中身は予想程タカ派ではなく、予想以上に早く資産購入ペース縮小へ向けた進展が見られているものの、未だ基準には達しておらず、FOMC.としては政策変更を行うに十分な確実性があるとは言えないとして市場は実質的にハト派的な文言と受け止めた。
その後株式市場は議事録の中身を好感してニューヨーク株式市場の3指数とも上昇し、ナスダックとS&P.は史上最高値を更新して引けた。
ところが翌8日の木曜日、世界的な新型コロナウイルスの変異株の感染拡大の懸念や中国の景気減速懸念を嫌気し、また週間の新規失業保険申請者数が市場予想に反して増加したことを受けてリスク・オフ・モードとなり、10年物債券利回りが1.24%まで下落し、3指数は前日の上げ幅を大きく上回る下げを演じた。
リスク・オフ相場の常で為替市場では対ユーロ以外の主要通貨に対してはドル高が進むと同時に円高も進み、それにつられてドル・円相場も一時安値109.54まで下落しクロス・ベースでも円高となった。
ドル・円相場は月曜日に示現した週の高値111.19から三日で約1.5%の下げを演じた訳で、ドル・ベア(ドルにとって弱気)にとっては久々の心地よい動きであったかも知れない。
このリスク・オフの動きは長続きせず、翌金曜日には10年債利回りも1.361%まで戻して引け、3指数も揃って再び史上最高値を更新して引けた。
突然のリスク・オフから再びリスク・オンと目まぐるしい展開となった。
ドル・円相場の戻しは限定的で週明けの東京市場では110.15近辺で静かな動きを見せて動意が乏しい。
現在の市場の雰囲気は、今年の高値である111.65を付けた月初のドル高時のそれとは違う気がするが、実はその頃の10年物債券利回りは1.45%くらいのレベルにあり、この1週間だけの動きを見ると金利が低下(1.45%から1.36%)する中のドル安&円高(111.65から110.15)で一見整合性が取れる様に見えるが、実は2021年3月頃全般的に金利が上昇する段階で10年物債券利回りが1.4%で取引された頃、ドル・円相場は106円近辺で取引されており、今回1.8%を手前にして再び1.4%台に低下したにも拘わらずドル・円相場は余り低下しておらず、下のチャートでも見える様に利回りとドル・円相場の相関性から考えるとドル・円の割高感は拭えない。
もしかして10年債利回りの低下が大き過ぎるのか、それともドル・円相場のレベルが高過ぎるのか?
利上げ機運が高まる中(今回のFOMC.議事録で少し頭を冷やされたが..)米国長期金利が上がらないどころか下がっている状況では矢張り中々ドルは買えない。
先週のレポートでシカゴ・IMM.のポジションに触れて、“恐らく円の売り持ち(ドルの買い持ち)を減らすであろう。”と述べたが、結局先週はネットで約760枚(ドル換算で約9千万ドル)の円売り持ちポジションが減っただけで、先週7月6日現在ネットで69,136枚(ドル換算で約79億ドル)の円売り(ドル買い)のポジションを保有している。
109円台ミドルまでのドルの下落に肝を潰したことであろうが、先週の動きに応じて今週こそ多少はポジションを縮小するであろうか?
それに比べて我が国個人投資家は僅かではあるがドルの売り持ちを増やしてネットで約2億ドルの売り持ちとなっている。
個人投資家の動向を見ると過去4年間、ネットのドルの売り持ちを長く保持したことは無く、相場が落ち着くとドルの買い持ちに転じる傾向がある。
という事は、彼らは長期的な相場観から判断すると110円割れではドル買いに転じるのであろうか?
先週下サイドへのブレークに注意を喚起したテクニカル分析の見立ては依然としてレンジ取引を示唆。
111.05を上切ると更なる上昇も見込めるが、米国長期金利の上昇が無ければそれは難しかろう。
レンジ取引を意識しながら丁寧にやっていきたい。