総括
小さな好材料、根っこは不安
(通貨最下位、株価最下位)
予想レンジ トルコリラ/円 12.2-13.2
(ポイント)
*トルコの弱点と長所は
*6月CPI再び上昇
*中銀総裁は年末にはインフレが低下すると予想
*6月経済信頼感と製造業PMIは改善した
*2Q成長率は20%程度か
*通貨スワップ協定の締結に向けて4カ国と交渉
*今月から感染抑制のための規制を一段と緩和
*エルドアン大統領が引き続き経済を支えるために利下げを要求
*トルコ首脳会談は建設的なるも露ミサイル問題は進展なし
*HDPとの政争激化
*4月経常収支は改善
*外貨準備は増加
*対外純債務は3436億ドル
*21年成長は5.75%予想=IMF、EBRDは5.5%予想
*中国とはウィグル族問題、ワクチン、外貨スワップ協定で関係を深めている.
*格付け会社は格下げを示唆
*新憲法制定を画策
(トルコの弱点)
先週は対円で12.57から12.78へ持ち直したが、今年も最弱通貨の位置から抜け出すことはできない。今週発表される経常収支(5月)も先週発表された貿易収支も赤字である。従って対外純債務国となり海外向けからの受け取りより海外への支払いが多く、リラ安となる。日本、特に20世紀の日本(対外純資産)と逆の需給だ。それでも適切な金融政策をとっていれば金利差が為替下落率を上回ることがあり、長期でリラを保有すれば利益となるが、トルコの場合は為替下落率が大きいのでなかなか利益とならない。時間がかかる。
(トルコの長所)
悪いことばかりではない。銀行の外貨預金の準備率を引き上げた事、外貨準備高の増加、2Qの成長率が前年比で20%超える予想が出るなど良い材料もあるが、貿易・経常収支の赤字とインフレを長期的に抑え込もうとしない金融政策に飲み込まれてリラ安となる。
(CPI上昇、中銀総裁は楽観的)
6月の消費者物価指数(CPI)は、前年比17.53%上昇で2年ぶりの高い伸びとなった。前月比では1.94%上昇。予想は前年比17%上昇、前月比1.5%上昇だった。
強いインフレ指標で利下げ懸念が緩和した。
5月は、新型コロナウイルス感染防止のためのロックダウンで価格引き上げが延期されたため、CPI上昇率は鈍化していた。
6月の生産者物価指数(PPI)は前月比4.01%上昇、前年比では42.89%上昇だった。エネルギー価格の上昇を反映し輸送コストが前年比26%超上昇し、日用品も同程度上昇した。
カブジェオール中銀総裁は7月と8月のインフレ率が予想以上に上昇する可能性があるものの、月単位のデータが年末の見通しに影響することはないと述べた。
総裁は遅くとも4Qの初めにはインフレ率が顕著な低下を示すという見通しを維持している。
(指標改善)
6月経済信頼感は97.8で5月の92.6を大幅に上回った。6月製造業PMIは51.3で5月の49.3を上回った
(今年5.5%成長へ上方修正、EBRD)
欧州復興開発銀行(EBRD)は、トルコの今年の経済成長率が5.5%になるとの見通しを示した。新型コロナウイルス流行から力強く回復しているほか、観光部門に上向きの兆候があるとして、従来の5%から引き上げた。2022年の成長率は4%と見込む。トルコ経済は昨年、マイナス成長を回避した数少ない国の1つ。積極的な信用の伸びが寄与した。今年1Qは前年同期比で7%増。
EBRDは「事態は再び上向いており、先行きはかなりポジティブだ」とし、「繰延需要で観光シーズンが長引けば、見通しに一定の上振れもあり得る。ロシアの観光客が戻っており、ドイツなどからも一定の前向きなシグナルがある」と述べた。
一方、新たな新型コロナ変異株でロックダウンにつながったり、中銀が9月よりも前に政策金利を引き下げたりすれば、見通しに届かない可能性もあるとした。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
ボリバン中位へ戻す
日足、ボリバン中位あたりで推移。6月30日-7月5日の上昇ラインがサポート。
7月2日-5日の下降ラインが上値抵抗。雲の下。5日線上向き。
週足、6月21日週-28日週の上昇ラインがサポート。6月14日週-28日週の下降ラインを上抜ける。ボリバン下位。雲の下。
月足、21年3月-6月の下降ラインを上抜く。20年11月-21年6月の上昇ラインがサポート。21年2月-3月の下降ラインが上値抵抗。
年足、6年連続陰線。今年は僅かながらも陽線スタートも中銀総裁の電撃解任で陰転。18年-20年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
女性保護の条約から脱退
エルドアン政権は、イスタンブールで2011年に採択された欧州評議会の「女性への暴力およびドメスティックバイオレンス(DV)防止条約」からの脱退を表明。
国内の世俗派や欧米諸国から懸念の声が強まる中、トルコは7月1日付で条約から正式に脱退した。
エルドアン大統領は、性的少数者の権利擁護をうたう条約が「トルコの伝統的価値観に反する」と主張。「女性の保護は条約で始まったものではなく、脱退で終わるものではない」と訴えた。政権の支持層の間では、性的少数者らについて「宗教上の逸脱」と見なす傾向があり、女性の社会進出にも消極的な意見が根強い。
ただ、トルコでは最近、家庭内暴力で女性が死傷する事件が相次ぎ、性的少数者への風当たりも強まっている。3月下旬以降、「条約脱退で女性らの権利を制限しようとしている」と主張する世俗派らによるデモが相次ぎ、7月1も各地で多数の市民が参加して抗議行動が繰り広げられた。
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